記録更新一秒
「う~」
魔女は黒鍵騎士に膝枕をしてもらいながらむくれていました。
せっかくのプロポーズを三秒で台無しにされては無理もありません。
しかし断っておきながらも律儀に膝枕をしてあげるあたり、黒鍵騎士も魔女のことを憎からず思っていることは確かでしょう。
しかし恋愛対象というよりは手のかかる妹的存在という認識なのかもしれません。
「それにしてもいきなりな求婚だな、魔女」
魔王はみかんをぱくつきながら言います。
にゃんこは二本目のアイスに夢中です。
「うみゅ。あたまいたくにゃってきた……」
しかしアイスを食べ過ぎると頭が痛くなるのでそろそろやめた方がいいでしょう。
にゃんこはずきずきする頭を押さえつつもアイスは頬張っています。
根性があるのか食い意地が張っているのか、判断が微妙ですね。
「だってもふもふしたいんだもん。ずっといつでもどこでももふもふしたいんだもん」
「だからといって黒鍵騎士は駄目だろう。余の側近だぞ。いなくなられたら困る」
「他の側近を引き立てればいいじゃん」
「……内ももを撫でないでください」
黒鍵騎士は内ももをなでなでしていた魔女の手をそっとどけます。
魔女は不満そうに頬を膨らませました。
セクハラロリ美少女は膨れっ面でも可愛いと魔王は密かに興奮していますが、もちろん顔には出しません。
下半身ぐらいには出ているかもしれませんがこたつに隠れて見えないのでのーぷろぶれむですね。
「黒鍵騎士の象徴である『黒鍵』は持ち主を選ぶのだ。簡単に替えが利くものではない」
「そうなの?」
「ええ。黒鍵は持ち主を選びます。黒鍵に選ばれた者が魔王城を守護する黒鍵騎士になれるのです」
今度は股間付近に伸びてきた魔女の手を乱暴に払い除けながら黒鍵騎士が答えました。
さすがに優しくどけてあげる余裕はなかったようです。
「いたひ……」
魔女は手をさすりながら仕方なく今度は尻尾をもふもふしました。
そっちは諦めているようなので黒鍵騎士も大人しいものです。
こうやって徐々に妥協ポイントを引き下げていけばいずれはセクハラし放題だね、と魔女は密かな野望に萌えます。……じゃなくて燃えます。
「だから黒鍵騎士の近くにいようと思えば、余と結婚すればいい」
「断る」
「………………」
「………………」
魔女と魔王は沈黙しています。
火花が散っていそうな雰囲気で沈黙です。
「いちびょうだったね……」
そしてその沈黙を破ったのはにゃんこでした。
黒鍵騎士のお断りが三秒。
魔女のお断りは即答一秒。
新記録更新ですね。




