バレンタインの復讐02
「よお! チョコを貰いに来てやったぜ!」
「義理でもいいからくれると嬉しいぞ!」
「……すみません厚かましくて」
「………………」
新たなる来客は勇者と魔王と黒鍵騎士でした。
というかなんでバレンタインの事を知っているのでしょうこの異世界人達。
勇者は地球出身ですが、勇者がいた時代にバレンタインデーは日本に存在していないはずです。
「なんとなくここにやってきたらチョコをもらえる気がしたんだ!」
「……なにその超感覚」
「百の勇者スキルのうちの一つ、『勇者未来予知』だ!」
「うわ。便利そう」
実際便利です。
「で、魔王は?」
「うむ。暇なんで魔女を水晶玉で覗き見していたらチョコを作っていたのでな。便乗しておこぼれをもらおうと思ったのだ!」
えっへんと胸を張るロリコン魔王。それはストーカーというものです。
「女の子の私生活を覗き見するなこのロリコン魔王――っ!」
「ぎゃふんっ!」
魔力を籠めた右ストレートで魔王をぶっとばします。
勇者を山の向こうまでぶっとばしたアレです。
こうして魔王陛下はお星様になりました。
……嘘です。
「まったく仕方がないなぁ」
魔女はそういいつつも予想はしていたらしく、それぞれに用意していたチョコレートを渡してやります。
「勇者にはこれ」
勇者には白い包みのチョコを渡してあげます。
「お、さんきゅー!」
お義理百パーセントですが女の子からのチョコはやっぱり嬉しいらしくほくほく顔です。
「魔王にはこれ」
「うむ!」
左頬を腫れあがらせた魔王が嬉しそうにチョコを受け取ります。お義理百二十パーセントです。
「黒鍵騎士にはこれね」
最後に黒鍵騎士です。にゃんこと同じぐらい凝ったラッピングで、いかにも本命といった感じです。
「私の分もあるのですか?」
「あるよ。受け取ってちょーだいな」
「ありがとうございます」
普通なら裏があると疑うところですが、勇者にも魔王にも平等に渡しているので今回ばかりは嬉しそうにはにかむ黒鍵騎士でした。
「食べていいのか?」
「いいよ。今お茶を淹れさせるから」
魔女は外にいたスカルくんを招き寄せてお茶を淹れさせます。最近はスカルくんも色々と出来ることが増えました。
お茶を淹れることもその一つです。
まだまだ一流とは言えませんが所詮勇者と魔王が相手ですのでスカルくんで十分です。
にゃんこと黒鍵騎士の分は手ずから淹れてあげます。
何の差かって? そりゃあもちろんもふもふ愛の差です。決まってるじゃないですか。
「~□Pヘ(^‥^=)~」
「おお、さんきゅ~スカルくん」
「よくできておるな。なかなかに高性能だ」
勇者と魔王はスカルくんの淹れてくれたお茶を飲みながらチョコレートクッキーを頬張ります。
「うまいな~」
「うむ。魔女はお菓子作りも天才的だ!」
二人とも満足そうです。
「………………」
そして魔女はにゃんこと黒鍵騎士を勇者の視界から外すように移動させます。
「ますたぁ?」
「魔女殿?」
「いいからいいから」
不思議そうに首を傾げるにゃんこと黒鍵騎士を制しながら、魔女は勇者の様子を見守ります。
「………………」
「(・_・")?」
勇者は側に控えていたスカルくんをまじまじと見つめていました。
その瞳には何故か熱が籠もっています。
「っ!!」
それの意味するところに気付いた魔王は速攻で勇者から距離を取りました。そして慌てて魔女のところまで避難してきます。
「おお、さすがに鋭いね」
「……あ、危ないじゃないかっ! 下手をすれば余が対象になっておったところだぞ!」
魔女を睨みつけながらこそこそと叫ぶ魔王です。冷や汗ダラダラです。
「何の話ですか?」
「うみゅ?」
状況に付いていけない黒鍵騎士とにゃんこだけが戸惑っています。
「まあまあ、見ていれば分かるよ。うふふ」
とても底意地の悪い笑みを浮かべながら、魔女は勇者を見守ります。




