場違いの花(3)
ご観覧ありがとうございます。
ヤンデレはシリアスかコメディかが最近の悩みです。
夏実に掴まれた明は、屋上近くの階段に連れられた。
(最近良くここに来るな…。)
考え事が多いせいで物思いにふける事がよくある。
協力する前にもあったが、ここ最近は頻度が日に日に増していた。
屋上近くの扉に付いた夏実は振り向き様に話し始める。
「ごめんね、無理矢理に連れてきちゃって。
さっき話しづらそうだったから、クラスじゃ言えないことかなと思って。」
「いや、それは大丈夫なんだけど…むしろ平気なのって言うか。」
「?、何が?」
本当にわかっていないのか、それとも強靭な心の持ち主なのか、いずれにしろその強いメンタルに対して尊敬するし羨ましいとさえ思う。
「それで、時間も惜しいし。早速教えてくれる?」
「…あっ、うん。」
打ち明けたい気持ちは変わってないが、さっきのディレの反応が気になっていた。
鈍感な自分でもこの提案に不満げなのは伝わっている。
しかしここまで来て何も言わないのはかなり失礼…
多少勢いにのり今していることを話した。
「実は今…
~~
…って事なんだけど。」
「それでディレが…協力してるってことか。」
(…全部話しちゃったけど、でも早く解決すればディレに迷惑かけずにすむし…)
「なるほど。」
(良かったん…だよね。)
自問自答で納得した明は、改めて夏実の反応をうかがったがいずれも無反応をでいた。
「………」
(どうしたんだろう、ずっと黙ってて…)
最初は不思議がるだけだった彼だが、次第にその額から冷や汗が出始め、危惧していた妄想を思いはじめる。
(も、もしかして…やっぱりひかれたんじゃ。)
控えめに取り繕っても「自分おかしくなるから協力してもらって変わろうとしてる。」なんて…どう考えてもドン引き…
「それで、私に協力出来る事ある?」
……え?
「とりあえずは、クラスでの誤解を解かないとね。あのままじゃなにやっても無駄になりそうだし…。」
「いや、それは確かにだけど…そうじゃなくて、手伝ってくれるの?」
「えっ?まぁそのつもりで聞いたからね。ついでだし…迷惑じゃなければだけどどうかな。」
またもこんな不可解な状態の人に対し、普通なら考えられない協力の申し出に、少しもやのような物を感じる明だったが、やはり、もや以上に感謝の気持ちに満ち溢れていた。
「そんな!迷惑だなんて全然!…ありがとう。」
精一杯の感謝を込めて深々と頭を下げる。
それに対し夏実も肩に手を掛け、優しく応える。
「此方こそ、また宜しくね。明君。」
ディレのアイデアが上手く(?)行ったことも相まって
明は段々と希望を取り戻していた。
このまま順調に行けば…
「…何やってるの。」
「あっ、ディレ!」
順調に行けば…
(まずい、すっかり忘れてた!…どうしよう。)
右往左往して焦る明、何とか取り繕うとするが後ろから夏実が待ったを掛ける。
((…夏実さん?))
((任せて。))
そう通り際に囁き、自信満々にウインク、それを見てディレは一層不機嫌さを表す。
「………ッチ」
(あれ?まだなにも言ってないのに?)
(い、いや…気を取り直して。)
「実はディレ、明君からなんとなくの事情を聞いたんだけど。」
「…ふ~ん。」
「……あ~、それで私なりに解決の提案があって。
大丈夫、絶対ディレ達の助けに「必要ない。」
「え?」
「…夏実はこの件にかかわらない方が良いよ、コイツにかかわってるとろくなことにならないし。」
「……」
我ながら何も言い返せない事と事実に呆れてしまう。
「そんなこと言って、じゃあディレは何で協力してんの?」
「私は…コイツがいつまでもストーカーしてるとアタシにまで迷惑かかんの。前よく近くにいたって理由で、質問されて。」
「じゃあ私も同じ、明君が立ち直らないと私に支障がでるの。だから協力する。」
「ちょ!?そんな適当に!」
「良いから、良いから。私がいた方が絶対上手くいくし、明君だって賛成してるし。」
「良いからって…。」
ギロッと此方を睨むが、白雪さんが庇うように割ってはいり、勢いにのってしゃべり続ける。
「任せて!こう言ったトラブルは私得意なんだから。明君もそれで良いよね?」
「えっ?うん、僕は賛成だけど。」
ディレの方を見るが、やはり納得がいっていない様子。
僕以上に、僕と関わることのリスクを考えての事なのだが、今の自分にそれほど聖人になれる余裕も無い。
「はぁー…わかった。どうせ何を言っても無駄なんでしょ?また。」
「ご明察。」
後ろに手を出し、勝利のVサインで此方にアピールしてくる夏実さんを見て、やっぱり頼りになる人だと改めて尊敬する、最近夏実さんには尊敬しっぱなしだ。
「…それで?ナツミ。」
「ん?」
「さっき提案があるって言ってたけど…どんな事?」
「…あ~、それは……えっと。」
ハッタリだったのだろうか。助けを求めるように此方をチラ見するが、申し訳なく何も考えていない…。
「………」
(あ、ちょっと怒ってる)
「と、とにかく。それはまた!今後もかねて明日話すから、準備しといてね。」
「何の準備よ…、あーったくもう。」
ずいぶんと話し込んでいたのか、気づけば休憩時間が終わろうとしていた。
「ほら、ナツミ行くわよ。…あんたも、遅れるわよ。」
(…えっ!?ディレが僕に気遣いを?)
「後から来るんだから、近づかずに。」
(…ですよね。)
結局肝心な事は決めてなかったけど、夏実さんに協力してもらっても良いんだろうか…やっぱり不安…
「じゃあ後でね、明君。」
いや!きっと上手くいくさ、うん。
「……ッチ」
…やっぱり少し不安。
~
「…どうして?」
「何が?」
明と離れた後。少し気まづいなか教室に向かう二人だったが、ディレが夏実を呼び止めていた。
「ナツミって…親切だけど、あそこまで強引に優しくしないでしょ?それで。」
「そ、そんな事無いって。ただ前みたく、仲良くできたら良いな~って思っただけ。」
「……」
「ホントだって!」
「…わかった、とりあえず"今は"だけど。」
「あらら。もぉ…信じてよ。」
その理由が本当の動機でないことに気づいていたが、今は言及せず。
談笑とはとても言えないものだが、久しぶりに三人で話せたことを二人は少なからず喜んでいた。
これからも魅力的展開で描いて参りますので宜しくお願い致します。