第八章 新しいメンバー
ついにパーティーが三人に!
セラの反応は……まあ、予想どおり波乱含みです。
チーム名を決めたり、初の三人旅の準備をしたりと、
にぎやかな幕開けになります。
宿に戻ってエランの話をセラにした途端、彼女の機嫌が急降下した。
「そんな大事な話、なんで勝手に決めてくるの!」
「論理的に考えて、問題はないと判断したから。」
「そういうことじゃない! 私はどうなるのよ!」
「もちろん、セラはメンバーのままだ。」
「ちがーう!!」
藤崎には、セラが何に怒っているのかまったく理解できなかった。
「ちょっと、そこに座って!!」
「はい。」
セラは腕を組み、真剣な表情で言い放つ。
「いい? 私たちはバディ、相棒なの。依頼遂行中は一心同体、一蓮托生、運命共同体なのよ。分かる?」
「はい。」
「冒険者は常に緊張感を持って行動しなきゃいけない。意思の疎通が不十分だと、それが命取りになることだってあるの。だから普段から親密な関係を築くことが大事なの!」
「はい……?」
「なのに、どこの馬の骨とも分からないやつが入ってきたら、関係を深めるチャンスが減るじゃない。そんなのありえない!」
「あの、ちょっと……。」
「何か文句ある?」
藤崎はセラをじっと見つめた。
何を言ったか気づいたのか、セラは急に顔を赤くする。
「あわわ、と、とにかく私は反対だからね!!」
そう叫ぶと、セラは勢いよく自室に駆け込んでいった。
翌日。
ギルドでエランとセラが顔を合わせた。
「よろしくね、セラちゃん♪」
「……よろしく。」
昨日のこともあり、セラは文句を言わなかったが、明らかに表情が硬い。
ため息をついた藤崎は、受付に向かい依頼掲示板を見ていた。
「藤崎さん、D級になったんですね。おめでとうございます。」
「ありがとう。あと、パーティーメンバーも増えたから。」
「エランさんですね。では正式にパーティー登録をしますので、名前を決めてください。」
「名前?」
「はい。3人以上になると、パーティー名の登録ができるんです。」
「なるほど、名前か……。」
「はいはい!! ツインアローで決まり!」
セラが勢いよく叫んだ。
「私たちは二人でひとつ、矢のように一直線に進むのよ!」
「二人じゃないじゃん。」
エランが即座に突っ込む。
「私は《ルミナス・コード》がいいと思うの。光が導く運命の糸――なんかおしゃれでしょ?」
「ぜんっぜん良くない!!」
「あなたのよりはましよ!」
二人の言い合いが白熱する中、藤崎が小さくつぶやいた。
「……エンにしよう。」
「え?」
二人が同時に振り向く。
「チーム・エンだ。」
藤崎は静かに続けた。
「“縁”でもあり、“円”でもある。私の世界の言葉は、一つでいくつもの意味を持つ。この“エン”には、関係、つながり、そして丸く調和するという意味がある。」
少し間を置いて、藤崎は微笑む。
「チームは関係性の輪であり、誰が増えても減っても丸くつながっていける――そういう意味を込めたい。」
エランとセラは顔を見合わせ、同時にうなずいた。
「……悪くないわね。」
「まあ、響きはいいかも。」
「じゃあ、チーム・エンで決まりだな。」
藤崎がそう言うと、受付嬢が微笑んだ。
「素敵な名前ですね。では、登録しておきますね。」
「さてと、新しい依頼を探すか。」
セラとエランは受付嬢と話し込んでいる。
パーティーがD級になったことで、受けられる依頼の幅が広がった。
「やっぱりモンスター討伐でしょ! 報酬が段違いにいいわよね。」
「いきなり討伐は危険すぎるわ。まずは護衛任務で実績を積むべきよ。」
二人の意見は真っ向から対立。受付嬢が困った顔をしている。
藤崎はため息をつき、掲示板の方へ歩いた。
せっかく三人になったのだから、全員の力を発揮できる依頼がいい。
「これなんかどうだろう。」
藤崎は、まだ言い争う二人を横目に受付へ羊皮紙を差し出した。
「詳しい内容を教えてくれる?」
受付嬢は依頼票の束から一枚を取り出した。
「こちらですね。センターラ街の巡回兵が四名、行方不明になったので捜索してほしいという依頼です。」
説明によると、センターラ街の近くには毒霧の発生する沼地があり、巡回兵が立ち入りを防いでいたが、その兵たちが消息を絶ったという。
「最近掲示されたばかりで、まだ誰も受けていません。」
「よし、受けよう。」
「では手続きを進めますね。」
宿に戻り、藤崎は依頼内容を二人に説明した。
「センターラ街って、ここから二日くらい歩いたところにある町ですよね。沼があるのは知ってたけど、行方不明になるほど危険とは聞いてないけど。」
「私も何度か行ったことあるよ。小さな町だから、聞き込みしたら何か分かるかも。」
藤崎たちは必要な装備を整え、センターラ街へと向かうことになった。
チーム名「エン」、けっこう気に入ってます。
縁・円・そして“つながり”――藤崎らしい命名ですね。
次回はさっそく初任務へ出発!
センターラ街で、またひと波乱ありそうです。




