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東方災生変  作者: すばみずる
幕後劇
47/51

046:ぶっ飛び

前回までのあらすじ

よろしいならばポーカーだ

 結果だけで言うなら、フランドールの圧勝だった。何が原因かと言えば、持ち前の運だろう。素でフォーカードファイブカードが当たり前の奴に勝てる気はしない。

 そして、勝者の権利としてフランドールが下した命令は、何を考えてその命令にしたのか考えたくない命令だった。

「全員、私の駒になりなさい」

 耳を疑った。だが僕の耳は残念な事に正常だった。

 次に疑ったのはフランドールの頭だ。だがこいつの頭は残念な事に狂っていると自分で言っていた。

「妹様、部外者二人はともかく、私や凪人は既に紅魔館へ忠誠を誓っております」

「私へ、じゃなくてお姉様への忠誠、でしょ。私は自分のモノが欲しいの」

 モノとか言いやがりましたよこのクソガキ。忠誠心なんて概念そのものが思考に存在しない自分には理解出来ないが、紅さんはそれを気に掛けている様に見えた。

「因みに、何でまたそんな事を?」

「近い未来で必要になるだろうから」

「何に」

「さぁ?」

 駒と言う名の体の良い下僕が欲しいだけなんじゃ無かろうか。

「まぁ、私だってお姉様と血が繋がっているのだもの。始まりは分からなくても終わりは見えるしね」

 奇妙な事を言うと、興味が無くなったのかベッドに向かっていってしまった。

 訳も分からず立ちん坊の四人は、互いに顔を併せて疑問符を確かめ合った。




 場所は変わって、紅魔館一階。紅さんの部屋。

 どうしたものかと悩んだ末、取り敢えずフランドールの傍から離れようとなった結果、妖精二人を連れていける所てなるとここ辺りだった。

 殺風景な僕の部屋とは違い、様々な置物や収集品が飾られた紅さんの部屋。やはりどこか中華風に感じる。青龍刀なんかがある所為だろうか。

「どうしましょう」

 紅さんが困った顔で言うが、肩をすくめる以外に答える事が出来ない。何せ、僕にとってはわりかしどうでも良い話だからだ。どちらの吸血鬼に使えようが変わりはしない。

「私達は良いにしても、この子達をどうすればいいか……。妹様の傍に置かせるのも、ちょっと」

「つ、謹んで辞退させていただきまひゅ!」

 ぶんぶん首を振る大妖精。噛むほど慌てたのか、口に手を当てて痛がっている。

「あたいはいーよ。仲間に入れてくれるって事でしょ?」

「人外軍団の劣兵として扱われるかもしれない仲間、だけどな」

 ぼそりと呟く。能力柄、捨て駒は向いているかもしれないが、適材適所が意に添うものであるとは限らない。

「まぁ、何日か過ぎたら忘れてると思いますし、大丈夫でしょう」

 希望的観測に他ならない紅さんの言葉だが、それには不安要素が見え隠れしている。フランドールが忘れなければ僕らは幾日待とうと彼女のおもちゃだ。ああ冗談では無い。まるで全編オールカットされたかの様な負けなどしなければよかった。


 侵入者や妹様のプチ御乱心があった頃、当主サマであるレミリア・スカーレットは何をやっていたかと言うと、呑気に神社で茶ぁしばいてたとほざきやがった。

 無論、使用人であるのだから雇い主が何をやっていようと関係無いし、口出しすべきでは無い。睨む位が関の山だ。

 と言うか、ちょっと前に争った相手とのんびりするって何だよ。

「お嬢様だから仕方無い」

 仕事が粗方終わり、少しばかり十六夜に愚痴ってみればこれだ。甘やかすと言うより放任に近い。ダメだこりゃ。

「馬鹿ね、そこがいいんじゃない」

「自分勝手で誰も省みず傍若無人を絵に描いた様な所が?」

 そう、と頷く十六夜。なるほど、こいつは根が深そうな嗜好だ。親の顔が見てみたい。

「私の趣味趣向がどうであれ、貴方にとやかく言われる筋合いは無いわよ。――それよりも、これ」

 不意に差し出してきたのは、白い横長の――手紙なんかを出すときに使いそうな封筒。丁寧に赤い蝋封までされている。

「これは?」

「ちょっと届け物を頼まれて欲しいのよ」

「自分で行く……訳にはいかないか」

 時間停止がどれ程出来るのか知らないが、数瞬でもコイツが紅魔館にいなければどうなるか。想像したくない。

「お嬢様に話は付けてあるわ。ちょっと遠いけど、朝方までに届けられる筈よ」

「……夜通し走れと?」

「歩いても良いけど、あまりお勧めしないわ」

 飛ぶのが当たり前な奴らに移動時間について話されるのはどこか釈然としないが、まあ良い。雇い主に話が付けられているなら拒否する理由も無い。何より、夜通し立ちん坊と比べてどちらがましか。

「どこに届ければいいんだ?」

 青い瞳が揺らいだ様に見えたのは、多分気のせいじゃない。どこかで見たことのある顔だった。

「――太陽の畑」

 それだけ伝えて、十六夜は何処へと消えた。

 残されたのは封筒と、幽かに漂う血の臭いだった。


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