第二十四章 貸す人、借りる人
いよいよ“銀行革命”が本格始動します。
利子に群がる商人と貴族たち、そして知らぬ間に広がる藤崎の影響力。
今回も静かに、とんでもない変化が起きていきます。
どうぞ気楽にお読みください。
リュセリアと王都に、ローデリア王国初となる銀行が開設された。
アーロンの領地とリュセリア自由貿易都市から徴収した税金は、これまで護衛をつけて運ぶ必要があった。
盗賊や野盗のリスクは常につきまとう。
しかし今は支店に預けるだけで、自動的に王都の口座へ送金される。
さらに商取引も、現金のやり取りを必要としないため安全性が大幅に向上した。
「おい、聞いたか? 銀行に金を預けると“利子”をくれるらしいぞ。」
「今までは運ぶだけで護衛代がかかったのに、逆に儲かるって話だ。」
「しかもよ、預けた次の日には、別の支店で引き出せるんだと!」
利に敏い商人たちは、すぐさま銀行の仕組みを理解し、次々に利用を始めた。
気づけば、各支店の預金額は日に日に雪だるま式に増えていく。
預金が増えるほど、帳簿と口座の管理は膨大になる。
金利計算、支店間の残高調整――どれも高度な知識が必要だった。
そこで藤崎は、これまで運営してきた学校の卒業生を銀行スタッフとして採用した。
読み書き、計算、帳簿の扱い。
藤崎が教えた“近代的な知識”を身につけた彼らは、想像以上に優秀だった。
支店間の連絡には、風魔法を応用した通信手段を利用していた。
無線の代わりに魔法の風で情報を遠くへ送るのだ。単純な文字しか送れないが、銀行間通信としてはそれで十分に役立った。
藤崎は特に制限を設けず、誰でも口座を開けるようにした。
利子が付くと知るや、貴族たちは屋敷の金庫に眠らせていた膨大な金貨・銀貨を銀行へ預け始める。
自宅に保管しておくより安全なうえ、預けているだけで金が増える。
これほど魅力的な話はない。
表では互いを牽制しあう第三皇太子派閥の貴族たちも、
そしてセレーネ王女の取り巻きですら、
“こっそりと”銀行を利用していた。
誰よりも先に富を増やしたい――
その欲望だけは、どの派閥の貴族であっても同じなのだ。
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貴族たちは、銀行に金を預けるだけで利息がつくことに驚いていた。
「なぜ預けただけで金が増えるのだ?」
「まさか魔法か? いや、そんなはずは……」
しかし誰一人、理由を深く考えようとはしなかった。
“自宅に置いておくより安全で、しかも増える”
――それだけで十分だったのだ。
アーロンですら、藤崎が銀行を作った本当の目的まで理解していなかった。
そして藤崎は、ついに銀行の本命――
“融資” を開始した。
まず対象としたのは、地道に商売を続けながら、資金さえあれば大きく伸びるはずの商人たち だった。
リュセリアに支店を開いて数日。
藤崎の元には、早くも相談が寄せられる。
「本当ですか? 事業資金を……貸していただけると?」
小規模商会の主が、震える声で藤崎に尋ねた。
藤崎は頷いた。
「ええ、金利は高くありません。返済計画もこちらで作ります。ただし――」
藤崎は、貸し倒れ保険の説明をした。
融資額にはあらかじめ“保険料”が含まれており、万が一返済不能になっても銀行が損をしない仕組みだ。
商人は大きく息をついた。
「それなら、安心して借りられます……!」
彼は小さな馬車と追加の商品のための資金を借り、取引先を一つ増やすことに成功した。
その成功が、あっという間に商会仲間に伝わる。
「藤崎銀行で資金を借りたら、事業が二倍になったらしいぞ。」
「しかも審査が早い。翌日には資金が用意されていると。」
「貸し倒れ保険? そんなものまで用意しているらしい。」
小口融資の利用者は日に日に増えた。
帳簿を扱える学校卒業生たちは連日フル稼働だった。
やがて融資額は預金額を大きく超えるようになった。
ついに融資まで始まり、完全に経済の主導権を握り始めた藤崎。
お金の流れが変われば、国も動く。まさに“貨幣革命”ですね。
次はいよいよ、この革命が周囲にどんな波紋を広げるのか――
引き続きお楽しみください!




