養殖よりも天然がお好み
「ではこうしよう。魔女に薬を作ってもらう」
「ん?」
魔王が名案を思いついたように言います。
「若返りは魔法でなんとかなるが、耳尻尾はどうにもならないからな。魔女の作った薬で耳尻尾を生やすというのはどうだ?」
「んー。確かに弟子もどきにその手の薬を一服盛ったことはあるけど」
「……いま一服盛ったと言いましたか?」
黒鍵騎士がじとーっとした視線を魔女に向けます。
「だって犬の尻尾をもふもふしたかったんだもん。それに効果は限定的だから問題なし!」
「………………」
そういう問題でもないとよっぽど突っ込みを入れたい黒鍵騎士でした。
「ならば余にもその薬を作ってくれ!」
「高いよ」
「うぐ!」
「払える?」
「黒鍵騎士のもふもふ権一日でどうだ!」
「私を担保にしないでくださいっ!」
主君と言えど怒鳴りつけずにはいられませんでした。
「でもやっぱり却下」
「なんでだ!?」
「だって養殖よりも天然の方が美味しいじゃん」
「んなっ!」
「魔法と薬で若返りもふもふになった養殖魔王よりも、天然美青年もふもふ黒鍵騎士の方が美味しいに決まってる」
「例えが酷いっ! 余を養殖呼ばわりするなっ!」
あんまりと言えばあんまりな言葉でした。
しかしもふもふはともかくとして魔法で若返った程度では中身までは変革できません。
中身がおっさんということを知っている魔女としては魔王がどんな姿になったとしても一向に萌えないのでした。
「別に魔王なら私にこだわらなくても他のロリ美少女魔族がいるでしょ。そっちとよろしくやってればいいじゃん」
「それはいるが」
「だったらそうしなよ」
「しかし目の前にロリ美少女がいるのなら口説かずにはいられない! それが魔王道!」
「一度ぐらい衆道に染まればマシになるかもね」
「おぞましいことを言うなああああああっっっ!!」
「しゅどーってなに?」
にゃんこが首を傾げて黒鍵騎士に問いかけます。
「……にゃんこは知らなくていいことですよ」
「?」
謎は謎のままに、にゃんこは首を傾げるのでした。




