勇者語り19
「つまり余を魔王と認めずに新しい魔王として魔族の一部をまとめて立ち上がった勢力があるのだ」
「それを粛正しろと?」
「命令するつもりはないがな。これは交渉だ」
「交渉……」
「ロリ交渉だ」
「それは違う」
どさくさに紛れてロリ主張をしようとする魔王を諫めながら、勇者と魔王は話し合いを続けます。
「表立って新生魔王を名乗っているから、人間達にはアレが魔王だと認識されている」
「そうなのか?」
「……まあ、陛下は魔王城に引き籠もってはロリ美少女とあんなことやこんなことをしていますから。あちらの偽魔王の方がよほど魔王らしい活動をしていますね。人間の大陸への侵攻作戦とか」
黒鍵騎士が冷たい口調で、というかやや呆れた口調で言いました。
そりゃあ呆れもするでしょう。
偽物がせっせと頑張っているのに本物は引き籠もってロリ美少女ときゃっきゃうふふですからねぇ。
「だから、勇者があの新生魔王もどきを粛正すれば、魔族側としても色々と助かるし、人間側としても魔王が倒されたと安心できるだろう? 勇者は晴れてお役ご免ということになる。新生魔王に重傷を負わされたとか、役目は終わったんだから隠居生活を送るとか、その後の人生設計は好きにすればいいんじゃないか?」
「おお! いいなそのプラン! 月詠の里でのんびりしたいところだな。いや、勇者が魔族の里で暮らすってアリなのかな?」
「アリでいいだろう。余が許可する。大体それを言うなら先代勇者だって余と蜜月を過ごして大往生したのだから問題ないだろう」
「大往生ってばあちゃんになるまでいたのかよ?」
「いや。ばあちゃんにはなっていない。せっかくのロリ美少女を老婆にするなどそんなもったいないことを余がするわけないだろうが。きっちり魔法をかけてロリ美少女のままで一生を過ごさせたさ。まあ寿命だけはどうにもならなかったから七十あたりで召されてしまったがな。幸せな時間だった……」
「あっそ……」
魔王の好み一つで老化を止めて貰ったという幸せなロリ美少女のお話でした。
「でも神様……っつーか戦神クライストにはバレバレじゃねえ?」
「バレバレだな。神だし」
「いいのか?」
「構わんだろう。奴も人間の為に勇者を召喚してやったというよりは、人間からの信仰を維持するために勇者を与えてやったという部分が大きいからな。表向きだけでも魔王を倒してしまえば文句は言うまいよ。それにそこまで気遣う必要もないだろう。奴の所為でお前は故郷を失ってしまったのだから」
知りたくなかった神様事情でした。
「それもそうか」
「そうだぞ」
「じゃあ偽魔王を倒してさっさと引退しちまうか」
「そうだそうだ。引退してロリ美少女を堪能してしまえ」
「……いや、俺は出来ればぼいんぼいんのお姉さんの方が」
「じゃあぼいんぼいんで」
「………………」
「………………」
がしっと二人が手を握り合いました。
勇者と魔王ががっちりと手を握り合いました。
決して相容れない二人が協力してよりよき未来に向かいます。
……でも動機が最悪です。
魔女っ娘の世界をより一層楽しめる!……かもしれない設定ページ「さなぎマテリアル」を始めました。
裏話や意外な設定があったりなかったり。
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