第9話 魔女は不敵に微笑む、千里眼の如き瞳
食事が終わると、俺はミリネラに手招きされる。
「片手を出してくれ」
「え?」
ちょっと怖い。いや食べさせてくれた恩はあるけどさ、食事中もこの人ずっと顔にローブ付けてんだよ? 警戒するわ!
でも、断れる状況かと聞かれたら、無理である。いざとなったら、あの時みたいにチート能力がきっと発動してくれるだろうけど。
俺が素直に右手を出すと、ミリネラが自らの白く長い人差し指を一本、そこに押し付ける。真剣な顔つきだ。
なにかの呪いか?それでも怖いけど。
「よし、いいぞ」
「一体、何を?」
「契約の印だ。今後、君は私の下僕となり逆らうことができなくなる」
え?まじ?そんなヤバいやつ俺仕掛けられたの?
俺が呆然としていると、ミリネラはクスクスと笑い出した。
「冗談だよ。君は面白いな」
いやあんたほどではない、と言いたい。
「そういえば、君の名前を聞いていなかったな」
「モカから聞いたのでは?」
「いや?」
そうか、確かにモカにも話す時間はなかったからな。
食事中も静かに黙食。行儀良かったし。
さて、なんて名乗ろう。余呉野か、飛鳥か。でも確か、モカは俺のことを「よごの」って呼んでたし。
それでいっか。
「ヨゴノです」
俺がそう言うと、ミリネラは首を捻った。
「アスカじゃないのか? モカはそう言っていたぞ?」
「え?」
モカの能力で姓名がわかるのはいいとして、どうしてそっちを教えたんだろう。
苗字と名前、この世界にもあるのかは知らないけれど、どっちを呼ぶ方が親しみがあるかとかも、スキルでわかるのかな。
いや、そもそも、いつ教えた!?
よろしければ、評価お願いします!