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CherryBlossom memory

作者: 十六夜 メア

頑張って作ったァ〜

 今年も春が訪れた。沢山の別れと出会い、そして色鮮やかな桜が満開を迎えている今、俺は1人、そこに立っていた。そこは、近くの桜並木が綺麗に見える所で桜の花びらでできた小さな竜巻が一瞬、並木を横切った。

 「どうだ? ここなら桜、見放題だろ?」

 と1人俺は問いかけた。




――2022年 4月―― 

「よぉ〜来てやったぞ」

 真夏の暑い日差しの中、俺こと、如月奏は幼馴染の柊舞冬の家を訪ねていた。舞冬の家には学校で顔を出せるきかいが少ないため、空いた日にこうやって顔を出している。

 「誰も来てとは言ってない」

 「おっと、まずは安定の否定」

 「・・・・・・」

 「無言の圧力キッツ!笑えねぇ」

 とまぁ、舞冬は何故か俺へのリアクションが小さい。なんか相手されてなくね?って感じ。

 「と、それはさておき、お前の期末試験の結果1位だ、おめでとう」

 「そう」

 「反応薄っ!」

 「そう」

 「俺とか比べ物にならね。あ、そうそうこの間の始業式、お前途中で帰ったじゃん? あの後校長のズラ落ちたんだぜ。全校生徒爆笑。腹よじれるかと思った」

 「そう」

 とまぁこんな感じで会話になってない会話が続き、気づけば夕方だ。



――2022年 5月――

 今日は体育祭が行われた。結論を言うと俺たちのクラスが優勝したのだがその日も舞冬は学校に来ていなかった。体育祭が終わり、とある物を持ち舞冬の家に向かった。

 「おいコラ来てやったぞ」

 「・・・・・・」

 いつも通りの舞冬だと何故か少し安心する。

 「た、体育祭終わった」

 「今日だったんだ・・・」

 「お前出席し無さすぎだろ。引きこもり乙ー」

 「・・・・・・」

 「ちょっ否定しろよ、それじゃ俺が悪いみたいに・・・いや実際俺が悪いんだけどねぇ〜」

 「・・・・・・」

 「見てみろこれ!」

 いきなりそう言って俺はある物を取り出した。

 「何それ・・・・・・」

 「優勝トロフィー!ほら、お前もA組だろ」

 「・・・・・・なんで持ってるの?」

 「そりゃ、あれだえっと、スリ!俺のテクやべぇだろ」

 「・・・・・・」

 「おいちょっ!睨むなって、ちゃんと許可貰ってきてるよ」

 「なんで?」

 「そりゃ、お前もクラスメイトだからな」

 「そう・・・・・・」

 「少しは感動してくれよ」



――2022年 7月――

 「今日は窓から登場!」

 「・・・・・・」

 「おっとー、無言の批判来たぁ。ベランダ乗り越える時死ぬかと思ったぁー。マジ恐ぇ〜」

 「なんの用?」

 「今日は何月何日?」

 「7月7日」

 「正解!七夕ですよ七夕!織姫と彦星見ようぜ!」

 「それで?」

 「願い事に決まってるじゃないか。ペンと短冊持ってきた」

 「・・・・・・今日は曇り」キュッキュッ

 「痛いとこついてきたなおい、その通り、夜は降水確率80%、よって笹は室内に移動させる」

 「はい」

 「受け取りましたっと。お前、桜が見たいって?ブッ、季節考えろよ」

 「季節の問題じゃ・・・・・・ないわ」

 「・・・・・・」

 「表情暗い、前髪長い、いや髪関係ねぇか」

 「・・・・・・」

 


――2022年10月――

 「おい、もうすぐ修学旅行だぞ?」

 「・・・・・・そう」

 「反応しろよ。これしおり、ちゃんと準備しろよ?」

 「いらない」

 「なんでだよ」

 「・・・・・・私には関係ない・・・・・・」

 「来いよ、京都だぞ?大仏でけぇー舞妓はん見てぇ」

 「知らない」

 「まぁ、気長に考えろや。気持ち変わったらすぐ連絡よこせよ?」

 「・・・・・・」

 「着いたぁ。京都なう!俺in京都ぉ〜」

 「うるさい」

 「へいガール、そのテンションの低さはなんだよ!」

 「・・・・・・」

 「寺ばっかじゃん!おい、ここから落ちたら死ぬのか?」

 「清水の舞台から落ちても・・・・・・致死率は低い」

 「マジかよ。やってみようかな」

 「・・・・・・危ない」

 「分かってる、やるわけないだろ。そこまでアホじゃないわ!」

 「・・・・・・そう」

 「一気に関心なくしてるし、やっぱ飛び降りようかな?」

 「ご自由に」

 「ちょっ」


 「銀閣寺、俺ここの写真スポットしってる」

 「・・・・・・そう」

 「そこの障子をちょっと閉めて、こっちも閉めて、間に入ったら松が写る」

 「誰が・・・・・・カメラ使う・・・・・・の?」

 「カメラマンさん、こっちこっち」

 「私も入るの?」

 「あたりめーだろ。ほらピースピース!」

 「・・・・・・」

 「ちょ、ダブルピースとか。実はお前楽しんでるだろ」

 「・・・・・・」ギロッ

 「おい、睨むなって、良いじゃねぇか。あぁホント」

 


 「ちょっ!この写真、お前の無表情ダブルピース」

 「何それ?」

 「修学旅行の写真だよ。あ、これお前の分な。先生が買ってくれた」

 「・・・・・・そう」

 「やべぇな、何回見ても笑えるぞこれ。お前そこはなぁ、アヘ顔だろ」

 「あへ・・・・・・顔?」

 「おっと、久々のホワイト幼馴染さんですか!グッとくるねぇ」

 「・・・・・・」ゴスッ

 「イテテ、べつに、普段ブラックとか言ってるわけじゃ・・・・・・」

 「・・・・・・」ゴスッゴスッ

 「痛い、お前ベットの上からだから肩とか胸にしかキック当たんねぇんだけど!」

 



――2023年 8月――

 「お前覚えてるか?」

 「夏祭り」

 「覚えてる、、だと」

 「・・・・・・」バスッ

 「痛い痛い、悪いって」

 「モチロン、覚えてる。小さい頃、一緒に」

 

 「見ろ、人間がゴミのようだ!1回言ってみたかった」

 「こ、こと」

 「なんて?なんて言ってんの?」

 「言葉を慎みたまえ」

 「えっ?」

 「君は・・・・・・」

 「言わせねぇよ!」

 「ムグッ・・・・・・」

 「綿菓子最後に食べたのいつだ?」

 「好き・・・・・・だった?」

 「まぁな」

 「金魚すくい、やる?」

 「お前、金魚ハンターと呼ばれた俺をなめんなよ」

 「何匹とってたっけ?」

 「35匹」

 「凄い」

 「やってやるよ!」

 「ちょっおま、56とか俺の立場ナッシングじゃん」

 「・・・・・・」フフン

 「得意げですね。気持ちよさげに金魚虐待しやがってよぉ」

 「全部・・・・・・戻した・・・・・・」

 「たりめーだ。俺の35とお前の56で合わせて91とか飼えねぇわ」

 「でも・・・・・・楽しかった・・・・・・」

 「やけに素直ですね、不気味だわ」

 「・・・・・・」

 「だから睨むなって、こぇぇ」


 「射的とか俺初なんだが、ガチビギナーなんだが」

 「そう・・・・・・」

 「何か欲しいのあるか?」

 「あれ」

 「ん?ブッ!く、熊の、ぬいぐるみだと!」

 「!?」 

 「おまっ、イメージが、あんなファンキーなのとかオモロ!」

 「・・・・・・い、いや、ちょっと・・・・・・ちがっ」

 「あれ?俺が昔やったのにそっくりだ・・・・・・」

 「っっ!」

 「しゃーねーな、また取ってやるよ」タンッ

 「ちょい!お前じゃねぇよヨーヨー。いらねぇ」

 「・・・・・・小さいのによく当てた」

 「まぐれだけどな。次こそは当ててやる、やべ、失敗フラグたったわ」タンッ

 「何ぞ、何ぞこれ、AVだわ。地域の祭りの景品にAVとか、しかも痴漢ものやんけ。えっ?」

 「・・・・・・馬鹿っ!」スタスタ

 「ちょっ待っ、おっちゃんこれ返すわ!てかいらんもの乗せんな」

 「後2発、ってか舞冬がだんだんと遠ざかっていく」タンッタンッ

 「さすが俺、2発で仕留めるていくぅ!いや、系何発だ?俺しょぼ」

 「そして舞冬どこ?そろそろ花火や、俺ピンチ!舞冬どこー」

 「マジでどこ?迷子とかか?」

 「いた!みっけ!」

 「・・・・・・」

 「ほれくまさんのやつ」

 「・・・・・・取ったの?」

 「おう、俺なめんな、誰だと思ってやがる」

 「・・・・・・そう」

 「安心しろ!DVDは返してきたからな!興味無いし」フンッ

 「・・・・・・そう」

 「花火、来たか」

 「・・・・・・」

 「うは、綺麗すぎ!テンション上がってきた」

 「・・・・・・そう」

 「お前と来て良かったわ」

 「っ!・・・・・・そう」

 「今後とも、よろしくな」

 「・・・・・・考えとく」

 「俺、将来花火職人になる!」

 「そう」

 「あれ?意外と反応薄い。ショック!気にかけられてない

 「・・・・・・自惚れ屋さん」

 「グホッ」


――2023年 10月――

 「文化祭終わったァー!お前準備も参加も何もしてねぇ」

 「・・・・・・そう」

 「興味なさげだし!お前人生かなり損したぞ」

 「・・・・・・」

 「演劇、俺らのクラス三冠だぜ?最優秀作品賞、最優秀主演賞、最優秀演出賞」

 「そう」

 「ほれみろ、賞状ぞ!くすねて、間違えた。借りてきた」

 「・・・・・・そう」

 「あ、そうだこれうちのクラスで作ったマフィン!なんと俺調理担当」

 「・・・・・・前、クッキー焼いてくれた」

 「恥ずっ!あん時はシナモン入れすぎてたっけな。なんであそこまでシナモンに固執してたのかわかんねぇ〜」

 「・・・・・・」モグモグ

 「美味いか?」

 「・・・・・・そこそこ」

 「手厳しいなおい!たまには誉めてくれよ」

 

 「おいおい」

 「・・・・・・なに」

 「スマホ買った、iPhone、くそ、風呂場で使えねぇ。充電減りヤバっ!」

 


 「見ろよこれiPhone14俺の10より高性能!」

 「・・・・・・2台目?」

 「いや、えっとコレコレ」

 「・・・・・・何」

 「お前スマホ持ってないだろ?スマホ持ってないとかJK失格だろ?」

 「・・・・・・そうね」

 「やるよ」

 「・・・・・・え」

 「ほら、これお前のやつな」

 「・・・・・・何、で?」

 「ちょっ!お前今日誕生日だろ」

 「そう、なの?」

 「おうよ、受け取れ」

 「・・・・・・」

 「てかお前ついてないな。今日お前の両親出張」

 「勘違いすんなよ。これお前の両親と俺で金出したから3人からの誕プレな」

 「・・・・・・そう」

 「そうだアド交換すっぞ。どうせお前俺以外と連絡取らねぇだろ」

 「・・・・・・そうね」

 「ボッチ乙」

 「・・・・・・」

 


――2023年 12月――

 「クーリスマスが今年もやってくる」

 「・・・・・・そろそろね」

 「サンタさんいたぜ?さっきそこのコンビニでケーキ売ってた」

 「・・・・・・そう」

 「ケンタ買う、お前は?」

 「・・・・・・七面鳥」

 「ブッ!なんという」

 

 「・・・・・・もしもし」

 「やっとでたか」

 「・・・・・・何」

 「何って、クリスマスだよ」

 「・・・・・・そうね」

 「現在時刻午前0時、ちょ!お前ん家サンタさん来てる」

 「・・・・・・?」

 「表!お前ん家の空き部屋から表見てみ」

 「・・・・・・」ガサゴンッ

 「早く!」

 「・・・・・・待って」タッタッタッ

 「寒いっす。立ってるだけで、ツラい」

 「・・・・・・ッ!」ガラッ

 「あーゴホンゴホン、メリークリスマスお嬢様」

 「・・・・・・」

 「雪、降ってる」⟵サンタコス

 「な、んで?」

 「うちのクラスにやばいくらいの金持ちいて協力してもらってる」

 「・・・・・・」

 「上見ろ、ヘリ。あいつの本気、侮ってた。やべぇ」

 「・・・・・・そうじゃ、なくて」

 「え?」

 「どうして、どうしてここまでしてくれるの?」ポロポロ

 「・・・・・・」

 「てか、お互い顔見えてんのに電話とかウケるな」

 「・・・・・・」ポロポロ

 「あ、もう雪いいぞ。あんがとさん」

 「・・・・・・なんで、なんで・・・・・・」

 「まぁ待てや、あわっ!玄関の上立ってやったw」

 「・・・・・・」

 「どうした?口をあんぐり空けちまって」

 「・・・・・・馬鹿?」

 「やっと口を開いたと思ったらそれですか。サンタさんに失礼な!」

 「・・・・・・」

 「はい、プレゼント」

 「これ、」

 「ジャーン!オルゴール!」

 「・・・・・・」

 「曲はバッヘルベルのカノン」

 「・・・・・・に・・・・・・から」

 「え?なんて?」

 「大切に、する、から」

 「当たり前だろ。なんせ俺からのプレゼントなんだからな」

 


 ――2024年 元旦――

 「気付いたら年明けですか」

 「・・・・・・そうね」

 「こたつあったけぇ〜」

 「・・・・・・ねぇ」

 「どした?」

 「・・・・・・なんでもない」

 「おっと最近そういうの多くないか?」

――1月――

 「新年、やつにドッキリだぁ!」

 「このボタンを押すとやつの部屋のカーテンと窓が空く、そして窓から中へ」

 「レッツゴー!」ポチッウィーン

 「さぁ、侵入・・・・・・」

 「・・・・・・」ドサッ

 「は?」

 


 「ここは・・・・・・」

 「ん?あぁ」

 「・・・・・・起こしちゃった?」

 「あぁぁぁ!良かったわマジで、部屋行ったらお前が血吐いて倒れてるとか心臓に悪ぃわ」

 「ごめん、なさい」

 「なんで謝るんだよ」

 「・・・・・・もう、いいわ」

 「・・・・・・無理して私に構わなくていい」

 「え?何言ってんだ?」

 「・・・・・・」



――2024年 2月――

 「ちわっす。メリーバレンタイン」

 「・・・・・・」

 「おっふ1ヶ月近く無視、これは来るものがあるな・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「ほらよ、俺の力作ブッシュ・ド・ノエル気が向いたらくえや。お返し無理にしなくていいぞ」

 「・・・・・・」

 「じゃあ、俺帰るわ、テストの勉強してねぇ〜」

 「・・・・・・」

 


 ――テストの結果の日になった。

「な、なんで」

他人A「さっすが奏だなーテスト1位なんてよ」

他人B「てか、奏くんT大医学部志望でしょ〜」

A「マジかよやべぇなおい」

 「い、いや大したことじゃねぇよ」

 マジでどうしたんだよ舞冬、お前なら1位のはずなのに・・・・・・もしや、俺がいろいろ連れ回したから。修学旅行とか夏祭りとか俺は良かれと思ってやってたがそれが舞冬に負担をかけすぎて倒れたんじゃ

 「俺の、俺のせいだ」

 俺は職員室に向かった

 「先生!舞冬に何かあったんですか?」

 「あぁ、それがなあいつテスト中に倒れたぞ」

 「まぁ本人も薄々気づいてたらしいがな、お、おい奏!どこ行くんだ!」

 「すいません先生!今日、早退します!」

 「あーもう!あいつはいつもの病院じゃなくて救急医療センターにいる!」

 「え?」

 「病室までは分からん!自分で探せ!」

 「・・・・・・ありがとうございます!」ダッ

 

 「舞冬!あ、おじさん、おばさん」

 「・・・・・・そうですか今晩が山なんですね」

 「はい、着替えを取りに1度家に戻ります」

 「もし、舞冬に何かあったらすぐ連絡ください」

 バカヤロー、桜見るんだろ

 つーかやめてくれよまだ、俺伝えられてない言葉があるのに

 ギャル「ギャハハまじウケるー」

 俺と同い年くらいか、もう、そんな時間なのか。

 ギャル「それマジー?ヤバー」

 あれ?俺なんか場違いな気が、、、

 なんでこいつらは元気なのに、あいつは・・・・・・

 不平等じゃないのかよ、おかしいだろ

 どうせこいつらドラッグキメて、男なら誰にでもまたがって腰振ってるんだろ、なんでこいつらは大声出してはしゃいで外を出歩いてるんだよ・・・・・・

 舞冬は、あいつは何であんな目に会わなくちゃいけないんだ。何万分の1の奇病だか知らないけどなんで舞冬なんだよ、あいつじゃなくてもよかったじゃないか。なんで、なんで

 ギャル「てかこの写真ヤバくな〜い?」

 ギャル「ヤバっ、ウチチョー写り悪〜」

 「・・・・・・るせぇよ」

 ギャル「ぎゃはは、こっちだとあんた変なとこ見てる〜」

 「うるっせぇんだよあんたら! 黙ってろ!」ガタッ!!

 ギャル「ごめんなさいっ」

 「口閉じてろ! 二度と喋んな!」

 ギャル「何あの人、怖〜」

 ギャル「雰囲気ヤバ、ジャンキーっぽくない?」

 クソっクソっ!畜生!

 


 「すいません、戻りました。おじさんとおばさんも仮眠とっていいですよ。俺、見とくんで」

 「そうですか・・・・・・分かりました大丈夫です」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・なぁ、知ってるか舞冬、俺、志望校判定Bだったんだぜ。T大医学部。スゲーだろ?」

 「つっても、お前がベストコンディションで受けてたらもっといい成績だったんだろうな」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・やべ、話のネタが思いつかねぇ。頼む、頼むから目えわ覚ましてくれよ」

 「なぁ、本当に頼むよ・・・・・・」

 「好きだってまだ伝えられてないんだよ・・・・・・」

 ツーツー・・・・・・ツーツー・・・・・・

 「ッッッ!!ナースコール!おい!おじさん、おばさん起きて!舞冬が!」

 「頼む、頼む、俺を置いていくな!死なないでくれよ・・・・・・」

 医師「脈拍が、電気ショックを!っ!血圧が処置の仕様が・・・・・・」

 「おい、勝手に死ぬなよ!散々俺の事無視して、チョコの感想も言わねぇで死ぬんじゃねぇよ!」

 医師「・・・・・・我々も出来ることはやりました、後はもう、見守ることしか・・・・・・」

 ツ―――――――――――――――――――――

 


 「・・・・・・遺体安置室か」

 「・・・・・・」バサッ

 「・・・・・・死んでるんだな、いつも通りなのに」

 「あぁ、顔色ちょっと悪いか・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・俺な、いつもお前のことばっかり考えてたんだ」

 「お前の病気のことは前から知ってたはずなのに考えないようにしてたんだろうな」

 「幼稚園の頃からずっと一緒だったよな・・・・・・」

 「お前がいつか元気になれるように、病気のことなんか気にしなくていいようにって」

 「医者になろうとして、必死こいて勉強して」

 「何をしようにも俺、理由にお前がいたんだ」

 「これからは・・・・・・どうなるんだろうな」

 「お前が好きなんだ」

 「10数年間ずっと」

 「晴れでも、雨でも」

 「暑い日も、寒い日も」

 「外を走ってても、ベットで丸まってても」

 「いつもいつも、ずっとずっと・・・・・・お前のことを考えてたんだ」

 「ゔ、ぁぁゔ・・・・・・」ポロポロ

 


 「・・・・・・」

 「久々の舞冬の部屋だ・・・・・・」

 「でも、あいつはいない、ベットは空っぽだ」

 いつもいたのに・・・・・・

 いや、いただけだったんだ。話してただけだ。手を握りもせず、ただ自分だけを偽って。

 ずっと笑っていれば、舞冬も元気になる気がした。笑顔を分け与えられる気がした。

 「自己満足・・・・・・だったのかもな」

 今更何言ってんだか・・・・・・

 「・・・・・・」

 「机の上に、何か置いてある」

 『奏へ』

 「・・・・・・」バサッ

 『改めて手紙を書くと緊張します。ほとんど毎日目を合わせているというのに。変なものですね』

 俺は声が出なかった、舞冬が残したそれをひたすら読み続けることしか出来なかった。

 『知ってました。あなたが体育祭で大活躍だったこと。

 

 騎馬戦では大将を勤め、クラス対抗リレーでは、アンカーで一気に3人を抜いてゴールしたって。

 写真を見せてもらいました。すごく格好よかったです。私もこの目で見たかったです。

 知ってました。あなたがずっとテスト全教科2位だったって。お母さんから聞きました。

 あなたが頑張ってるのも知っていました。医学部に進もうとしてるのも。私の病気を治す、と七夕の短冊に書いているの、お母さんから聞きました。本当に嬉しくて涙が出ました。窓から向かい側に姿を見るだけで元気が貰えました。

 

 知ってました。本当は修学旅行のしおりなんか無かったって。あなたが修学旅行のしおりを私のために手作りしてくれたって。行けるはずないのに無神経だと思ったけど。あなたが私の両親に頭を下げて許可を取り付けてくれたそうですね。あなたは、お母さんに口止めをお願いしたようですが、お母さんが話してくれました。お母さんは責めないで下さい。きっと、その事を知らなかったら私はすごく後悔していたと思います。修学旅行、本当に楽しかったです。あなたがいてくれて本当に楽しかったです。色んな所を回りましたね。写真ありがとうございました。私の写っている写真、先生じゃなくてあなたが買ってくれたのでしょう?

 感謝しています。あなたは私の表情を笑いましたが今手元にある写真の中でもあなたの変顔は酷いですよ。


 夏祭りに連れて行ってくれてありがとうございました。

金魚すくい、正直言うと、集中しているあなたの顔に見とれていました。

 射的の時は・・・・・・まぁ、あなたも男の子なので仕方ないですよね。けど、熊さんのぬいぐるみは本当に嬉しかったです。ずっと大切にしたかったです。そして花火を見る時、あなたが隣にいてくれて本当に良かったです。あの夏のことは忘れられません。

 

 テストで頑張っているのも私のためだと知っていました。医者になるために勉強しているのも、あなたならきっと、いえ、夢が叶うと思います。ただ、私を治療するために医者になるのは・・・・・・やめてください。私はもう、ダメなんです。


 文化祭、お疲れ様です。気づきましたか?実は私、行ってたんです。と言っても私服でしたし学校にはほとんど行ってないから誰も分かりませんでした。

 劇も見ました。あなたが主演と聞いて楽しみでした。とても上手い演技だったと思います。舞台の上で主人公を務めるあなたはカッコよかったです。観客投票でちゃんとあなたに票を入れました。私が入れなくてもあなたの演技は大差で1位だったと思いますが。誕生日にくれた携帯電話は宝物になりました。両親も仕事の休憩に電話してくれたり、メールしてくれたり、コミュニケーションが上手く行くようになったと思います。このプレゼントはあなたが発案した物だそうですね。あなたはいつも私のために色んなことをしてくれます。その度に私は、あなたへの借りが増えていってしまいます。もう返せそうにありません。


 クリスマスプレゼント、ちょっとキザでしたね。雪を降らせるなんてどこの少女漫画ですか。

 だけど、1面の銀世界はとても綺麗でした。と言っても私が1番見とれていたのはあなたですが。オルゴールは毎日聞いています。あの音楽を聞いているとなんだか心が楽になります。

 一緒に過ごした年越しは最後の楽しい思い出です。どうしても止まらなくて、甘えてしまいます。

 ずっとあのままでいたかった。ずっとあなたと一緒にいたい。ずっと抱き締めていたかった。腕を離したく無かった。あなたを離すと寒かった。あなたの腕を抱き締めている間は温かかった。

 まだ、離れたくありません。ずっと離れたくなんてない。


 倒れているのに気づいた時、もう限界だと思いました。ずっとあなたに話して貰って。励まして貰って。それでも、この体はどんどん弱っていき、あなたに見つからないように咳き込むのも。血を吐くのも負担ではありません。あなたの笑顔を見るためならこのくらいの我慢は安いものでした。でももう限界なんです。だからあんな風に突き放してしまって本当にごめんなさい。


 バレンタインのチョコ美味しかったです。すごく手が込んでて。私には作れそうにありません。あまりにも綺麗で少しずつこわけて食べてました。食べる度に泣けてきて、なんでお礼を言えなかったんだろうと後悔しています。

 私が作ったのはガトーショコラです。家の冷蔵庫にまだ残っていると思います。よかったら、なんて虫のいいことは言えませんね。

 あなたがこの手紙を読む時、私はもう、この世にいないでしょう。最後に、ずっとずっと、あなたに言いたかったことがあります。最後にまとめて書きたいと思います。

 ごめんなさい、ありがとうって言えなくてごめんなさい。

 一生かけても返せない恩を私は受けたと思います。

 ずっと言いたかったけど言えませんでした。素直になれませんでした。ずっと無口で気分を悪くさせました。

 本当に、あなたにずっと伝えたかった』


 『大好きです、あなたのことが大好きです。ずっとずっと大好きでした。これからも大好きです。ありがとう、今までありがとう。愛しています。死んでも愛しています。絶対にあなたから離れません。あなたがいつか、別の人を愛しても忘れないで欲しいです。ずっとあなただけを見ていました。これからもずっと見ています。どこにいても見守っています。夢を追いかけるあなたを、あなただけを応援しています。いつまでも愛しています。大好きです。愛しています。

                   さようなら』

 俺は一晩中泣いた。それから1週間は動けなかった。





――4月――

 とある桜並木の近くに1つの小さなお墓が出来た。人通りは少なく、墓の主にだけ姿を見せるようにその桜たちは咲いていた。

 「良かったじゃねぇか。これで桜、見放題だろ?」

 俺は1人、その墓の主に問いかけた。


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