忍者とマジックアイテム
「俺が異世界出身だってことは月詠の里では結構有名だったんだ。だから異世界の話を色々と迫られたわけだ」
「ふんふん。それで?」
勇者が気まずそうに話すのを、魔女はうきうき顔で聞いています。早く続きを、さっさと続きを言いやがれと顔が訴えています。
「で、色々と話した。ござるとか、拙者とか、忍者とか、殿様とか。そういう変わった喋り方をする奴らが多いって。で、一時期ござるブームが出来上がったりして、月詠の里で忍者スタイルとか、ござる喋りとかが流行ったんだよ」
「流行を作り上げたわけだね」
「その通りだな。まあ今にして思うとかなり痛々しい時代だが」
「なるほどなるほど。つまりアレかな? 月詠の里でやらかしたなんちゃってブームがカルラド大陸にまで飛び火しちゃった、みたいな?」
「ああ、そんな感じ。ハルマ大陸も今ほど人間を受け入れられない訳じゃなかったからな。戦争中だろうと物資の流通は人間を介した方が色々なものが手に入る。人間も商人あたりになると種族の違いよりも儲けさせてくれる相手っていう認識の方が優先順位高かったらしくて、結構色々と話したぜ」
「商人の鏡だね」
「それについては同感」
月詠の里で広がった勇者の噂を、商人達がカルラド大陸で面白可笑しく広めてくれたというのがオチのようです。
事実が分かってしまえばなんとも拍子抜けというか、つまらないオチでした。
もう少し面白い裏事情があればよかったのですが、現実はこんなものかもしれません。
「でも忍者はいいよね。月詠の里でもたまに見かけるし」
コスプレっぽくて魔女的には萌えるようです。
「ああ。忍者は大ブレイクだった。俺も忍者についてはうろ覚えな知識しか持ってないけど、それを元にして忍者刀とか手裏剣とか再現しちゃうんだから魔族の執念って結構凄いぜ」
「鎖鎌とか投網も?」
「それどころか隠れ身の術に使用する景色と一体化するマジックアイテムまで出来ちゃったぞ」
「うわあ……。忍者グッズがマジックアイテムなんだ。それはそれで面白いかも」
マジックアイテムとしてはかなり使い勝手がいいのですが、元々の開発コンセプトが忍者アイテムというのがズレていていい感じです。
それが巡り巡って騎士団長のコスプレ魂となっているのですから、時代の流れというのは何が起こるか分かりませんね。
「煙玉とか炸裂弾とかも作られて一時期流行ったけど、あっちはすぐに廃れたな」
「なんで? 面白いじゃん」
「魔法の方が効率がいい」
「あ、なるほど。そりゃそうだわ」
煙幕魔法や攻撃魔法の方がよっぽど効率がいいというのは、魔法を使う魔女には納得のいく理由でした。
「でも二百年経過してもまだ受け継がれているっていうのがある意味すごいよね」
「俺もそこまで続くとは思わなかったよ」
「今度騎士団長に会ってみなよ。自分がやったことの痛々しさが身に沁みて分かるから」
「会いたくねえ……」
この二人が邂逅したら面白い展開になりそうだなぁと考える魔女なのでした。
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