別れと旅立ち
次の日の朝には船も港へ到着しました。
なつかしのカルラド大陸です。
ハーフ少女は魔女の予想通り、船長たってのお願いで雇われシンガーになりました。
これからはこの船も客入りが増えることでしょう。
「えっと、魔女さん、にゃんこさん」
「ん?」
「にゃ?」
別れ際、ハーフ少女は二人を呼び止めました。
「ありがとう。二人がいなかったらわたしは自分の歌を活かせないまま、自分が歌えることを知らないまま終わるところでした。本当に感謝しています」
「いいっていいって。こっちも素晴らしい歌が聴けてもーかった気分だし」
「だよね~。ますたぁとはおおちがい……ふみゃああああっ!」
「にゃんこ?」
魔女の顔が上半分だけ影効果が発生しています。目の部分が白丸になっていて恐怖百パーセント状態です。
「にゃ、にゃにもいってにゃいよ! ほ、ほんとだよ!」
「そう?」
「そうそう。だからしっぽひっぱらにゃいでぇぇぇ」
「懲りないよねぇ。そこが憎たら可愛いんだけど♪」
最初は本気で怒っていた魔女ですが、慣れてくるとこのやり取りが楽しくなってきました。
もちろん本気で尻尾を引っ張りますが。
しかしにゃんこも分かってやっているのである意味本望かもしれません。
ますたぁをからかうショタブラックは着々とレベルアップを重ねています。
「これからはこの船で歌います。よかったらまた聴きにきて下さいね」
「そうだね。せっかくのお誘いだから海を渡るときにはこの船を利用させて貰うかも」
「そうだね~。てんいまほーとかそらとんでいどうとかもはやくてべんりだけど、きれいなうたをききたくなったらふねにのるのもいいかもね」
「………………」
転移魔法と飛行魔法は並の魔法師には使えないレベルの呪文だったりします。
そんなことをあっさり言ってしまう二人は、見た目に反して大物なのかもしれないと考えてしまうハーフ少女でした。
大物どころかただのもふもふマニアとそのペットなんですけどね。
「じゃあまたね」
「ばいば~い」
「はい。また会いましょう」
ハーフ少女に見送られて二人は船を降ります。
向かう先はもちろん魔女の家です。
カルラド大陸の先端にあるドレッグ港は、魔女のいるローゼリオン山脈までまだまだ距離があります。
馬車で六日ほどかかる距離です。
「んじゃ転移するから掴まって」
「うん」
しかしあっさりと転移魔法を使うので一瞬での帰宅でした。
船旅はあくまでも寄り道的なものです。
「またききにいこーね!」
「そうだね。たまにはそれもいいかもね」
魔女とにゃんこはそう言って港から転移しました。
なつかしの我が家でスカルくんが骨を長くして待っていることでしょう。
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