相違協力(3)
ご観覧ありがとうございます。
ヤンデレはシリアスかコメディかが最近の悩みです。
「「次に普通に話すきっかけを見つけること。それがないと始まらないし、そこで模範的行動を取れば回りにもアピールできるでしょ。例えば…優しく笑顔で助けるとか?」」
(って言っても、きっかけなんて…)
合間の休み時間。教室に戻り、早速ディレの提案を実行していこうとしたが、早くも一つ目でつまづいていた。
(そんな都合よく………?)
少し落ち込みつつ下方向を見ていると、白いものが自分の机方向に落ちてくる。
(あれは…消しゴム!?)
まさにベストなタイミングで転がってきた。下心に利用するようで複雑だが…今回はありがたく使わさせてもらおう。
そっと落ちた消しゴムを持ち上げると、落としたであろう人に声をかける。
「あの、この消しゴム落としましたよ。」
「えっ…あぁ…」
ぎこちない反応だが…無視され無いだけ幸いだろう。躊躇している暇はなく、早々に気持ちを切り替え無くては。
「えっと、これ拾ったんだけど…あなたのじゃないかな?」
動揺で吃ってしまった…引かれただろうか。
「…それ、私のじゃないです。」
「えっ…あぁ!そうなんだ、すいません。」
やってしまった、とんでもない早とちり。
普段こういった行動はとっても、間違えたことは無いので余計に注目を浴びる。
(今すぐ別の持ち主を探すべきだろうか、しかしまた間違えたら…)
少なからず、回りから冷ややかな声が聞こえる。
しかし今さら後戻りなどできるはずもなく、半場ヤケクソ気味だった気持ちが今ではフルになっている。
持っていた消しゴムを教卓にのせ、次のアドバイスに移る。
「「掃除してみたら?キレイ好きを悪く思う人はそういないでしょ。」」
(よし、まずは汚いロッカーから)
((…えっ、掃除?何で?)) ((どうして急に?))
((さぁ、元カノがキレイ好きだったとか?))
(…次。)
「「文武両道!どっちも上手くやれば手のひら返し間違いなし!」」
「ふっ…ふっ…」
((な、何故ダンベル?しかも片手間に勉強してる…))
((彼女に振られて可笑しくなったとか?元からだけど)) ((俺知ってる!あのダンベルで元カノに話しかけた奴を撲殺したとか…))
(グフ…つ、次に。))
「「善行よ!もう片っ端から善行を積む事!」」
「真仲さん、その荷物僕が持とうか?」
「えっ!?…いや大丈夫です…全然重くないんで。」
「あっ、そっか。ごめんね…あぁ!白市さん、ズホンが土で汚れてるよ、はたこうか!?」
「ヒッ…い、いや大丈夫。自分でやるから!」
「そ、そうだよね。あっ茜さん…ス、スカートの…裾…
「黒井さん!!先生が呼んでる!」
突如ディレの声が廊下に響く、明らか声に怒りの感情が混じっているのがわかる。
「あ、えっとありがとう…ございます。」まるで
互いにできる限り他人を装い、その場を離れるが。ディレの横を通るさい、((後で屋上))とまるで昔の恐喝の如く去り際に言われ、自然に体が身震いした。
(いや…でもそれより酷い事してる僕って一体…)
…考えるのはよそう。
~~~
「え~と…ディレ?」
「……」
無表情で此方を見つめている、これで怒っているのは確実…。
「ごめん、その…色々やったんだけど上手く行かなくて。」
「…上手く行かなくて、じゃないでしょ!アンタやっぱ馬鹿?」
「やり方が不気味すぎんのよ、新しいストーカー先を探してるって感じ。」
「え!?そんなこと…。」
(…まぁどっちでも良いけど。)
「はぁー、本当に馬鹿なんだから…。」(馬鹿…)
「…ま、この手の事は無理ってことがわかったし。次は…」
あっけらかんとしているディレに対し、明は非常に焦っていた。
(失敗した…失敗した。
…これ以上上手くできなかったら、またディレにも…)
心底孤独に怯え、その再来を危惧していた。
そんな明に対しディレ
「…こうなったら実力行使しかないわね。」
「?実力行使って。」
「これから説明する。言っとくけど拒否権ないからね。」
一体どんな作戦なのかと、不安だが拒むことは出来ないことを明は重々承知している。
「…わかった。ディレ、教えて欲しい。」
~~~
それは昼休みにおきた。
「~あれ?」
「どしたん?」
「…無い、無いんだけど!」
(……)
「次の授業の…、あれ~?」
「良いじゃん別に、休めるし。」
「案外楽しみにしてたの、どこ~?」
(…ごめんなさい。)
数分前
「…盗むのよ。」
「えっ?」
「誰かの物を少し隠して、困ってる時にアンタが見つけるの。」
「それって、泥棒…流石にやりすぎなんじゃ!…また、さっきの方法を試してみれば。」
「ひとぎき悪いわね。別にずっと隠すわけじゃないし、ただ借りるだけ。さっき拒否権無いって言ったでしょ。」
「でも…。」
「私が取って置いておくから。…早く回りとの関係を戻せば…あの子とも改善されんじゃない?」
(……)
~~
(ディレから合図がきたら、前の教卓から取り出して返す。…明かに悪いことだけど、これ以上長引かせたら…。)
今度こそ全員に見限られるかもしれない。
「ん?どしたの?」
「なんか無くしたんだって~、それでさがしてんだけど。」
「何無くしたの?」
(注目されてきた、今なら…。)
ディレに目を向けると、猛烈に瞬きで合図を送ってくる。
明はおもむろに教卓から物を取り出し、持ち主に言葉をかける。
シュル
「あの、落とし物ってこ…。」
(シュル?)
その音と触った感じ、これまでの流れでとてつもなく嫌な予感がしたが、そう思った頃には遅すぎた。
「あっ!…それ私の、た…操着。」
「あっ…」
今の言葉で見向きもしなかった者まで此方に注目し、明を凝視する。
端から見れば、明がまた問題を起こしているのは明白。そうとしか見えないのである。
「…黒井さん、随分すんなり見つかったね…。私…何無くしたか言って無いのに。」
「い、嫌…違くて…。僕はたまたま…、その…何か役にたちたくて。」
「?」
実際にたくらんだのだから、何もかも言い訳にしか聞こえない。それは言った本人が一番わかっている。
回りの目が槍のように突き刺さる、後戻りはできず舌も回らない状況。
最早その場から去ることしか考えられなかった。
「あの…これ、ここに。…ごめん。」
そう言うと持っていた服を教卓にのせ、静かに引戸から廊下に出る。最後の謝罪は持ち物を利用したことと、嫌な思いをさせたことに対してだが、それが届く訳もなく。
(明…)
静寂に包まれていた教室で立ち止まっているディレ。次第に雑談や彼への悪態が振り撒くなか、明の元へ小走りで向かう。
~
「明!…」
屋上前、階段に差し掛かった辺りでようやく見つける。
明は少し塞ぎ混み、その場に座っていた。
流石に反省したのか、ディレは申し訳なさそうな態度で明に向かう。
「その…ちょっとやりすぎちゃっかも…」
「本当にごめん!…ただ、あれなら直ぐ気づくし、そこそこ必要な物だと思って、それで「違うんだ。」
「えっ?」
「僕が…ディレに丸投げして、もっと無くした物を返すタイミングとか。何も考えずにまた失敗しちゃって…僕の方こそごめん。」
「明…」
「これからはディレに押し付けたりしないから…その、これからも協力してくれないかな。」
「…まったく、しょうがないわね。」
そう言い、ディレは座っている明に対し、前からそっと抱き付いた。そして彼の背中を優しく撫でながらディレは思う。
本当にアンタって、暴走する時以外は優しくて…強くて、かっこよくて…
((本当に馬鹿だね。))
「…えぇっと、ディレ何か言った?」
「ん?…別に。」
顔を赤く染める明を見つめ、上手くことが進んだのを心から喜ぶディレであった。
これからも魅力的展開で描いて参りますので宜しくお願い致します。