83話 江戸の敵を長崎で討つ
今起きていること
・万葉木夕奈VSロニイ・ファーベント
・クルルvsギマリ・ガンガン
・キョウヤvsアンニ・トートンルー
・アーサー=アーツ・ホーガンvsカニマニ・アルル&サーガ・ラントゥトーン
・冒険者たちvsその他大勢の魔族、魔獣&メモリープラット
・ラリゴ先生vs名も無き魔族
・バルトス・シリカ&カナリアル・ボンダ&鍛丸匡一郎vs謎の女
「ああもう! いつまでついてくるんだよ!」
「オレの、オレの純情を弄びやがってー! もう許さない、ゆるさないぞ!」
「うわあ……、キレてる。最悪だ」
青髪お団子な少女は、鋭利な尻尾を振り回す。一方、魔王軍幹部キョウヤは青ざめていた。
(逃げ切れるか、これ?)
「逃がすか! 連打、連打、連打!」
「ちょ、ちょ、ちょ!」
空中を舞い、雨が降るように、尻尾の攻撃がキョウヤを襲う。どうやらあの尻尾に長さの限界はないようだ。
キョウヤはそれを必死に避ける。
「あ、危なかった」
「なんで当たらないんだよ!」
地団駄を踏むアンニに、キョウヤは言った。
「お猿さんみたいに単調なんだよ」
「んな……!」
ぐつぐつと、アンニの怒りが沸騰する。
「……もう許さない。エルムンダリア」
セカイが再構築される。
「おいおい、マジでやる気かよ」
キョウヤの覚悟を表すように、彼の右腕に光の輪が出現する。それに呼応して、キョウヤの右手が光を放ち始めた。
『ハイタッチジャック』
それが彼に与えられた力。
「……」
(一度でもアンニちゃんの手に触れさえすれば、意識は乗っ取れる)
だがそれは相手も同じ。一度でも刺すことができれば、人間であるキョウヤの体などすぐに動かなくなるだろう。
キョウヤは空を飛んでいるアンニに言った。
「……アンニちゃん、考え直さない?」
「だからオレを、呼ぶな!」
アンニの尻尾がキョウヤを襲う。キョウヤはそれを避けるが、地面に刺さった尻尾は土竜のように地中を走り、キョウヤの背後へと移動した。
「……!」
血しぶきが飛ぶ。
「よっし! 正義は勝つ!」
キョウヤの肩に刺さった尻尾の先端についている鋭利なナイフのようなものを、彼は掴み言った。
「プラン変更だ」
「……?」
アンニの背後に突如現れる黒い影。女は、アンニの首に腕を巻き、骨を折ろうと力を籠める。
マズいと思ったアンニは急いで詠唱した。
「プ……リッツ」
女の筋力が一瞬の間麻痺する。その隙をついて、アンニは女から離れた。
だが、アンニは引っ張られたように地上に落下する。
「なんで?」
「なんで、って言ったか?」
アンニは目にする、自分の尻尾がキョウヤの肩に刺さっている事実を。
「……どうして、抜けねえんだ!?」
キョウヤは笑う。
「ははっ。なんでってさ、君が刺したんだろ? おっと、お猿さんだからわかんねえか」
キョウヤの鋭い笑みが、アンニの癪に障った。
「キョウヤ……!」
アンニの言葉を消すように、「ゴホン」と女は言う。スーツに身を包んだ褐色の女は、こう言った。
「キョウヤ様の名を、お前ごときが発っするな」
「……おまえは」
魔王軍幹部キョウヤ、そしてその男を支える女、ポイロ。
キョウヤはアンニの尻尾を指してこう言った。
「君の尻尾はポイロの力で動かなくしてある。降参するというのなら、情報提供だけで見逃してやる」
アンニは気に入らないような表情を浮かべる。
「お前だって痛いだろ?」
「そんなことは訊いていない。降参するのか? それとも死ぬのか?」
アンニは笑って言った。
「あんたに勝って、復讐を遂げる」
キョウヤはポイロを見る。そして言った。
「負けた」
「仕方ありません」
「ああ」
キョウヤはアンニを見つめながら言う。
「プランを修正しよう。前にクマを倒した時と似た感じに」
「わかりました」
キョウヤが持つ力は二つ。精神を乗っ取る『ハイタッチジャック』。そして、あらかじめ能力で作ったシールを貼っておいたものを、自由に収納、取り出しができる力、『四次元ワクワクポケットさん』。
キョウヤは『四次元ワクワクポケットさん』を使い、ポイロの武器である斧を取り出した。
「頼むぜ」
「はい」
ポイロは二つの斧を背中に掛け、特段大きな斧を手に持つ。それを見たアンニは青ざめた。
「……勝てるか、これ?」
尻尾を動かしてみるが、キョウヤが痛がるだけで抜けそうにない。だがキョウヤが痛がる姿に、嫌な気がしないアンニは動かし続けることに決めた。
「では、始めましょうか」
「おう。かかってこい」
対峙する二人の女。一方男は、痛みに耐えながらこう思っていた。
(アンニちゃんの奴、さっきから小刻みに尻尾を動かしてきやがる)
「……性格悪いな」
だが、耐える。
戦いの裏で、キョウヤとアンニの我慢比べも始まっていた。




