Mカッケー!
魔王城でもふもふを心ゆくまで堪能した魔女は、折角ハルマ大陸までやってきたので月詠の里で遊んで帰ろうとしました。
「いってらー……」
魔王は気の抜けた声で送り出してくれます。
「……って、黒鍵騎士を護衛に付けてくれたりとかしないわけ?」
いつもなら魔女がハルマ大陸内をうろつくときは護衛に黒鍵騎士を付けてくれるのですが、今回はただ見送るだけです。
魔王様ってば自分が振られたからって態度が悪すぎますね。
「……魔王城の結界を無効化できる腕利き魔女に対して護衛なんて侮辱もいいところだろう? 大丈夫。魔女ならどんな敵が相手でも返り討ちにできるはずだ」
「そりゃできるけどさぁ」
そろそろ自分の力量を自覚してきた魔女は当然のように返答します。
「でも護衛なんて名目はあくまで建前で黒鍵騎士の護衛はもふもふサービスだっていうのが本質じゃなかったっけ?」
「……そんな本質は初耳です」
黒鍵騎士がものすごく嫌そうに答えるのでした。
「それにもふもふは先ほどまで堪能していたでしょう?」
「してたけど。じゃあデートしようデート」
「にゃんことしてきてください」
「ますたぁとで~と~♪」
にゃんこはご機嫌に魔女の腕へとしがみつきます。
デートできるのが嬉しいようです。
「ちぇー。仕方ないなぁ。今回は我慢するか~」
魔女ももふもふ堪能した直後なので大人しく引き下がってくれました。
黒鍵騎士もほっとします。
「じゃあまたもふもふしに来るね~」
「っ!」
びくっと身を竦ませる黒鍵騎士と、
「たまには余にもサービスしてほしい」
ふて腐れたように呟く魔王なのでした。
「じゃあ次来たときは素足で頭を踏んであげる」
「マジか!」
「そこで興奮しないでくださいっ!」
鼻息荒く興奮した魔王に黒鍵騎士が怒鳴りつけます。
「ちゃんとぐりぐりするんだぞっ!」
「分かった分かった。今度ね~」
「陛下っ!」
Mカッケー魔王に黒鍵騎士がお説教を始めています。
やれやれと振り返りつつも魔女は魔王城を後にするのでした。




