表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/176

84話 同じ穴の狢

「……(さわ)がしいな」


 九頭龍晴翔(くずりゅうはると)はそう(つぶや)きながら、城から街を見つめる。そんな彼の横に立つ男。彼の名前はカネ・マネー。


「マネー」


「なんだい?」


「オレに考えがある」


 カネ・マネーは笑って答えた。


「聞こうじゃないか」


 一方(いっぽう)その(ころ)、クルルとギマリは死闘(しとう)()り広げていた。


「行くぜ、行くぜ、行くぜー!」


 百二十ミリの砲弾(ほうだん)がクルルを(おそ)う。クルルは尻尾(しっぽ)を動かして防御(ぼうぎょ)しようとするが、それは失敗に終わる。


 なぜか、そこに()()()()()()()()()()()()


(……! 尻尾(しっぽ)が、消えた?)


 膨大(ぼうだい)魔素(まそ)放出(ほうしゅつ)。当然、(ふた)をしなければすぐに底をつく。


 クルルは普段魔法を使わないがゆえに、魔素(まそ)枯渇(こかつ)に気づかなかったのだ。


 魔装(まそう)はかろうじて(ちゅう)(ふく)まれる魔素(まそ)(まと)う事で使用できる。だが今まで(おのれ)魔素(まそ)を利用して魔装(まそう)を使用していたクルルにとっては、それは確かに弱体化と言えるものだった。


「……」


「おいおい。拍子抜(ひょうしぬ)けだな!」


 止まらぬ砲撃(ほうげき)がクルルを襲う。だがこの時、一瞬のうちだがそれは止まった。


 ギマリの両腕が変化する。


俺様(おれさま)の血は、体は、あらゆる武器に変化する」


 右手は大剣(たいけん)に、左手は機関銃(きかんじゅう)に、そして(ひたい)には相変(あいか)わらず大砲(たいほう)が。


「行くぜ」


「……!」


 クルルに向けて機関銃(きかんじゅう)()つギマリ。だがそれはあまりにもお粗末(そまつ)なものだった。


 クルルはそれを()()()()()。そう、まるで誘導(ゆうどう)されているように。


「……!」


近寄(ちかよ)って来たな、女!」


 ギマリは(はら)から声を出し、その後右手の大剣を振った。


「……!」


 クルルはそれを右の手首で受け止めた。いや、受け止めるはずだった。


「そんな……なんで?」


 かろうじて首だけは動かせたコジカは、クルルを見つめながら絶句(ぜっく)する。


 なぜか、大剣を振ったギマリまで唖然(あぜん)とした。


「おいおい」


 何が起こったか。それはあまりにも単純(たんじゅん)で、道理(どうり)にかなうものだった。


 クルルの()()()()()


「……っ!」


 そう、ギマリの大剣はクルルの手首と肩を切断(せつだん)したのだ。……だがここまでじゃ、ギマリ本人が驚くのはあまりにもおかしい。


 何故、彼は手を止めたのか。


 クルルは思う。


(やっぱり、自分の魔素(まそ)じゃないと上手く()れない……)


「おいおい」


 (かわ)いた(わら)いと共に来る(あき)れ。クルルはそんなギマリを見ながら、切断部分に()れた。


 魔装(まそう)をえぐり、放たれた攻撃。それはクルルの腕を吹き飛ばした。だが……。


「おいおい、なんでそんなに()()()()()()


 クルルの肩から()れる血。それは(しずく)だった。


「……私は、人形(にんぎょう)なんです。だから、血も少ない」


 人形。人という(うつわ)に入れられたクルルは、その器の神経(しんけい)に己の肉体を通してその体を操っている。


 変幻自在(へんげんじざい)なスライムだからこそできる芸当(げいとう)


 そんなクルルは、(けもの)のような(ひとみ)を向けてこう言った。


「引きましたか?」


 彼女に心臓はない。だから人形。クルルはそう、自分のことを評価している。


 ギマリは笑って答えた。


「ぎひゃひゃ。どうでもいいな」


 クルルは微笑(ほほえ)む。その裏で、クルルの魔素(まそ)常軌(じょうき)(いっ)するほど回復していた。その副作用か、スライムの肉体が()け始める。だがそれはスライム特有(とくゆう)の回復力で(おぎな)った。


 クルルの(こし)あたりから尻尾(しっぽ)のようなものが()える。


「これ以上壊したら、ジーダさんに怒られてしまいます」


 クルルは取れた腕をくっつける。


 それを見たギマリはコジカにこう伝えた。


「コジカ、勝てなかったことを()めるなよ。お前は弱くない」


 クルルの(ひとみ)が二人を狙う。本能というべきだろうか。彼女は肉体を手に入れ、人間として暮らすという夢をかなえた故に、獣へと変貌(へんぼう)しかける。


 ギマリはこう続ける。


「あれは兵器(へいき)だ。この国に伝わる国宝(こくほう)始鉱石(しこうせき)、緑の輝きを放つ『生命』の石から作られた物」


 ギマリの体は一旦(いったん)人型へ戻り、その後()()()へと変わった。


 右手に機関銃(きかんじゅう)を、左手には(たて)を、両(ひじ)には剣を。頭からは刀が生え、背中には十数本の(やり)が生える。つま先は(かま)へと変わり、(すね)(おの)に、(くるぶし)はナイフへと変貌(へんぼう)する。そして最後に全身を(おお)薄汚(うすよご)れた(よろい)のようなものに、皮膚(ひふ)が変化した。


「初めて戦う相手だ! 楽しみだな!」


 咆哮(ほうこう)のようにそう言い放つギマリ。一方クルルは冷静にこう返した。


「私はクルル。スライムの女王です」


「そうか! なんで自己紹介したかわからねえが、まあいい! 俺様はギマリ・ガンガン、愛する母上のためにお前を倒す」


 そう宣言(せんげん)し攻撃に(てん)じるギマリ、クルルはそれを受け止め、こう言った。


「……卑怯(ひきょう)ですよ」


 (ほほ)(ふく)らませながら、クルルはギマリを見た。刹那(せつな)尻尾(しっぽ)がギマリを()(はら)う。


 ()(もの)人形(にんぎょう)。中身と上辺の違いはあれど、彼と彼女はお互いを受け入れていた。だがそれも……。


「すみませんが、私に戦う意思はありません。諦めてくれないというのなら、いち早く無力化させてもらいます!」


「俺様の性格知ってんだろ!」


 だがそれも、彼女達には関係ない。


 それもそのはず、彼女と彼は、()()()()()()()()


 クルルは(こぶし)を振るう。それと同時に、鉄の音が(ひび)いた。


「……ほう、始まったようですね」


「もう一度()くわ。エリオスのもとへは行かないの?」


「おや? 敬語ではなくなりましたね」


「ええ。考えてみたけど、あなた敵だし、必要ないかなって」


 (かた)をすくめる夕奈(ゆうな)。ロニイは微笑(ほほえ)み言った。


「それもそうですね」


 その微笑みに呼応(こおう)して、夕奈(ゆうな)(うそ)()みを()かべる。


 万葉木夕奈(まんようぎゆうな)とロニイ・ファーベント。お互い敵意(てきい)があるのかどうかすら怪しい関係。そんな中、夕奈は言った。


「その指輪、左手の薬指につけてるけど、奥さんがいるの?」


 言ってすぐ、夕奈はこう思った。


(そもそも人間の文化と同じなのかしら?)


 それは杞憂(きゆう)に終わる。ロニイは一瞬()()()()(つら)()()()、こう答えた。


「はい」


 たった二文字、だが夕奈はそれが忘れられなかった。


(まったく、この人なんかほっとけないのよね)


 夕奈は、呆れたように剣を持つ。


「休憩は終わりですか?」


「ええ」


 どこか気が乗らない私は、相手に向かって走ることしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ