バレンタインの復讐03
「ああ! その真っ白な骨! すらりとした骨格! 無駄肉のないスレンダーなボディ!君の姿はこんなにも俺の胸をときめかせる!」
「エェ!?Σ(´Д'li|!p)p」
いきなりときめき告白されたスカルくんはびくりとのけ反りながら一歩下がろうとします。
しかし勇者はがっしりとスカルくんの骨の手を握り締めて頬擦りしています。
「ガタガタ((((;;OдO;lll))))ガタガタ」
すっかり怯えてしまうスカルくんです。
「やっと出会えた運命の人……いや! 運命の骨! もう離さないぜ愛してる! 俺とどこまでも冒険の旅に出よう!」
「(c=(c=(c=(c=(゜ロ゜;c=アチャチャチャチャチャ-!!」
あまりの恐怖に暴れまくるスカルくんです。
「ああそんなに照れなくてもいいじゃないか! 大丈夫さ! 肉が無くても俺は君を愛してるぜ! 君の骨だけを撫でて舐め尽くしながらベッドで愛してやるから安心していいんだ!」
「ギャァ━━il|liノ)゜Д゜(ヽil|li━━ァァッッ!!!!)」
スカルくん一層怯えています。
見ていて可哀想なぐらいです。
「あれは一体……」
思いっきり憐れむ視線を向けているのは黒鍵騎士でした。
勇者の醜態に目もあてられないようです。
「惚れ薬だ。魔女はあのチョコレートに惚れ薬を混入してやがったのだ。……余は大丈夫のようだが」
魔王が説明してくれます。
「うん。魔王のには入れてないよ。黒鍵騎士の分もね。だから安心して食べていいよ」
「ほっ……」
胸を撫で下ろす黒鍵騎士でした。
「どうしてあのような真似を?」
「復讐だよ」
「復讐?」
魔王の質問に魔女がにんまりと微笑みます。
「前にね、私がいない間、勝手ににゃんこの耳尻尾をもふもふしてやがったのよ。ご主人様としては断じて許せないんだよね。だから復讐♪ 精々骨に愛を囁けばいいんだわ~♪」
「………………」
「………………」
なんて惨い復讐を……と震え上がる主従二人組でした。
「心配しなくても一時間ぐらいで元に戻るよ。スカルくんも怯えてるし、さすがに骨とベッドインはしないでしょ」
「そうか……」
「間に合って貰いたいものですね……」
「まあそれはそれで興味あるけど」
「やめておけ」
一歩間違えば自分が愛を囁かれていたのです。魔王としては色々複雑な気分でした。
魔女にとってはスカルくんでも魔王でもどちらでもよかったようです。
にゃんこと黒鍵騎士だけは守ってくれたようですが。
「骨盤も魅力的だな、くふふ……」
「ヾ(悲゜Д゜)ノィゃァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
勇者がスカルくんの骨盤を撫で始めました。そろそろヤバい状態です。
スカルくんが哀れすぎます。
「にゃんこ」
「なに?」
「客間のベッドを整えてきてくれる? 使うかもしれないから」
「うん」
ぱたぱたと客間に行く素直なにゃんこでした。
ベッドインはギリギリで回避されました。
「。:゜(。ノω\。)゜・。 ウワァーン」
すっかりキズモノにされたスカルくんは流れぬ涙を流しています。
「魔女酷い魔女怖い魔女残虐鬼魔女……」
がくがくぶるぶると振るえているのは正気に戻った勇者でした。
ある意味において自業自得とはいえこれはあまりに酷い仕打ちです。
骨に愛を囁く自分。しかもその記憶がバッチリ残っているのです。人生最大の汚点と言うべきおぞましい記憶です。
魔女にかかってはバレンタインすら平和とは無縁になってしまうのでした。
というわけでシーズンネタ終了です。
魔女・にゃんこ・勇者・魔王・黒鍵騎士がレギュラー陣となりつつあります。
まあ書きやすいからそれでいっかみたいな?
とりあえず勇者はご愁傷様です。
コレに懲りたら勝手ににゃんこをもふもふしないように気を付けましょう。




