86話 虎口を逃れて竜穴に入る
今起きていること
・万葉木夕奈VSロニイ・ファーベント
・クルルvsギマリ・ガンガン
・キョウヤ&ポイロvsアンニ・トートンルー
・アーサー=アーツ・ホーガンvsカニマニ・アルル&サーガ・ラントゥトーン
・冒険者たちvsその他大勢の魔族、魔獣&メモリープラット
・ラリゴ先生vs名も無き魔族
・バルトス・シリカ&カナリアル・ボンダ&鍛丸匡一郎vs謎の女
目まぐるしいほどの情報が夕奈の脳に伝わる。だが彼女は、さらにもう一歩、地雷原を歩くようにこの力を使った。
(天眼……!)
空からの情報が私の脳に伝わる。
「クリスタルアバター」
なんの魔法かわからないけど、ロニイさんは半透明の鉱石で出来た自分の人形を作った。
偶像なら、容赦なくぶっ放せる。
私は剣を強く握り、こう念じた。
(キメ技)
「第三の技! 一撃、粉砕、吹き飛びなされ! 一撃、粉砕、吹き飛びなされ!」
私は鉱石のロニイさんに向かって振りかぶった。
「クラッシュブラスト」
その余波は地を砕く。
「コンスルトローアー」
ロニイは地面を操った。
舗装された道で壁を作り、作った自分を守るように夕奈の攻撃を受け止める。だが、彼は見誤ってしまった。
一撃、粉砕、吹き飛ばす。クラッシュブラストは粉砕を担当している。
それを冠するように、当然のごとく物体を粉砕した。
「吹き飛びなされ」
私はそう呟きながら、鉱石版ロニイさんを見つめる。
「……オクヌマス」
その言葉を聞いた瞬間、私の体は硬直した。
(知ってる、この呪文)
エリオスに初めて遭った時、使われた強力な魔法。私の身体に狙いをつけるように的が出現する。
それだけは回避しなければならない。
(でも問題ない。対処法は知っている)
私は剣になろうと思った。だがそれと同時に、赤い線のようなものが私に近づいているのが見えた。
(これは、魔力の軌道?)
私は体を捻り、それを避けた。
「……!?」
目を見開くロニイさん。私はそんな彼を見て、確信した。
(……すごい。これが私の魔法の力……!)
「カチカチドン!」
刹那、私の視界に恐るべき量の魔力の塊が入る。
「んな……!?」
「この量なら、避けられないでしょう」
私は飛んでくる氷の軌道を読みそれらを避けるが、何とか刺さらないようにはできたものの、何本かは私の肉を切り裂いた。
「……!」
魔力と攻撃。この二つだけでは無理そうだ。
なので、私はさらなるステップに踏み込んだ。
「慧眼『曙』」
本来見えないはずの「力」が可視化される。
魔力と攻撃の二つを合わせ、強化した形。相手の行動すべてがデータ化され、夕奈の脳に伝わった。
自然と、鼻血が垂れる。
私は知った。ロニイさんの微かな筋肉の振動から、後ろへ引こうとしているのを。
「逃がすか」
私は両手両足を地につけ、相手の脛に飛び込んだ。
「ウィンドフォース」
ロニイさんは風を操り空へ逃げようとする。
その行動が何か引っかかった。私はロニイさんの背中を見る。そこには、魔族の象徴ともいえる羽がなかった。
だが、瞳は明らかに人間のものではないし、魔族の魔法も使っていた。
(日本人のお前が言うな……)
それは、激怒したロニイさんの口から出たセリフ。この二つから推測するに、嫌な想像ができた。
私はその風に乗る。私の左手が、それに触れた。
「削除完了。スキャニングを開始、完了。対象名を『風』に変更。コピー可能です」
私は『偽装』を使い、ロニイさんを追う。空中で変身を解き、剣に伝えた。
黒刀が脈打つ。
「第二の技! 一撃、粉砕、吹き飛びなされ! 一撃、粉砕、吹き飛びなされ!」
ロニイさんは溜め時間の間に魔法を行使した。
「ギルティア!」
麻痺したように、私の右腕が動かなくなる。それと同時に痛みも走った。
だがこの攻撃は、私の意思だけではない。
この剣は、魔道具である。剣が歌うように言った。
「フェザーインパクト」
ロニイは防御のために詠唱する。
「ダリアフォース……!」
刹那、夕奈の脳が覚醒した。
力魔法は、他の魔法と比べて情報が少なすぎる。だから夕奈はオリジナルの魔法を作り上げた。そしてもう一つ、思いついた魔法がある。
だがこれは、夕奈は知らないが力魔法の代名詞である。力が不自然に曲がる。
力魔法。その本質は視るではなく、コントロールにある。
(『天眼』……!)
空から情況を把握した私は、どう動くのかを決めた。
温めに温めた切り札。『慧眼』は一度にたくさんの本を読むような感覚に陥るだけだが、こっちの魔法は大きなデメリットが存在する。
だからあまり使いたくなかった。でも、もうやらないといけない。じゃないと勝てない。
私は、こう呟いた。
「統治力場」
この力は、扱いを間違えれば簡単に死んでしまう魔法。動かす力を間違えれば、私がぺしゃんこになる可能性だってある。
だから、最低限、それだけを動かす。
私は位置エネルギーと重力を曲げ、ロニイさんを飛び越えるように彼の背後に回った。
「……な!」
左手が、ロニイさんに触れる。剣の力では決定打を与えられそうにないから。
「削除完了。スキャニングを開始、完了。対象名を『ロニイ・ファーベント』に変更。コピー可能です」
私とロニイさんは地に降りる。
ロニイさんは笑ってこう言った。
「なるほど、エリオスに聞いていた通りです。嵐もその原理ですか」
私は高身長を味わいながら、手から赤い血のような紐を出す。
それらは私の意思のまま動く。
「なるほど、これがあなたの力」
「すみませんが、私に不吉なものを見せないでください」
歯に挟まるような感覚を覚えたが、すぐに忘れて攻撃に転じる。
雑談はしない。これで終わりにするって、決めたから。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!




