ハグしたい。ハグハグしたい……
勇者の面白いようで残念なお話を聞き終えた魔女は、にゃんこと一緒にカルラド大陸の自宅へと戻っていきました。
いつもなら転移魔法ですぐなのですが、
「ますたぁ。ぼくふねにのってみたい」
というにゃんこの一言で、帰りは船旅を満喫することになりました。
魔族と敵対していない中立国からは、ハルマ大陸とカルラド大陸を繋ぐ定期船が出ているのです。
しかも結構な豪華客船で、タイ●ニックとか連想できそうです。
結構な豪華客船はお値段の方も結構なもので、出費的にはちょっと痛い感じですが、にゃんこに甘々の魔女にとっては大したダメージではありません。
にゃんこの「わーい! ますたぁだいすき~!」が聞けるならいくらでも払いましょう的なデレ具合です。
にゃんこが将来悪女ならぬ悪ショタになってしまったらいい感じに利用されかねない危うさですが、それはそれで面白そうな未来予想図です。
「ん~。いい気持ち」
魔女は船の縁に立って、風を受けながら両手を広げます。
「ますたぁ。なにしてるの~?」
その様子をにゃんこが不思議そうに眺めています。
「某有名映画の真似~」
「まね?」
「うん。ちょっとしたタイタ●ック気分、みたいな?」
「ぼくもやる~」
にゃんこも登ってきて魔女の前に立ちました。
両手を広げて真似をします。
名作シーンそのまんまです。
ちゅーはしませんけど。
配置も男女逆になってますけど。
気分が味わえればそれでいいのです。
「海と言えばセイレーンだよね」
「せいれーん?」
魔女が思い出したように言います。
「そう。上半身がセクシーダイナマイツ、下半身は鳥っていう海の怪物でね。美しい歌声で航行中の船を惑わして、そのまま遭難させたり難破させたりするんだよ」
その表現もどうかと思いますが。セクシーダイナマイツって……
「え~。そうなんしたらこまる~」
「大丈夫。その時は空を飛んで逃げればいいから」
他の乗客は見捨てる気満々です。
「あ、そっか。ならあんしんだね」
にゃんこもそんな酷い提案に同意してはいけません。
「そうそう。それにセイレーンの噂は聞かないから遭難も難破もしないよ」
「でもきれいなうたごえはちょっときいてみたいかも~」
「あ、それは私も興味ある」
「う~。きこえないかな~」
にゃんこが海の向こう側まで耳を澄ませます。
白いお耳がぴこぴこ動いて激萌えです。
魔女としてはそれを眺めているだけでセイレーンとかどうでもよくなりました。
「ああ……ハグしたい。耳をハグハグしたい……」
ハグ(抱き締める)のではなく、ハグハグ(お口の中でもぐもぐ)したいという意味です。
にゃんこのお耳が大ピンチ! みたいな?
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