人骨実験三秒前
……とまあここで退場だとあまりにも可哀想というか、カイザーの立場がないので、もうちょっと頑張って貰うことにしましょう。
「うぅ……酷い目に遭った……」
スケルトンカイザーは四苦八苦しながら魔女の炎を消してなんとか回復しました。
カイザーの名は伊達ではありません。
「で、あんた誰よ?」
「だから我はスケルトンカイザーだと言っただろうが」
「ふーん。スカルくん達と違ってちゃんと喋れるんだね」
魔女はじーっとスケルトンカイザーを観察します。
喋れる秘密を探っているようです。
「んー。なるほど。魔力で疑似声帯を構成しているわけか。スケルトンもランクアップして魔力が上がればそういうことが出来るようになるんだね。実に興味深いな」
ふむふむと納得する魔女でした。
とても興味深そうです。
「………………」
ぞくりとしたものがスケルトンカイザーの背筋に襲いかかりました。
その悪寒は気のせいではありません。
魔女は今まさにスケルトンカイザーを生け捕りにしてその生態を研究しようかどうか悩んでいる所なのです。
人体実験もとい人骨実験、みたいな。
「ま、いいか」
しかしそれをするとスカルくん達に必要以上の恐怖心を植え付けてしまいそうなのでやめておくことにしました。
必要以上に恐怖心を刺激して鬱病になってしまったら労働力がなくなってしまいます。それは困るのです。
あくまでもスカルくんの為ではなく自分の都合というのが素敵な事情ですね。
『勘違いしないでよね』的なツンデレ要素は皆無です。
魔女は思考を切り替えてスケルトンカイザーに問いかけました。
「それで? そのスケルトンカイザーが私に何の用なわけ?」
「うむ。我が同族がくされ魔女に無理矢理酷使されているという噂を訊いたのでな。これは我が救い出さねばとはるばるやってきたのだ」
「誰が腐れ魔女だ」
かちんときた魔女はいつの間にか手に持っていたルナソールでスケルトンカイザーの頭蓋骨を叩きました。
「ぎゃーっ!」
軽く叩いただけなのにスケルトンカイザーの頭蓋骨はひび割れてしまいました。
さすがはオリハルコン製です。
「………………」
しかし仲間を救いに来たという、一応は正義っぽい発言をしていたのでこれ以上痛め付けるのは勘弁してあげました。
「つまりあんたはスカルくん達を私から解放してあげたいと、そう言いたいわけだね?」
「その通りだ。我が要求を聞き届けるつもりはあるか? くさ……ではなく魔女よ」
……危ないところでした。
危うく『くされ魔女』発言を再びしてしまうところでした。
びしっと構えたルナソールが恐怖の象徴のように映ってしまいます。
要求をしに来た割には精神的に負けていますよスケルトンカイザーさん。




