にゃんこは結構強いのだ
「じゃあにゃんこVS見習い魔女ってことでファイト始めようか。ルールは単純明快。相手をぶっ倒した方が勝ちね。時間無制限のガチンコバトル。さあれっつふぁいと!」
庭に出た魔女がにゃんことシロを眺めながら言います。
「にゃう」
「むう」
向き合う二人は真面目ですが、それでも気を抜くわけにはいきません。
魔女の言う通り、使い魔にすら勝てないようでは一人前の魔女とは言えないからです。
これまで数多の魔女っ娘を下してきたシロにとって、ここで見習い扱いされたことはかなり屈辱ですが、相手が紅の魔女では仕方がないのかもしれません。
ちなみに魔女にその自覚はありませんが、魔女自身の実力は世界屈指と言っていいレベルです。
本人の魔力こそ並レベルですが、そこは地脈の力を吸い取ってルナソールに溜め込んでおけることが大きなアドバンテージになっています。
そして先代魔女の知識を受け継いだ魔女は、魔力さえあればその扱いは一流です。
勇者すらもワンパンチで山の向こうに吹っ飛ばせるだけの魔力運用を見せてくれたのですからまあ当然ですね。
……よく考えたら勇者や魔王と対等に渡り合っている魔女が一流でないわけがありませんでした。
「先手必勝! ブラストファイア!」
シロの方が先に仕掛けました。
炎弾を十個ほど出現させてにゃんこに飛ばします。
いくら魔女が仕掛けさせた勝負とはいえ、にゃんこの耳尻尾をわずかなりとも焦がした場合には恐ろしい制裁が待っていると理解していない躊躇のなさです。
知らない方が幸せですね。
「ええと、しーるどっ!」
魔女直伝の防御魔法を発動させてしっかりと防ぎました。
シロは命拾いしたようです。
防がれて命拾いというのも複雑な恐怖背景ですが。
「ええいっ! 使い魔のくせにやるじゃないっ! トルネード!」
今度は竜巻をいくつも発生させてにゃんこにぶつけます。
その間に自らも加速して必殺の一撃をにゃんこに入れようとします。
「にゃ……ふぁいあーとるねぇど!」
しかしにゃんこは強烈な一撃を返してきました。
シロがぶつけてきたトルネードを掌握した上で、自らの炎魔法を織り込んでから跳ね返したのです。
さすがに魔女の使い魔なだけあって、凶悪な魔力運用はお手の物です。
いつでもどこでももふもふされているだけではありません。
炎を孕んだ竜巻がシロへと襲いかかります。
「~~~っ!!」
シロはにゃんこへの攻撃を断念して防御するので手一杯でした。




