プロポーズの三秒後
「つ、付け根は! 付け根は許してくださ……ひゃうっ!」
魔女はにゃんこと同じように黒鍵騎士の尻尾の付け根をくりくりなでなでしていました。
床で悶える黒鍵騎士に魔女はご満悦です。
「……たまってたんだな」
自分の側近がロリ魔女に●感マッサージされているが如し場面を眺めながら、魔王は呑気に呟くのでした。
「ほれ、にゃんこ。アイスをやろう」
「ありがとー、まおー」
魔王はにゃんこの餌付けに成功しました。
にゃんこは尻尾をふりふりさせながらバニラアイスにかぶりつきます。
その横では黒鍵騎士があられもない声を上げたり、悶えたりびくびくしたりしています。
「へ、陛下……助けて……くださ……くあうっ!」
よろよろと魔王に助けを求めるべく手を伸ばす黒鍵騎士ですが、
「諦めろ、黒鍵騎士。ここで魔女の好きにさせておけば貸しいちとして後々便利だ」
「………………っ!!」
自らの主君がどんな頼み事をするのかを考えるまでもなく、部下を精神的に見殺しにする鬼であることを改めて悟るのでした。
「はふぅ~。堪能した堪能した~♪」
屍と化した黒鍵騎士の横にごろりと寝転がった魔女は、とても満足そうでした。
「うぅ……」
黒鍵騎士はヤバい感じに火照った身体を冷ますべく呻いています。
「にゃんこもいいけど黒鍵騎士のボリュームたっぷりなもふもふ尻尾もやっぱりもふもふしたくなるよね」
「………………」
同意を求められても困る、と黒鍵騎士は目を逸らしました。
「よし。結婚しよう!」
「はあっ!?」
魔女の爆弾発言に黒鍵騎士がのけ反ってしまいます。
「だってしばらく黒鍵騎士の尻尾をもふもふ出来ないだけでこんなに欲求不満になっちゃったんだもん」
「……そんなことで欲求不満になられても」
人生初のプロポーズ動機が最悪すぎました。
「だから結婚すればずっと一緒にいてくれるからいつでもどこでももふもふできるかな~って思って♪」
「お断りします」
「がーん!」
振られました。
人生初プロポーズ。
三秒で振られました。
ご愁傷様です。




