01
「こんにちはー」
トントンとお隣さんの家のドアを叩く。しばらくすると、シューベルトの父が出迎えてくれた。
「こんにちはヴィルマちゃん、シューベルトに用かな?」
「はい! いますかー?」
「うーん、今はたぶん家の裏で素振りをしてるかな?」
「すぶり?」
「うん、外から回ったら見えると思うから見に行ってみる?」
「はい!」
何か新しい遊びだろうか。おじさんと一緒に家をぐるりと周り裏へ向かう。おじさんが「シー」というので、こっそりそちらをのぞき込む。
そこには木の棒を真剣に振る彼の姿があった。
(あっ――)
ちょっと前に会った時は、オドオドしていて頼りにならなそうな性格だった彼。信託の日からまるで人が変わったかのように強気になった。そんな真剣な表情の彼に、少しだけドキリとする。
それから私も口だけではなく、行動で彼と並べるように努力をする。
彼が村を一周走るなら、私は二週走った。彼が素振りを100回するなら、私は素振りを200回やった。
あ、シューベルトだ!
「ちょっと!」
「……なんだよ」
えーっと……。
シューベルトを見かけて嬉しくなり声をかけてしまったが、話すことが思い浮かばない。
うーん、うーん。あ、そうだ!
「シューベルト、勝負よ!」
「やだよ」
「なんでよ!」
なによ! 貴方が私の横に立てるか見てあげるんだから戦いなさいよ!
「……15歳だ」
「?」
「成人になる15歳にお前を倒す。それまで待ってろ」
彼の目はとても真剣で、何かを決意した表情をしていた。きっとそれは、私を倒して何か大事なことを伝えるために必要なのだろう。
まさか、私を倒して改めて告白を――!?
「……分かった。15歳に、もう1度戦ってあげる」
でも、残念。私だってもっともっと強くなって貴方を返り討ちにしちゃうの。
「でもそこでも私が勝つわ、そして教えてあげる、私があなたを守ってあげれるって」
そう言ってあげる。
「ふん! 俺はお前を倒して、前に進む」
「私の横は簡単にはとらせないっ」
「横……?」
私の横に並ぶことなんて、まださせない。私が守ってあげるんだから!