君がいるだけで
「言いたいことは分かるけど、要求に応えるのは無理かな」
「何故だ。労働力を手放すのがそこまで惜しいのか?」
「それもあるけど、スケルトンカイザーと違ってうちのスカルくんたちは私が組んだ術式で動いている、いわば使い魔みたいなものだからね。この山の魔力をエネルギーとして動いているわけだ。つまり私が組んだ術式を解除して、魔力供給を受けられなくなればスカルくん達は死んでしまうよ。……ってまあ元々死んでるんだけどさ」
「………………」
「スカルくん達を本当の意味で解放したいって言うんなら、まずは魔力供給をカットしてただの骨に戻って貰うけど、それでいいわけ?」
「∃ヨヨョョ。+゜(ノД`)゜+。ョョヨヨ∃」
「ャバィョ~o((´д゜llo))((oll゜д`))oャバィョ~」
それを聞いたスカルくん達はあわてて首を横に振りました。
もちろん死にたくないという意味です。
そんなことをされるぐらいなら魔女にこき使われ続けた方がマシです。
もちろん本来のスケルトンならここで解放を望むでしょう。
生かさず殺さず魂だけ骨に縛りつけられて使役され続けているのは屈辱です。
しかしスカルくん達にはにゃんこという生き甲斐がありました。
どれだけ虐められても、どれだけ酷使されていても、にゃんこが目の前を通り過ぎてくれるだけで猛烈に癒されるのです。
にゃんこがいるだけで魂だけはここにいたいと願えるのです。
つまりどいつもこいつも成仏よりも萌えを選んだということですね。
駄目な骨達です。
駄目骨―ズです。
「……なるほど。我は元々の素質により死後スケルトンとなったが、お主らは魔女の魔力によって無理矢理スケルトンにされてしまったのだな」
そんなスカルくん達を見て哀れむような声をかけるスケルトンカイザーでした。
骨にもいろいろと苦い思い出があるようです。
確かにスケルトンには天然ものと人工ものがあります。
天然ものは死後に自然発生したスケルトン。
死体の状態から周辺魔力を吸い取って、墓の中もしくは野晒しの死体が骨になって動き出す天然素材のスケルトンです。
スケルトンカイザーはこっちですね。
そして人工ものは、魔法を使う人間の魔力や魔法によって死体を加工されてスケルトンとして生まれ変わらされたもののことを言います。
スカルくん達はこっちですね。
だから人工ものであるスカルくんは魔女がいなくてはただの骨に戻ってしまいます。
魔女がいるからこそ毎日動くことが出来るし、にゃんこに萌えることが出来るのです。
スカルくんにとっては魔女の酷使よりもにゃんこ萌えを優先できるぐらいには参ってしまっています。
というわけでスカルくんの解放は最初から無理な話でした。
当のスカルくん解放以前に魔女……というよりにゃんこの傍から離れようとしないのだから当然ですね。
『こんな酷い世界でも、君がいるだけで生きていける』と表現すればなんともロマンチックになりますが、
『こんな虐待な日常でも、君の萌えがあれば耐えられる』と修正すれば台無しになります。、
しかしどちらがより真実に近いかは、言わなくても分かりますよね?




