ババアの使用済みで良ければだけど?
再び街へ買い物に出かけると、転移魔法を使う度に預かり所の人にビックリされてしまうので、魔女は不愉快な気分になりました。
この世界でも魔女は不吉な存在のようです。
『近づくなこの魔女め!』
などと言われると腹立たしい気分になります。
呪いの一つでもかけてやりたい気分です。
というか、かけちゃいましたけどね。
バレない程度のもので、一か月ほど便秘になってしまう呪いです。
預かり所の人、ご愁傷様です。
何はともあれ必要以上に他人と関わらない方がいいということは学びました。
しかし転移魔法がないと買い物の際は不便です。
ここは一つ新しいアイテムを作成しましょう。
「えーっと、こうやって、こうやって、こうかな?」
先代魔女の記憶と書庫のデータを照らし合わせてアイテム作成に熱中しています。
アイテム自体はすぐに出来上がる筈なのですが、デザインに拘ったために余計な時間を浪費しています。
「できた♪」
新作アイテム完成しました。
『魔女の鞄』
形状:可愛らしい手提げ鞄。
機能:千キロまで品物を入れることが出来る。大きさは関係なく、いくらでも入る。いくら入れても手に持ったときの重さは一キロに固定される。ドラ●もんのポケットみたいなもの。セキュリティ機能付き。魔女以外の者が手にすると強制的に裸踊りをしてしまう呪いがかけられている。ナイスバディなお姉さんが手にすれば周りの男に幸福を与えるが、酒臭いマッチョな親父が手にした場合には悲惨なことになる。
「さあ! 買い物にいくぞーっ!」
割と浪費家な魔女は今度こそ買い物に行こうとしました。
「………………」
行こうとしたのですが、財布の中身を見てしょんぼりとなりました。
「……お金、ない」
ここのところ考え無しに浪費してしまっていたので財産が底を尽きかけていました。
家庭菜園があるので食べるのに困ることはありませんが、それでもお金がないというのは非常に切ないものがあります。
「か、稼がなければっ!」
魔女は危機感一杯に拳を握り締めます。
生活には困らなくても生活に潤いが無くなるのは非常に困ります。
欲しいものはたくさんありますし、まだまだ家具も新調したいのです。
先代魔女の遺産を遣い回していますが、やはりご老体だったので趣味が合いません。
もっと可愛くて機能美に満ちた家具や道具を揃えたいのです。
現代っ子はワガママです。
一応、先代魔女の残したお金とか無いかな~と箪笥を探ったりしてみました。
「………………」
お金はありませんでしたがお金に換えられそうなものは見つけました。
魔女の入れ歯です。
歯の部分が全て黄金仕様です。
『魔女の入れ歯』
ご老体の必須アイテム。すべて金歯仕様。とてもお金がかかっている。
「うーん。これをお金に換えるのはちょっと嫌かも……」
とてもしょっぱい気分になりました。
魔女は布越しに入れ歯を取り出してスカルくんに渡しました。
「(A゜∇゜)ハテッ?」
スカルくんは首を傾げます。
「これは入れ歯。ババアの使用済みでよければ誰かつければ? 金ぴかだからファッション代わりになるかもよ」
「( ̄へ ̄|||) ウーム」
スカルくんは微妙な気分で入れ歯を見詰めました。
……その後、入れ歯を使用したスカルくんは一体もいませんでした。
魔女の入れ歯は裏手に埋められています。
きっとこの先もずっと埋まっていることでしょう。