もふもふ狂い
「なっ!?」
「け、結界が!!」
こたつでごろごろしていた魔王と、いい加減その様子に慣れてしまったので読書をしていた黒鍵騎士が慌てます。
魔王城を覆っている結界に綻びが生じているのです。
破壊されるようなものではなくすり抜けるような綻びですが、鉄壁を誇る魔王城の結界をすり抜ける存在というのは無視できません。
すぐに臨戦態勢に移行します。
といっても黒鍵騎士は魔力で鎧と黒鍵を武装するだけであり、魔王は浴衣姿なのでどうにも締まらない光景になっていますが。
侵入者は結界をすり抜けると一直線にこちらへ向かってきます。
どうやら城の中で破壊活動をするつもりはないようです。
黒鍵騎士は主君である魔王を守るべく黒鍵を構えながら謁見の間の入口を睨みつけています。
いつ敵が現れてもいいように。
何があっても主君を守れるように。
気を張って臨戦態勢に入っています。
部屋の外からは廊下を駆ける『どどどどどど……』という音が聞こえてきます。
凄い勢いでこちらに向かっているようです。
そして……
ばたーん!
扉が開かれました。
「もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふさーせーてーっ!!!!」
「っ!!??」
いきなり突撃してきた魔女に魔力で編まれた鎧を吹き飛ばされるほどの凶悪魔法をぶつけられ、普段着を晒した黒鍵騎士に魔女が飛びつきます。
魔女の研究は日々進化しており、今となっては魔王の側近であり腕利きの戦士である黒鍵騎士の鎧をも軽々と無効化してしまうレベルになっています。
いつか魔王すらも圧倒しそうで恐ろしいですね。
「ま、魔女殿――っ!?」
魔女に飛びつかれてそのまま押し倒された黒鍵騎士は戸惑うことしかできません。
侵入者だと思っていた相手は魔女だったのです。
「もふもふー!」
「ひょわーっ!!!」
そして欲求不満をぶつけるが如くもふもふセクハラをされる黒鍵騎士なのでした。
合掌……ちーん……。




