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第二十一章 藤崎の決意

王との密談がついに始まります。

晩餐会での緊張とは打って変わって、今回はけっこうフランクな雰囲気。

ただ、藤崎の見せる“異世界の映像”が、全部の空気をひっくり返します。


そして藤崎自身にも、大きな決意が生まれる章です。

どうぞ気楽にお読みください。

晩餐会の喧騒を背に、アーロン、藤崎、レナードの三人は、

側用人の案内で王宮の奥――最も私的な区域へと進んでいった。


豪奢な廊下を抜け、静かな扉の前で足を止める。

扉が開かれると、温かな灯りがこぼれた。


中に入ると、レオポルド三世が自ら立ち上がって待っていた。


「よくぞ参った。さあ、遠慮はいらぬ。座ってくれ。」


促されるまま三人は腰を下ろした。


王はしばし三人の顔を見回し、静かに頭を垂れた。


「まずは……アーロン、レナード。そして藤崎とやら。

この老骨の命をつないでくれたこと、感謝の念に堪えぬ。」


アーロンは慌てて立ち上がり、深く頭を下げた。


「もったいなきお言葉です。陛下のお命に関わること、

臣下として当然の務めを果たしたまでにございます。」


藤崎も胸に手を当てて礼をとる。


「微力ながら、お力になれたのであれば幸いです。」


レナードが穏やかに笑った。


「陛下のご回復、心より喜ばしく思いますぞ。」


王はその言葉にうなずき、しわの深い目元に笑みを浮かべた。


「うむ。余もまだ死ぬつもりはなかったでな。

こうして立ち、話せるほどに戻れたのも……皆のおかげよ。」


そして王の視線が、藤崎に向けられる。


「藤崎よ。そなたについて、アーロンから多くを聞いた。

異世界から来た、というのは……真か?」


「はい。」


王は身を乗り出す。


「魔法を自在に操り、銀龍のうろこを手に入れ、

縁とやらを読み、空を飛ぶ……。まるで、伝説の賢者であるな。」


「いえ、そんな大それた者ではありません。」


藤崎は苦笑しつつ、これまでの出来事を一通り説明した。

王は一つ一つに深く頷き、時に驚き、時に目を細めた。


そこへレナードが口を開いた。


「陛下。実は私は藤崎殿の“元の世界”の映像を見せてもろうております。」


「映像……?」

王の眉がぴくりと動いた。


アーロンが驚いたように藤崎へ向き直る。


「おい。俺はそんなもの見せてもらった覚えは無いぞ?」


「あ、えー……機会がが無くて。」


「なら今、見せてもらおうじゃないか。」


「はあ……わかりました。」


藤崎は静かに目を閉じ、魔力を集中させる。

空間がほのかに揺らぎ――空中に白い光が生まれた。


次の瞬間、王宮とはまるで異なる景色が宙に映し出された。


高層ビル、電車、車の列。人々が行き交い、飛行機や船が動く。

王もアーロンも、目を見開いて固まる。


「……なん……じゃ、この光景は……。」


「私のいた世界です。魔法の代わりに科学技術を発展させたのです。」


アーロンは椅子から半身を起こした。


「信じられん……これが……藤崎の……。」


藤崎は淡々と説明を加える。


「この世界では様々な政治形態があります。

国によって制度は異なりますが……私の国は“民主制”といって、

王や貴族はいません。」


「王が……おらぬ?」

レオポルド三世が息を呑む。


「はい。国の運営は人々の合意で行われます。」


王はしばし黙し、やがて渋い表情で呟いた。


「なるほど……世界とは、広いものだな。」


その後も四人は様々な話題で盛り上がった。

恋愛観、文化、異世界の料理、政治制度、魔法の理論まで。

王の私室とは思えぬほど和やかで、自然体の会話が続いた。


やがて夜が更け、レナードが控えめに口を開く。


「陛下。そろそろお体に障りますかな。」


「む……そうか、もうそんな刻か。

楽しかったぞ。三人とも、本当に礼を言う。」


王の言葉に深く礼をし、三人は静かに部屋を辞した。


----------------------------


「良い王様ですね。」


帰りの馬車の中、藤崎がぽつりと感想を漏らした。

窓の外では王宮の灯りがゆっくり遠ざかっていく。


アーロンは腕を組んだまま、眉間に深い皺を寄せた。


「……俺が陛下を助けた理由が、やっと分かっただろう?

だがな、そのことがさらに事情をややこしくしてしまった。」


普段はどこか豪放な彼が、珍しく苦渋を滲ませた表情をしていた。


「この国を良くしたいと思っている連中は多い。

だが、そのためには――王に生きてもらわなきゃ困るんだ。

陛下が倒れれば、国は一気に引き裂かれる。」


ワインの残り香が漂う馬車の中に、重苦しい沈黙が落ちた。

車輪の揺れだけが、規則正しく響く。


藤崎はしばらく窓の外を見つめていたが、やがて静かに口を開いた。


「……もしも、この国を救う方法があるとしたら。

それが実現できる“何か”があるとしたら――」


アーロンが横目で藤崎を見た。


「最後まで付き合ってくれるか?」


「どういうことだ? 具体的には何をしようってんだ。」


藤崎は首を振った。


「今はまだ言えない。でも……この世界を変えることはできるかもしれない。

それが結果的に、この国を救うことにつながる気がするんだ。」


アーロンは一瞬ぽかんとした顔をし、それからふっと鼻で笑った。


「お前……またとんでもないこと考えついたな。

さっき王に見せていた、あの“常識外れ”の力を見た後だ――

もう何が出てきても驚かんぞ。」


そして、どこか頼もしい声で言った。


「地獄の底まで付き合ってやるさ。」


藤崎は苦笑し、肩をすくめる。


「できれば地獄行きは避けたいんだけど。」


「俺もだ。」

アーロンは笑い、馬車の壁に背を預けた。

「だが、お前が言うならきっと価値はあるんだろう。

その時が来たら、隠さず話してくれ。」


揺れる馬車の中で、二人はしばらく黙ったまま、

それぞれの胸に重い決意を抱えていた。


---------------------------

王様との対話を経て、藤崎がようやく“自分の進む道”を決めました。

アーロンとの掛け合いも安定してきて、いいコンビになってきましたね。


ここから物語は一気に動き出します。

次章も引き続き、ゆるっと読んでいただければ嬉しいです。

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