迷惑な一族
音痴なハーフ少女とドSな魔女とピュアブラック候補生のにゃんこが船の上で頭を悩ませています。
セイレーンの血を引く以上、歌い続けることを諦めたくないと願うハーフ少女ですが、しかし現実的にそれは難しいというのが魔女とにゃんこの結論でした。
しかし声は綺麗なので、何か別の活かし方がないか考えます。
「うーん。声は綺麗なのにどうして音だけがあんなに……」
「あれってせいれ~んのうたなんだよね?」
「ええ、そうよ。セイレーンに伝わる伝承歌ね」
「伝承なんだ?」
「人間には歌詞を理解できないでしょうけど、一応歴史を紡ぐ歌なんです」
「なるほどなるほど」
つまりセイレーンは船を難破させたり遭難させたりする歴史を紡ぎ上げて歌にまでしているということらしいですよ?
歌は綺麗でも迷惑な一族ですね。
「でも歌詞が分からないと歌の良さが半減するんじゃない?」
「かもしれませんけど。でもあの歌詞を含めてセイレーンの魔性は発揮されるんです。意味は伝わらなくとも人間を惑わせることは出来ますから」
「なるほど。でも音痴だと惑わせるどころか騒音でしかないけどね」
「………………」
泣くもんか、と拳を握り締めるハーフ少女でした。
耐えて下さい。
突っかかっていたらキリがありません。
「ねえねえ」
「ん?」
「にんげんのうたは? はーふなんだし、むりにせいれ~んのうたをうたわなくても、にんげんのうたをうたおうとはおもわなかったの?」
「んー。セイレーンの歌に拘っていたから人間の歌を歌おうとはあんまり思わなかったかも……」
言われて初めて気が付いた、とハーフ少女は手を叩きました。
「ちょっと歌ってみれば?」
「人間の歌をですか?」
「うん。歌ったこと無いんでしょ? 駄目元で歌ってみればいいじゃん。セイレーンの歌よりはマシになってるかもよ?」
「マシって……」
我慢です。
我慢の子です。
しかし言われてみれば人間の歌を試してみるのは悪くないと思いました。
セイレーンの歌に拘っていたのは、それが一番素晴らしい歌だからと思い込んでいたからであって、他の歌が嫌いというわけではありません。
「ええと……じゃあ試してみます」
「おー」
「ぱちぱちぱちぱち」
どんな音痴な声が襲いかかってこようと耐えきってみせると意気込む二人。
そんな二人の意気込みが分かってしまい凹んでしまいそうになるハーフ少女ですが、ぐっと顔を上げて息を吸い込みました。
そして、歌い始めます。
魔女っ娘の世界をより一層楽しめる!……かもしれない設定ページ「さなぎマテリアル」を始めました。
裏話や意外な設定があったりなかったり。
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