043:U.N.オーエンは……?#2
注意 ジョジョ成分が多量に含まれております
苦手な方は適当な気持ちでお読みください
本当なら、無関係のままでいたかった。
警報が鳴ろうが建物が崩れようが、僕には関係無い事だと断して大妖精と共にポーカーに興じていたかった。
それなのに。ああ、それなのに。
『下男、赤瀬凪人。下男、赤瀬凪人。至急、妹様の寝室前へ来なさい。至急、妹様の寝室前へ来なさい』
鼓膜が破れるギリギリの音量、声として認識出来たのが奇跡的な声が、僕の名前を呼んでいた。
「あ、あ、あの、こ、これ、これって」
泡食った大妖精が必死に聞いてくるが、今はこちらを応対する暇は無い。
「悪い、ちょっと行ってくる」
短い謝罪をして、雇われた際に左手の甲に刻まれた魔法陣に触れる。
「『只今参ります』」
キーワードを唱えると、青白い光と共に少し浮遊感。慌てる大妖精の顔が光に隠れ――次の瞬間、例の廊下の例の部屋の例のドアの前に立っていた。
「…………」
いや、ドアだった場所の前に、と言うべきだろうか。真新しかった鉄の扉は蝶番ごと消え失せ、地下室への石階段が寒々しい空気を辺りに流出させていた。
なんでったってこんな事になった。思わずこめかみを抑える。
『現在レミリア・スカーレットと十六夜咲夜は外出中。迅速に妹様の機嫌を回復させよ。以上』
「そーゆーのを無茶振りって言うんだよ!」
つまりあれか。端的に死ねと。
ドアをぶっ飛ばすほどshitな状態のフランドールなんて相手して良い存在なのか怪しいんじゃないか。逃げなきゃいけないイベント戦かなんかかこれは。
「中の様子は?」
『探知魔法等は現在機能していない』
名も知らない魔法使いチッ、と舌打ちをする。面倒な事この上ない。入った瞬間粉砕されるのがオチじゃないか。
グダグダ言っていてもやらされるのは変わらないんだ。嫌々ながら、地下室への第一歩を踏み出す。
そして二歩目。二歩目で、その粘つく空気の中で、僕はある事に気付く。
「なんで瓦礫が『廊下側』に無かったんだ? 『内側から』ぶっ壊されたなら『外側へ』ドアの破片やらが行くんじゃあないか?」
おかしい。幾らフランドールがイカレていても、こんな事はしない筈だ。
もしかして――有り得ないと信じているが――地下室へ誰かが侵入しているのか?
馬鹿な、そんなクレイジーな事あるものか。ここの存在を知っている者が、わざわざ好き好んで入りに来る場所では無い。であれば何だ? この奥には何がいる?
「作りかけだが、仕方ない」
腰のベルトに留められた杭を二本、両手に持つ。地下室の永久再生術式にキャパシティを食われていない今なら、多少の無茶も出来るだろう。
「――『グングニル』」
茶色い筈の杭が、紅く染まる。脈動するその力は、まるで生きているかの様だ。
レミリア・スカーレットの魔槍。その力が、完璧な模倣により顕現する。あれ以上とは言えないが、あれと同等の力は自負する。
それを真っ直ぐ、地下室の闇へと思い切り投擲する。途中に曲がる事は無い筈だし、フランドールならこの程度は軽く躱せる。侵入者に当たれば御の字だ。
ついで――むしろこちらがメインだが――この地下室に漂う異様な雰囲気を、少しでも気のせいにしておきたかった。何もいなければ、何も無ければ、この不安感も無くなる筈だから。
だが、俺の想いは簡単に吹き飛ぶ。
「ッ――――!!!」
激痛。筋肉にめり込み、骨を砕く音。血は噴き出さず洗ったばかりの体と卸し立てのワイシャツを汚す。
なんだ? 今一体何が起こった? こんな事は有り得ない筈だ、夢でも見ているのか?
「クソが……やり合うつもりかよ」
精一杯の虚勢で悪態を吐く。それが侵入者に聞こえていようがいまいがどうでもいい。気持ちで負けてたら仕方ない。
痛み自体は良い。どうせこんな程度で死にはしないし、慣れてる。今にも串刺し刑にしようとしてくる杭だって、すぐに抜いて捨てればいいんだから。
これが俺の背中から――左肩と右肩甲骨から感じたものでなければ、僕はこれ程あわてなかったのに。
「(い、今…………僕には何もわからなかった! 何も感じられなかった! よそ見をしてた訳でも、気を抜いていた訳でもないのに、『何が起こったのかさっぱり分からなかった』!! 気が付けば僕の背中に僕が投げた杭が突き刺さっていたんだ!! こいつぁ危険い!!)」
どうする、と思考する前に、僕の足は後方へステップを踏んでいた。一刻も早く此処から逃げなければいけないと、本能が既に悟っていたから。
だがそれすらも、侵入者は許さない。
「……………?」
一歩、二歩、三歩――――四歩、五歩、六歩と後ろに下がった所で、ようやく異変に気付いた。
僕が地下室へと歩を進めたのは何回だ? さっきの衝撃で多少は全身したかもしれないが、すぐ戻れる範囲だった筈だ。それなのに、ほら、七歩戻っても、元の廊下に戻れないじゃないか――!
「ウソ、だろ……!?」
振り返った。ああ、後から考えれば、その意識の隙間を狙われていたのかもしれない。だが、そんな状況だったら振り返る以外どうしろっていうんだ?
完全に振り返った瞬間、俺は既に地下室へと降りていた。
「な…………あ…………?」
もう、意味が分からない。ここらへんのくだりが分かる奴なんているんだろうか。理解不能としか言いようが無い。
どうすればいい。こんな事態なんて想定外だ。これじゃあ動けば動くだけどうなるか分かったもんじゃあない。落ち着け。冷静になるんだ。こんな状況にだって何か手段がある筈だ。
「なぁ、人間は何の為に生きているか、考えた事はあるか?」
必死に思考する俺を嘲笑うかの様に、僕の背後から声が響く。今度は、振り向かない。
「生きる意味の無い人間なんて、いると思うか?」
「……」
ああ、分かった。こいつが侵入者だとか、そんなどうでもいいことじゃない。もっと根本的な事が分かった。
こいつは会話をするつもりは無い。壁と会話しているのと同じだ。独り言をまるで他人に聞かせているかの様にしゃべっているだけだ。
根拠と言う程強いものは無い。どこかで、僕はこんな奴の独り語りを聞いていた気がする。そんな程度のものだ。
「……お前は、誰だ?」
それでも、僕はそれを問わねばいけなかった。それが僕の責務だから。
「ただの吸血鬼、だ」
「なんでここにいる」
腰にある杭――ダメだ、使えない。投げようとするアクションさえあれば、こいつは何をやらかすか。
「興味があった」
「何に対する」
「幻想郷全てに」
やはり能力に頼る他無い。生成するより、この場を掌握出来る様な力を使うしかないのか。
「紅魔館も、霧の湖も、白玉楼も、マヨヒガも、永遠亭も、迷いの竹林も、人里も、妖怪の山も、魔法の森も、香霖堂も、無名の丘も、太陽の畑も――――全て見たい。ここは、ただ最初に選んだだけの場所に過ぎない」
「迷惑な話だ」
「だろーな」
レミリアの結界、はダメだ。高出力過ぎて倒れかねない。であればもう一つ、いや、それしかないのか。あのメイドの技を再現させてもらおう。
「帰れよ」
「嫌だと言ったら?」
「殺してでも帰す」
「無駄だ」
そう、時間よ止まれ。時間よ止まれ。時よ――あれを止めてくれ。
治療を終えたばかりの能力を再び酷使させる。頭がギシギシ痛いだす。そんな事はどうでもいい。早くこの時を止めてくれ。あれを殺す為に!
「だから言ってるだろ、無駄だって」
願いながら振り向いた先には、石の階段。砕けた鉄の扉。瓦礫。ただ、それしかない。
僕に話しかけていた存在なんて、影も形も無くなっていた。
「まッ、てめぇがどんなもんかは分かったんだ。とりあえず、今は出てっておいてやるよ」
ははははは、ははははははは―――――――。地下室に木霊する、愉快で不快な笑い声。僕はそれを、唇を噛み締めながら聞くしかなかった。
ジョジョMADを聞きながら書いたらこうなった。
クオリティに関しては夜更かしして書いたのが原因か。