第2話 封じられた「竜王の火炎(ドラグニア)」
目を覚ますと、草原に横になっていた。
草花の青い匂い。
頰を撫でる風。
優しい日差し。
「夢、か」
夢だとしても、悪い気分じゃない。
夢の中で寝てしまいそうなレベルだ。
再びゆっくりと瞼が自然に閉じそうになる。
それに俺は抗った。
「危ない危ない。夢の中で寝るって、結構ヤバいんだよな。二回起きなきゃ現実で起きれなくなる」
脳の構造がどうなっているかは知らないが、夢の中で寝るってのは中々に恐ろしい体験だと、俺は知っている。
目をしっかりと開けて、俺は周囲を見てみた。
ここは丘の上の方らしい。
下には中世の西欧のような街が見える。
そして今の場所から更に登っていくと、木々が生い茂る森だ。
俺は立ち上がった。
「でもまぁ、このまま待ってれば自然に起きれるか」
そんなことを思っていると、ドサドサっと、すぐ後ろで音がした。
「なんだ?」
見てみると、そこには前掛けのような防具のようなものと、木の棒がある。
不自然だ。
「異世界もの? ってことだとしたら、これで戦えってことか?」
起きるまでの時間稼ぎ、と思った。
「こんな初期装備だと、スライム一匹倒すのにも苦労しそうだな」
どうせなら、派手で格好良いスキルとか、面倒なこと全部なくせるチートとか、欲しかったとも思った。
「いや、もしかしたら、あるかもしれない」
これは俺の夢の中だ。それなら、念じれば出るかも。
淡い期待を胸に秘め、俺は掌を前方に向ける。
「竜王の火炎!!」
すると、風が語りかけるように吹き抜ける。
何も起こらなかった。
風にバカにされたような気分だ。
「竜王の火炎じゃなかったってことか?」
だけどこれ以上、俺の厨二スキルの片鱗を見せるわけにはいかない。
俺の十八番である「竜王の火炎」が使えないなら、他のスキルも封じられている可能性が高い。
「なんてな」
わかってる。スキルなんて、技なんて、そんなものは夢物語だ。ゲームだけの話だ。
「まぁ木の棒は持っとくけど、防具はダサいからいいか」
今の俺の服装は寝たままの軽装だ。
まぁ、別に恥ずかしい格好ではない。
その時だった。
「助けてえええええぇ!!」
森の方から女の子の声がする。
やれやれ、チュートリアルクエスト、始めますか。
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