第三章 さあハンターの始まりだ
食堂でステーキを食べ、握手してパーティー結成。
いよいよハンターとしての第一歩です!
……とはいえ、最初の依頼が地味すぎる気も?
裏手にある宿はすぐに見つかった。
藤崎はセラに手を貸しながら中へ入る。
受付で手続きを済ませ、二人分の名前を宿帳に記入した。
「部屋はいくつかございますが、お一つでよろしいですか?」
「二つ。」
即答だった。
セラが何か言っていたが、藤崎に見ず知らずの女と同室で寝るつもりはなかった。
「宿代は私が出す。それより、何か食べられるものはあるか?」
「時間も遅いので、あるものだけになりますが、それでよろしければ。」
「それで頼む。」
二人は食堂へ向かった。
出てきたのはシチューとステーキ。
あり合わせと言われたが、なかなか美味い。
「足の調子はどうだ?」
「さっきより良くなってるよ。明日には治るんじゃない?」
「それならいい。ゆっくり休め。」
セラは少し間を置いてから言った。
「ねえ、私を相棒にしない? ハンターランクを上げていくんでしょ。私と組めば効率いいと思うんだけど。」
確かにその方が合理的だ。
この世界について右も左も分からない藤崎にとって、多少なりとも事情を知る者がいるのは心強い。
「なぜ私なんだ?」
「早くランクを上げてお金を稼ぎたいの。」
セラは、森の外れにあるフェルス村という辺境の集落から来たという。
「何もない場所でね、土地も痩せて作物も採れないの。だから皆、出稼ぎに出るのよ。私は狩りが得意だからハンターになったの。」
「家族を助けたいんだな。」
「うん。お金を稼いで、家族に少しでもいい暮らしをさせたいの。」
――調整者の記憶によると、駆け出しのハンターが一年間生き残る確率は十五パーセント。
「最初に知り合った人間が死ぬのは、後味が悪いな。……よし、パートナーになろう。」
「そうこなくっちゃ!」
二人は握手した。
食事を終え、それぞれの部屋へ戻る。
藤崎はベッドに横たわると、すぐに眠りに落ちた。
翌朝。
セラの案内で町を歩く。
サイルーンは商業都市だけあって、人の出入りが激しい。
露店の声、荷車の音、香辛料の匂い――藤崎にとってはどれも新鮮だった。
「まずは見た目を何とかしなきゃね。」
ギルマスに教えられた店をいくつか回り、セラと店主の勧めで装備を整える。
革製の防具一式にショートソード、道具を入れるバッグ。
軽装だが、日帰りの依頼には十分らしい。
「大規模なパーティーを組まない限り、遠征はないでしょう。日帰りコースですからね。」
店主がそう説明した。
屋台で串焼きと野菜を買い、二人で昼食を取る。
「これはお礼ね。私の装備も買ってもらったし。」
セラが笑う。
確かに、装備を整えなければパーティーとしてのバランスが崩れる。
セラの防具は古く傷んでいたので、藤崎は自分と同程度のものを買い与えた。
昼食を終え、二人はギルドへ戻る。
F級でも受けられる依頼を探すためだ。
掲示板にはびっしりと依頼書が貼られていたが、ほとんどの人間はそれを読めないらしい。
読み書きできる者が少ないため、直接受付で聞く方が早い。
「薬草採取、ホーンラビット退治、ネズミの駆除、どぶ掃除、荷物配達――このあたりですね。」
受付嬢が依頼票を確認しながら説明する。
どれも危険の少ない、駆け出し向けの仕事ばかりだった。
――まあ、その薬草採取で銀龍に遭う者もいるのだが。
受付嬢と話すセラを横目に、藤崎は掲示板を眺めていた。
そこにはC級以上の依頼も多く、大型モンスターの討伐や商隊の護衛などが並んでいる。
「ん?」
ひとつだけ、色あせた羊皮紙が目にとまった。
文字もかすれているが、F級でも受けられると書かれている。
藤崎はそれを手に取り、受付へ持っていった。
「ああ、それですか。もう何年も前の依頼です。誰も受けないので放置されてますね。」
依頼内容は「アクセサリーの捜索」。
裕福な未亡人が、夫との思い出の品を探してほしいというものだった。
「ただ、探す場所が決まっていないんです。依頼主もどこで失くしたのか覚えておられなくて。」
聞けば依頼主は高齢の女性で、町の中心から少し離れた高台の屋敷に住んでいるという。
「報酬は破格なんですが、場所が不明なので誰も受けないんです。」
「なるほど。」
今日の予定は終わっている。暇つぶしにはちょうどいい。
「この依頼、受けてみようと思う。」
「え、本気なの?」セラがあきれたように言う。
「駄目でも損はないだろう?」
「まあ、確かに。」
藤崎は受付に依頼を受ける旨を伝え、手続きを済ませた。
なんだかんだでペア結成。
でも、最初の仕事が「アクセサリー探し」って……地味すぎる!
まあ、藤崎の瞑想スキルがあれば何とかなる……はず。




