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勇者語り05

 まあ喚ばれてしまった以上は仕方がないということで、せっせと仕事を果たすことにする勇者でした。

 パワーアップした日本刀を携えて、ばったばったと魔物を薙ぎ倒していきます。

 一振りすれば三体ほど魔物が蹴散らされていきました。その強さは圧倒的で、勇者の名前はあっという間にカルラド大陸全土へと広がりました。

 そして召喚から日常生活まで勇者の世話をしているレヴェンス王は、周辺諸国への影響力を強めていきました。

 勇者を擁している国ということで、レヴェンス帝国は裏で色々とやりたい放題です。

 単純馬鹿の勇者はその事に気付きませんでした。

 自分がどんな事に利用されているのかも、魔族との戦いが一段落ついた後にどういう扱いを受けるのかも、その時は考えていませんでした。

 勇者が目指しているのは唯一つ。

 魔物を倒しハルマ大陸へと乗り込み、魔族を蹴散らして魔王の首を取ることです。

 そうすればお役御免ということで地球世界に帰れると信じていたのです。

 喚ぶ魔法があるのなら還す魔法もあるのだと信じて疑いませんでした。

 兵器として軍事利用される末路など予想すらしていませんでした。


 そうしてカルラド大陸に巣食う魔物をあらかた片づけてしまうと、今 度はハルマ大陸に単身で乗り込んでくれと言われました。

「単身で?」

 魔族が犇めく大陸に単身で乗り込めとはまさに自殺行為以外の何物でもありません。

 さすがの勇者もレヴェンス王に文句を言いました。

「無茶言うなよ。出来るわけないだろうが」

「いや。戦神の加護を持つ勇者殿だからこそ出来ると信じているのだよ。我々も戦力を出したいのは山々なのだが、魔族の呪いで火山の噴火や地震などが相次いだお陰で災害復興に人手を割かれているのだ」

 火山の噴火も地震もただの自然災害なのですが、被害妄想の激しい王様は魔族の呪いだと信じているようです。誰かに責任をなすりつけるのが大好きなのかもしれません。色々とどうしようもない王様です。

「……で、俺一人で行ってこいと?」

「そうだ」

「………………」

 勇者は考え込みます。

 魔族の巣窟であるハルマ大陸に単身で乗り込むのは確かに自殺行為ですが、足手まといを守りながら軍を進めるよりも、自分一人の方が身軽に動けるのではないだろうかと。

 勇者の力は圧倒的で、どんなに強い人間でも所詮は足手まといにしかなりません。

 ならば身軽に乗り込むのが最善なのではないだろうかという結論に至りました。

「いいだろう。俺が単身で乗り込んで魔王を退治してきてやる」

 勇者は安請け合いしました。

 こうして物語のお約束通り、勇者は魔王を倒しに行くのです。

 ただし『勇者ご一行様』的なパーティーを組むことはなく、孤独な一人旅という実に寂しい展開ですが。



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