勇者語り09
「お、おおおおおおぉぉぉ……」
畳の大広間に集まったのはぽろりと胸がはみ出そうな浴衣を着たぼいんぼいんなお姉ちゃん達でした。外見は魔族らしく青白い肌だったり、獣耳や尻尾が生えていたりするのですが、基本の造形が人間っぽいのでノープロブレムです。具体的には美人でおっぱいが大きければもーまんたいなのです。
「一献どうぞ~」
「あ、どうも……」
とぽとぽとお酒を注いでくれるお姉さんに、勇者はお礼を言いました。お礼を言いつつ視線が胸元にいっています。ガン見というやつですね。
「嫌だわお兄さん。そんなに見られたら恥ずかしい」
「え? ああ、すんません」
「でもそんなに見たいんだったら後でお部屋でゆっくりと♪」
「マジっすか!?」
「魔王様より接待を言い渡されておりますので」
「うー。命令でされるのも微妙だからやめとく」
「個人的にもお兄さんはウチの好みですわぁ」
「マジっすか!?」
「本気と書いてマジとルビを振るぐらいまじですわぁ」
「ぐはっ! 魔王に感謝したくなってくるあたり勇者としてはかなり駄目な気が……」
勇者ということは一応内緒なのでごにょごにょと独り言を呟いているのですが、お姉さんの方はあまり気にしていないようです。魔王陛下からの勅命であり、魔族である以上魔王陛下の命令は絶対厳守。更には直接魔王陛下からお声をかけていただくという栄誉に預かったお姉さん達は張り切って勇者をもてなすのでした。
「いや~。惜しいけど……すっげー惜しいけどやめとくわ」
しかしなけなしの理性を振り絞ってお断りする勇者でした。
この状況で断るのは勇者というよりへたれと言われても仕方がない気もしますが。
「なんで?」
「いや……」
断らざるを得ない事情を詳らかにするのは恥ずかしく、勇者はごにょごにょとお姉さんに耳打ちするのでした。
「まあっ!」
その事実を知ったお姉さんがビックリして、近くにいた別のお姉さん達を呼び寄せました。
「ちょっとちょっと! みんなこっちにおいでっ!」
「ええっ!?」
お断りしたはずなのに何故か擦り寄ってくるお姉さん達に戸惑う勇者でした。
「む、むね……むね……おっぱいがむにむに……」
両腕と背中にむにむにとした極上感触を味わいながら、勇者はおろおろしています。ぼいんが好きでも全く女慣れしていないのです。
つまり……
「このお兄さんまだなんですって! 折角だからウチらで筆下ろししてあげましょうよ!」
「いいわねそれっ! 中々可愛い顔してるし、私は大歓迎よっ!」
「というか初めてで三人って逆にトラウマになるんじゃ……」
盛り上がる二人と違い、一人だけ常識人発言をする獣耳のぼいんさんがいました。
「だから! ウチらでトラウマどころか中毒者にするぐらい天国見せてあげればいいじゃないっ!」
「そうよ!」
「ああ、なるほど。頑張る」
「ええええええええぇぇぇぇぇ!?」
あれよあれよと暗い部屋に引き摺られていく勇者なのでした。
言葉通りに天国を見せられる勇者ですが、トラウマにはならなかったようです。
筆下ろしの意味が分からない幸せな読者様は、どうかそのままでいてください。
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