6.不安
誤字脱字怖い
そこにいたのは秘目であった。
それを理解した瞬間、冷静な思考は不可能だった。
「なんで、どうして、秘目、どうしたの」
ただひたすら揺さぶり、名前を呼ぶ。
さっきまで元気そうだった。急な体調の悪化?どうして急に?ケガ?病気?それよりも...まず...まずは...!
「救急車!ハチロク!」
崩れる寸前の精神で、なんとか思考を回す。今の私には何もできない。このまま呼びかけ続けても時間が過ぎるだけだ。
『火災ですか、救急ですか』
繋がった電話越しに落ち着いた声が聞こえる。
「救急です。ゆ、友人が急に、意識を...」
とりあえず現状と住所を伝えたが、詳しいことが何もわからない。電話越しに把握することにも限界があるようだが、すぐに救急隊を派遣してくれるようだ。
「ねぇ、起きてよ、秘目。お願い。ねぇ!」
体を動かすと危険な可能性があるらしいので、ただひたすら呼びかける。
それから数分か、それとも数十分か。何時間にも感じられた時の後、サイレンの音が近づいてくる。
鍵を開け、場所を伝えた。秘目が運ばれて、病院に付き添って、その後はあまり覚えていない。
ただ白黒になった意識で、医者の話を聞いていた。転んだような外傷はなく、不自然な点はどこにもない。突然眠ったかのような状態で。このような症状は見たことがない上に、そもそも病気なのかも現時点では不明。つまりいつ目を覚ますのかもわからない。と
無力感に覆われながらベッドの秘目の手を握る。
「秘目、起きてよ、秘目がいないと、私...」
静かな病室の中、たとえ意味がないとしても、呼び続ける。そうしていないと、正気を保てない。このまま目を覚まさなかったらなんて、考えることもできない。ただ思考を殺して手の中のぬくもりに祈る。私にできることは、それしかないのだから。
ただ病院には面会時間が決まっているらしく、一度家に帰ることになった。今秘目と離れたらもう会えないんじゃないかという不安から半狂乱で残ろうとしたが、病院側としてもどうしようもないとのこと。私にできることはないのも事実で、ひとまずは帰宅することとなった。病院は家のすぐ近くだし、自分で往復できるから少しは安心だ。...安心は嘘だが。
家にたどり着き、玄関を開けた瞬間、言い表せない冷たさを感じた。寝室に入って、ドアを閉めて、横になって。そんないつもの行動が、とても寂しい。隣に空いた空洞を、意識せざるを得ない。前に一人で寝たときのことは、もう思い出せない。それだけ昔のことだし、そんなことがあったかも定かではない。
「秘目...お願い...早く...いつもみたいに...」
突然のことに、体も精神も疲れているようだ。感じたことのないような孤独の中でも、意識は落ちていく。
その寸前まで少女は、虚空を抱きしめながら泣いていた。
実は初期案では全然違う展開だった。




