第8話 夢だよな? これが本当に異世界なんてことは......
家の中を案内される。
先頭がミリネラさん、次がモカ、そして最後が俺だ。
この家での序列のようにも思える。
「狭い家だが、くつろいでくれ」
ミリネラはそんなことを言うが、俺的には広めな家だと思う。
いや本人としては本当に狭いと思ってそうだけどさ、一軒家で色々と部屋あるし、俺用の部屋も紹介されたし、それで狭いって言われたら現代日本の不遇を嘆くって。
「って、俺の部屋?」
「何か変なことを私は言ったか?」
「いや、泊まるなんて話は」
「他に当てがあるのか?」
ない。全く無い。けれども、これは夢なんだし、起きれば全部オーケーだろ?
まぁ、ここで固辞しても仕方ないか。
「泊まらせてもらえるなら」
「それがいいですよ」
モカも頷く。
「夕食の支度はもう済んである」
えっ? 早くない? 色々と。
そう思って外を見ると、日は既に傾いていた。
森でモカを助けて、街を歩いて、ここに来て。そもそもで俺がこの世界で目を覚ました時は、既に夕方近くだったのかもしれない。
それにしても、だ。夕食の支度も済んであるとして、俺の分もあるってこと、だよな?
この魔女さんの隙のなさを考えるに。
食卓へ向かうと、そこに俺の食事が。
なかった。
「悪いな、準備はしていなかったが、食うものはある。モカ、よそってやってくれ」
「はい!」
どういうことだろう。ちゃんとしてるように見えて、抜けてる。
いや抜けてはないか。ちゃんとしすぎてると、俺が思い込んでただけで、本当は完璧なんかじゃ無いって、そんな感じかな。
いったいどんな飯が出てくるのかと思ったら、至って普通。
パンに、肉に、スープに、サラダ。
なぜか俺だけ量が多い。
「育ち盛りの男はよく食え」
ぶっきらぼうなお言葉だが、なんか温もりを感じる。
「ありがとうございます」
そう言って俺は、肉にかぶりついた。
「え?」
「どうかしたか?」
「いえ、すごく、美味しいです」
不思議だった。これは夢のはずなのに、肉は肉のジューシーな食感で、肉汁が出てて、味も塩胡椒で、柔らかくて。
夢の中で、こんなことって、あるのかな。
よろしければ、評価お願いします!