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第4章 恋の罠


 アニタは一見すると明るくて元気で行動的だが、実際はガガリンの見立て通りネクラでマイナス思考に走る傾向がある。

 学園に入学後は、天才魔導師と付き合うようになって、これでも大分マシになってきたのだが。

 

「三年経てばハリスコ殿下は正気に戻るんですね?」

 

「ああ。だがさっきも言った通り、魅了魔法の元を完全に断てられたらの場合だ。しかし、どこで魅了魔法をかけられたのかがわからないんじゃ防ぎようがない。

 お前、何か見当がつかないのか?」

 

「王宮や王城じゃないのはたしかです。だから、学園内だと思います。でも、平民の私はあまり側にいられなかったので、わかりません。

 ですので、殿下の婚約者であるドードール公爵家のシシリーナ様に聞いてきます」

 

 超お忙しい超上級魔導師であるマッツイ=ガガリンをお待たせするのは、はっきり言って罪である。

 アニタは猛スピードで執務室を出て行き、五分ほどでシシリーナと共に転移魔法で戻ってきた。もちろん、その魔法を使ったのはシシリーナだった。

 

 普通、超上級魔導師であるマッツイ=ガガリンを目にしたご令嬢は、暫くはポーッと彼に見取れて無言になるものだ。

 なにしろこの超上級魔導師は粗野な感じは拭えないが、見かけだけは飛び抜けて素晴らしい容姿をしていたから。

 

 見上げるほどの長身で、程良い筋肉のついた細マッチョ体型の上に、整い過ぎた顔が乗っている。艶のある黒い髪は手入れもされず、好き勝手な方向に伸びてはいるが、キリッとした黒い瞳は美しく澄んでいて人を引き付ける。そして形の良い鼻のおかげで、少し皮肉っぽい口さえ気にさせない。

 

 しかし、その美貌に見慣れているシシリーナは、すぐにカーテシーをして挨拶の言葉を述べると、さっさと問われたことに対して返答した。

 ハリスコ殿下は男爵令嬢のリーシャと裏庭にある花壇の前でよく会っていたと。

 

「わかった。そこへ行って確認してみる。お前達はそこで待っていろ」

 

 話を聞き終えると同時に、ガガリンはそう言い残して姿を消した。

 そして三十分ほどで突如また戻ってきて、開口一番こう言った。

 

「魅了魔法もどきの残滓を見つけた。公女の言った通り、学園の裏庭にある花壇のポピリスの花の周辺に、まだかすかに残っていた」

 

 それを聞いてアニタとシシリーナは顔を見合わせた。

 

「私の一番好きな花にそんな魅了魔法を仕掛けるなんて、嫌がらせにしてもひどいわ、あの男爵令嬢!」

 

「違いますよ、公女様。ポピリスの花に魅了魔法を掛けたのは、おそらくリーシャ嬢ではなくて第二王子殿下ですよ」

 

 アニタの言葉に公女はポカンと口を開けた。淑女の鑑である彼女にしては珍しい。

 

「どういうこと?」

 

「学園の花壇に今年ポピリスの花が咲いているのは、去年ハリスコ殿下が種を蒔いたからなんです。

 花が咲いたら公女様にプレゼントしたいからって。

 あの花は育てるのが難しくて、お店ではなかなか手に入らないから、ご自分で育てようと思われたんですよ」

 

「なぜ王宮ではなくて学園で育てていたの?」

 

「公女様お忘れですか? あの花の茎の部分にはわずかですが毒が含まれているので、王宮では育てることが禁止されているんですよ。

 でも、植物学上まだよく知られていないポピリスの研究は、学園のためにもなるから育ててもいいと、学園長が許可してくださったのですよ」

 

「あっ! で、でもなぜ殿下が私に? だって私はポピリスの花が好きだなんてお話ししたことはないわ。言えるわけがないじゃない。いくら綺麗でも毒を生む花が好きだなんて」

 

「そこですよ。なぜそれを犯人が知っていたか。実は第二王子殿下が教えたんですよ。

 公女様への贈り物に悩んでいた王太子殿下に。あのとき怪しいとは思ったんですよ。恋のライバルに塩を送るなんて。

 しかもそれが、発芽させるのが非常に困難と呼ばれる希少価値の高い花ですよ。

 植物オタクの王太子殿下がそれを聞いたら、ご自分で育てようとするのは明らかじゃないですか!」

 

「恋のライバルってなに?」

 

「気付いていなかったのですか? 第二王子殿下はずっと前から公女様が好きだったんですよ。あからさまな態度だったじゃないですか」

 

「それは側妃様の命令で近付いてきただけでしょ」

 

「最初はそうだったのかもしれませんが、今じゃ命令というより、ご自分の意思ですね。近頃じゃ、第二王子殿下が側妃様に寄り付かなくなったらしくて、癇癪起こしているそうですよ。

 去年あたりから公女様のガードが以前より厳しくなったでしょ?

 将来息子の後ろ盾にしたいはずの公女様に嫉妬するなんて、本末転倒。側妃様は何考えているんですかね?」

 

「ほんとに何がしたいんでしょうね?

 それにしてもあの方が私を好きだったとは驚きですわ。

 でも、無駄なことをしますね。万が一第二王子殿下が王太子になったら、私は即座に別の方に嫁ぎますのに。

 あの方をお義母様(・・・・)とだけは死んでも呼びたくありませんもの」

 

「王命が出されるかもしれませんよ」

 

「そうなったら、王命でもどうにもならない方の下に嫁ぎますわ」

 

 公女は意味ありげに超上級魔導師であるマッコイ=ガガリンを見た。すると、ガガリンは露骨に嫌な顔をした。

 そして、その時アニタは急に、今まで味わったことのないドロドロした嫌な感情に襲われたのだった。

読んでくださってありがとうございました。

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[一言] あれ公女が無茶苦茶を言う。排除案件?
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