家族が一人(一匹?)増えました
魔女の日々はのんびりと続きます。
お金もゲットして家庭菜園で食糧供給もバッチリ。悠々自適な魔女生活と言えるでしょう。
お肉が恋しくなった時にはスカルくんに命令して狩りをしてもらいます。
森の中には野性の牛や豚、猪や鹿などがたくさん生息しています。
地球世界の動物よりもちょっぴり凶悪ですが、スカルくんの戦闘能力ならば問題ありません。個体レベルはあまり高くありませんが、そこは飽和攻撃でカバーです。
そんなある日のことです。
「………………」
「( ̄Д ̄;;」
狩りを命じていたはずのスカルくんが子猫を拾ってきました。
真っ白い猫は弱々しく、とても可愛らしいです。
どうやら森の中で拾ってきたようです。スカルくんの腕に抱かれた子猫は気持ちよさそうに眠っています。
「(;´▽`A``」
スカルくんはじっと魔女を見つめています。
眼球がない癖に見つめています。
『飼っていい? ねえ飼ってもいい?』と訴えかけているような気がします。
「……元の場所に捨ててきなさい」
「Σ( ̄ロ ̄lll) ガビーン」
魔女はかつて母親から言われた台詞をスカルくんに言います。
魔女自身もかつては子犬を拾って家に帰ったことがありました。
しかしマンション住まいだったので動物を飼うことは出来ませんでした。
母親は『飼う覚悟もないのに動物を拾ってくるのはとても残酷なこと』なのだと教えてくれました。
魔女は猫よりも犬派です。
わざわざ猫を飼うつもりはありません。
……犬ならちょっぴり考えたかもしれませんが。
「。・゜゜ '゜(*/□\*) '゜゜゜・。 ウワァーン!!」
スカルくんは喋れない癖に身振り手振りで魔女に訴えます。
『そんな酷いこと言わないで!』とでも言いたいのでしょう。
「そんな事言われてもねぇ。そもそも猫ってあまり好きじゃないし。引っ掻くし、ワガママだし」
それは猫である以上仕方がない気もしますが。
「お手もお座りもしてくれないし」
……猫に何を求めているのでしょうね、この魔女は。
「じゃあアンタが面倒見られる? 餌をやったりトイレの世話したり毛繕いをしたり」
「(ノ_-;)ハア…」
スカルくんはがっくりとうなだれました。
畑仕事と狩りをするくらいしか能がないので、細かい仕事を要求される動物の世話などとても出来るとは思えません。
しょんぼりしたスカルくんはしゃがみ込んで地面に『の』の字を描き始めました。
他のスカルくんも同様に『の』の字を描き始めました。
「何でアンタらまでいっしょにいじけてんのよっ!」
どうやら子猫はスカルくん達のアイドルになってしまったようです。
「むぅ……」
ここで無理に捨ててこさせたら今後の仕事に影響するかもしれない、と考えてしまいました。
狩りも、畑仕事も、警備も、他の雑用も、スカルくんはそれなりに有用です。モチベーションが下がるのはちょっと困ります。
「あ……」
魔女はぽんと手を叩きました。
妙案が閃いたようです。
「分かったよ。じゃあ使い魔にする。人型にすれば手間もかからないだろうし、人間のご飯も食べられるだろうしね。それでどう?」
「(≧∇≦)b 」
スカルくん達ははしゃしだように首をコクコクさせます。……あまりにも激しく頷いて首が取れてしまったスカルくんもいました。すぐに繋げ直します。まるでプラモデルです。
「じゃあ決まり」
魔女は子猫を受け取ってからジロリとスカルくん達を睨みつけます。
「今度妙なもの拾ってきたら魔法薬の材料にするからねっ!」
「「「「「ギャァ━━il|liノ)゜Д゜(ヽil|li━━ァァッッ!!!!」」」」」
今度こそ震え上がったスカルくん達はガクガクなりながら激しく首を振りました。
今度は全員の首が取れてしまいました。よっぽど怖かったのでしょう。
使い魔作成魔法を使用すると、子猫は小さな子供の姿になりました。
猫耳と尻尾を生やした小さな男の子です。
見た目はとても可愛らしいです。
「初めまして。私があなたのマスターよ」
上下関係をはっきりさせるために魔女は威圧感たっぷりに言い放ちます。
猫はワガママな動物なので一番最初に誰が上なのかを仕込んでおく必要があります。
「ま、ますたぁ?」
「っ!」
しかし可愛らしい外見とつぶらな瞳で小首を傾げながらそんな事を言った使い魔の姿に、魔女のハートはズギューンっと撃ち抜かれてしまうのでした。
「ぐ、ぐふっ!」
つまり、激萌えで撃沈されてしまったのですね。
こうして、可愛い家族が一人(一匹?)増えたのでした。




