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第十四章 魔法研究所

王都での滞在が続く藤崎たち。

アーロンは「エリクサー」完成のため、銀龍のうろこを使う準備を始める。

その合間に、藤崎とエランは王宮の魔法研究所を訪ねることになった。

だが、そこで彼らを待っていたのは――思わぬ“力の証明”だった。

「ところでだ。」


アーロンがうろこを指先で転がしながら言った。

「エリクサーを調合するには、この一枚を――全部使わなくちゃならん。構わないか?」


藤崎は一瞬だけ考え、それからうなずいた。

「はい。それで完成するなら、構いません。」


「ハッハッハ、そうこなくちゃな!」

アーロンは満足そうに笑う。


「実を言うと、エリクサーの製法自体はすでに手に入れてある。

ただ、この百年ほど、誰も再現できなかっただけだ。」


「どのくらいで出来るんですか?」

「一ヶ月はかからんと思うが……まあ、俺にも正確には分からん。

待つ間は、うちに泊まっていけばいい。」


王都で宿を取るのは簡単だが、慣れない土地での生活は不安だ。

藤崎は素直に頭を下げた。

「お言葉に甘えます。」


アーロンはうなずき、ワインを一口飲む。

「待っているだけでは退屈だろう。昨日話した“王宮の魔法研究所”――行ってみるか?」

「はい、ぜひ。」


翌日。


藤崎がエランに話すと、彼女もすぐに同行を申し出た。

「せっかくだから私も行くわ。興味あるし。」


セラは肩をすくめる。

「私は王都を観光しておくよ。お土産、期待してるからね。」


こうして藤崎とエランは、アーロンから預かった紹介状を手に、王宮へ向かった。


王宮は王都の中心部にあり、その敷地は街の半分を占めるという。

とんでもなく高い塔がいくつもそびえ立ち、迷うことなく辿り着けた。


「私、緊張してきちゃった。」

珍しくエランが弱気な声を出す。

「いつも通りでいこう。」

藤崎が軽く笑って答える。


巨人でも通れそうな巨大な門の前で、衛兵に紹介状を見せた。

「確認いたします。少々お待ちください。」

しばらくして、二人は中へと通された。


衛兵に案内され、石畳の道を歩く。

王都の街並みも美しかったが、王宮の中はさらに洗練されていた。

まるで一枚の絵画の中に迷い込んだようだ。


「……きれい。」

エランは息をのむ。


華やかでありながら、どこか静謐で落ち着いた雰囲気。

現代建築で言えば、モダンデザインと自然が完璧に調和したような空間だった。


やがて、広大な敷地の奥――中心からやや離れた場所に、

一際重厚な建物が姿を現す。


灰銀色の壁に、古代文字のような紋章が刻まれている。

「あれが……魔法研究所か。」

藤崎が呟く。


衛兵が扉を叩くと、すぐに中から若い男が現れた。

「藤崎様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」


中へ入ると、どこか懐かしい匂いがした。

古い木製の家具と紙の香り――まるで学校の理科室のようだ。


部屋のあちこちで、ローブをまとった研究員たちが忙しなく動き回っている。

薬瓶を運ぶ者、魔法陣の計測をする者、呪文を唱える者。


魔法と科学の境界が曖昧に溶け合った世界が、そこには広がっていた。


研究所の最奥、重厚な扉の前で立ち止まる。

案内役の若い魔法士が頭を下げる。

「こちらが所長室です。長はお二人をお待ちしております。」


中に入ると、薬草と古文書の香りが鼻をくすぐった。

奥の机に、白髪と長い髭をたくわえた老人が座っている。


名は――レナード・グラン=ヴァイス。

宮廷魔法使いの長であり、王国の魔法研究を統べる人物だ。


二人を見ると立ち上がり、朗らかに笑った。

「おお、良く来てくれた。異世界の住人よ。そして麗しの魔女も。」


「初めまして。藤崎と申します。」

「エランです。」


藤崎がアーロンの手紙を差し出すと、レナードは懐かしそうに目を細めた。

「アーロンの紹介か。あやつとカイロスとは昔からの腐れ縁でな。まったく、歳を取っても落ち着かんわ。」


レナードは二人を大きなソファへ促し、軽く指を鳴らした。

若い魔法士が香り高い茶を淹れる。


「わしの自慢の茶葉じゃ。味わってくれ。」


濃厚な香りに複雑な味わい――高価な抹茶を思わせる。

藤崎は感心して頷いた。


「素晴らしい味です。」

「ほんと、今まで飲んだお茶の中で一番ね。」

「ふぉっふぉっ。うれしいことを言ってくれるわ。」


--------------------------


「ほうほう、異世界ではそんなに科学が進歩しておるのか。」

「私の世界では魔法が存在しませんが、その代わりに科学技術を進歩させてきました。空を飛んだり、深い海に潜ったりする機械もありますし、宇宙、他の星へ行く事も可能です。」

「聞けば聞くほど興味をそそられるわい。行けるものなら行ってみたいぞ。」


「見るだけなら、できますよ。」

エランが悪戯っぽく笑う。


「なに? 本当か?」

「本当です。ね、藤崎?」


藤崎はため息をついた。

「……仕方ないな。」


空中に手をかざすと、淡い光が広がり、立体映像が現れた。

高層ビル群、車の列、飛行機、そして宇宙へ向かうロケット。


「な、なんじゃこの映像は……!」

「藤崎の世界だそうです。」


映像が消えると、レナードは深く息をついた。

「すさまじい……。魔法とかわらぬ、いやそれ以上じゃな。」


「十分に発達した科学は、魔法と区別がつかない。

私の世界の科学者もそう言っていました。」


「なるほど、人間は魔法がなくとも考えたことを実現する力を持っていると言う事じゃな。」


「ただ、この人は魔法も使えるんですけどね。」

エランが茶を飲みながら微笑む。


「そういえば、お主は無限に魔力を出せると聞いたが、本当か?」


藤崎が答えようとした瞬間、エランが先に口を開いた。


「そうなんです。この人、私の身体を使って実験したんですよ。」

エランはウソ泣きの表情を作る。


「ほおほお、たとえばどんなことじゃ?」

「私の身体を触って、激しいことをいろいろと。」

「ちょっとまった!その言い方には悪意を感じるぞ。」

さすがにやりすぎたかと、エランは舌を出した。


「背中から大量の魔力を入れてきたんです。それを使って火魔法を放ったら、ヴェムトードが2発で完全に燃え尽きました。」

「な、なんと!お主のクラスは?」

「D級です。ギルマスはAか、S級の威力だったと言っていました。」


「S級が存在するかどうかも分からないから、それが正しいとは言えないと思うけど」

「いや、ギルマス・・・、カイロスの言うことは正しい。確かにS級でなければそれだけの火魔法を放てるかどうか・・・。」

「どうしてそう思うんですか?」

「わしがS級だからじゃ。」

「あ、そうなんですね・・・・、って! え?!S級!!!!」

レナードは破顔した。

「S級魔法使いはこの国、いやこの大陸でも3人しかおらん。そのうちの一人がわしじゃ。だが今の話、本当なら大変な事になりそうじゃの。」


藤崎に向き直る。

「――のう、ここで見せてくれんか?」


「ここで、ですか?」

「ここは魔法研究所じゃ。いくらでも試せる場所がある。」


エランがにやりと笑う。

「いいじゃない。せっかくだし。」

「……はあ、分かりました。」


三人は建物の外にある広場へ移動した。

陸上競技場を二つ合わせたほどの広さがある。


「ここなら遠慮はいらんじゃろ。」

レナードが杖を振ると、地面が盛り上がり、人の形をした土の巨体が現れた。


「ゴーレムじゃ。あれを攻撃してみい。」


大きさは2mくらいだろうか。全身が土でおおわれている。


「じゃあやるか。エラン、そこに立って。」

藤崎はエランを少し前に行かせた。自分はすぐ後ろだ。

目を閉じて魔力を感じる。精神を開放すると、どっと勢いよく魔力が流れ込んできた。


”少し上乗せするか”

あの時はまだ魔法の使い方に慣れていなかったが、今は自分でも魔法を使うことができる。

魔力を練るように回転させ、炎が燃え盛るイメージを入れた。


エランの背中に手を当てる。

「あ、感じるぅ」


「おい」


「冗談よw」


「流すぞ」


エランは持っていた杖を掲げる。

「ファイア・・・!?」


エランの目の前に突然、火球が出現した。それは高熱を放ち、急激に大きくなる。

グオオオオっと言う振動、低いうなり声のような音が聞こえてきた。


「え? 制御できない!!」

火球が一瞬小さくなり、そのまま一直線にゴーレムへと飛んだ。


瞬間、爆風と共にすさまじい高熱と衝撃波が三人を襲った。


「バリア!!」

レナードが反射的に防御魔法を唱える。三人を透明のシールドが覆う。

世界が白く変わった。


しばらくして熱線と風が収まる。砂埃が大量に舞い上がり、視界が閉ざされている。


「エラン、大丈夫か?」

「大丈夫・・・、とは言えないみたいね。」


藤崎は爆風と熱線が来た瞬間に、エランを自分の後ろに隠したが、手足の一部は皮膚が焼けて炭化していた。

「ヒール!!」

ゆっくりと皮膚が再生していく。藤崎はほっと胸をなでおろした。


「すまない。私が余計な事をしたばかりに、エランにけがをさせてしまった。」


「責任、とってくれる?」


「私にできることなら。」


それを聞いてエランは笑った。

「あとで考えておくわね。」


「二人とも無事じゃったか?」

レナードが声をかけた。彼は全く無傷だ。


「はい、なんとか。」


やがて視界が回復し、惨状が明らかになると、レナードとエランは息をのんだ。

「な、なんじゃこの威力は・・・。」


広場の中央に巨大なクレーターが出現していた。深さはゆうに30mはあるだろう。

しかも周囲を囲んでいた壁は真っ黒に焦げており、未だに煙を立ち上らせていた。


「ヴェムトードを焼いた時は、もっと威力は弱かったわよ。」


「うん、ちょっとやり方を変えたんだ。」


エランが睨む。

「何をやったの?」


「魔力を練り上げながら、炎が爆発するイメージを入れた。」


「二度とやらないでね。」


二人は立ち上がる。レナードは呆然としてクレーターを眺めている。


「これはもうS級などと言うレベルではないわい。伝説の神の雷とでも言うべきか…、ん?」


騒ぎを聞きつけて人が集まってきた。

「お二人さん、わしの部屋へ戻ろう。騒ぎになる前にな。」

王立魔法研究所で披露された藤崎とエランの力は、

レナードに“神の雷”とまで言わしめた。

だがこの一件が、王宮の権力争いへとつながっていく――


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