永遠の夢
「何故だ! 余といれば黒鍵騎士ともふもふし放題だぞ!」
「黒鍵騎士のもふもふし放題は捨てがたいけど私におっさん萌え属性はない!」
一秒で断られたにもかかわらず、魔女と魔王は言い合いを続けています。
醜い口論です。
しかも自分のプロポーズなのに餌にしているのが黒鍵騎士という酷い有様です。
「魔女殿のもふもふマニアっぷりは一種の病気ですね……」
その様子を呆れ混じりに溜め息と共に眺める黒鍵騎士は、可哀想なぐらいどんよりしていました。
人権ってなんですか? と問いかけたくなりますね。
「びょーきなの? ぼくはますたぁにもふもふされるのだいすきだよ」
「はは……」
無条件に魔女を慕っているにゃんこにとってはそうでしょう。
しかし黒鍵騎士は魔女のことを憎からず思っていても、決して慕っている訳ではないのです。
というか黒鍵騎士自身はロリコンではないので恋愛対象としてはもう少し年齢を引き上げて貰わないと困るといった所でしょう。
「にゃんこはいいんですか?」
「なにが?」
「仮に私と魔女殿が結婚したとして、にゃんこは寂しくないのですかという意味ですよ」
「さみしくないよ~。だってぼくもますたぁとけっこんするもん」
「はい?」
「ええとね、りょうてにもふもふってますたぁがいってたよ」
「………………」
にゃんこの前で堂々と二股宣言している魔女でした。
「い、いっぷたさいせい? のぎゃくだっていってた」
「一妻多夫制ですか……」
一夫多妻制ならぬ一妻多夫制。
複結は男女にとって永遠の夢なのかもしれません。
魔王にとってはロリハーレム、魔女にとってはもふもふハーレムといったところでしょう。
「よし。じゃあこうしよう! 余と黒鍵騎士が魔女に婿入りする! そうすれば黒鍵騎士とも結婚できるぞ!」
「魔王はいらない!」
「なんだとーっ!」
「黒鍵騎士だけちょーだい!」
「やらん!」
「なんだとーっ!!」
醜い言い争いはまだまだ続くようです。




