79話 人事を尽くして天命を待つ
今起きていること
・万葉木夕奈VSロニイ・ファーベント
・ジーダ・オニュセント&ファニー・トロイポンvsアルファ&ベータ&ガンマ
・アーサー=アーツ・ホーガンvsその他大勢の魔族、魔獣&メモリープラット&カニマニ・アルル
・ラリゴ先生vs名も無き魔族
・バルトス・シリカ&カナリアル・ボンダVS鍛丸匡一郎
・レテシー・アルノミカ&嘉村舞奈vsヴァルダニオ・ボンダ&ヒョウリー・クワンド
光の斬撃を岩の剣で受け止めたジーダはこう呟く。
「素晴らしい」
その言葉は、恍惚を含めていた。
「どうしたの? その程度?」
「……」
ジーダとアルファはお互いを睨み合う。もう、視覚は回復した。
「……ベータ。私に任せて」
その気迫。初めて聞くアルファの自発的な言葉に、ベータは一歩引いた。
一触即発。二人は武器を取る。
「再度問います。あなた方の目的は?」
「家族を救う。そのために、お前を殺す」
刀と剣がぶつかり合う。その猛攻に、割りいることはできない。ベータはそれを見つめていた。
「……っ!」
(刃こぼれ!?)
アルファの刀が傷つく。だが、止まらない。
その行動にジーダは賞賛を送る。
(ユーナさんに加えてアルファさんまで……、新世代への期待が高まります)
そんなジーダとは裏腹に、アルファ心に広がる願い。
(帰るんだ。みんなで、完治して!)
刀と剣がぶつかりあう。
家族のために。その一心と共に芽生える相手への敬意。
アルファは自分ですら知らないところで、己を成長させてくれたジーダに感謝していた。
「……!」
だが、無情にも彼女は力尽きる。
刀の刃が折れたのと同時に、アルファの意識は消えた。
(お見事です)
ジーダはそっとそう思いながら、ベータがいたはずの場所を見た。
「……どこに?」
花月面来。それは彼女が編み出した技。これから始まる血統の力。だが、彼女にはもう一つの力がある。
「ジーダさん!」
ジーダのもとへ駆け寄るファニー。それが何を意味するか。
ジーダ、ファニーは気づいた。
もう一つの力。絆が今、手を結ぶ。
最初に現れた時はベータを主軸としていた。だがそれは三人の中で一番血気盛んだったという理由からである。
つまり、覚悟が決まり、戦う理由を得た彼女は、最強へと変貌する
あくまで、三人の中でだが。
「……!」
刃折れの刀が、ジーダを襲う。超人的な身体能力、圧倒的な技術、神業的な心理的能力。それらすべてが重なり合い、一人の女性を生み出した。
今までならあり得ないことだった。ベータが体を渡すのは考えられないと、二人は思う。だが彼女もまた変わったのだ。いや、思い出したと言う方が正しい。
アルファが倒れる一瞬のうちに、ベータはこう望んだ。
(あるふぁ、とおくへ行かないで)
その奇跡が、力量差を埋める。
「何……!?」
刀と剣がぶつかり合ったと同時にアルファの拳がジーダの腹を打つ。
勢いを殺せずに、ジーダは後方へ吹き飛んだ。
「……かま」
「どいていなさい!」
魔法使おうとしたファニーを止めるジーダ。彼は地魔法を使い、剣を作りアルファを襲う。
お互い本気の目。そこに言葉はいらない。
ジーダはアルファの刀を奪い取る。だがアルファは瞬時に拳を作り、両手でジーダを殴った。
ジーダもそれに応戦するが、じわじわと効いてくる毒の効力が上がっていることに戦慄し、手を緩めてしまう。
肉弾戦が始まった。
「うごおおおおおおおおお!」
「うがあああああああああ!」
魑魅魍魎が跳梁跋扈するかのようにこの周辺は危険区域へと変貌する。
(花月面来……!)
彼女、アルファは光魔法の才能しかない。だが、彼女は魔族であるがゆえに、己の体内で作られる魔素を使用することができる。
アルファの師匠が最も得意とする技術。それは人間の使う魔法と魔族の使う魔法を融合させること。ロニイ・ファーベントしかできない技術だったが、今この瞬間、その事実は上書きされた。
(複合魔法……)
光と力が混ざる。
(フラッシュケブカ!)
小さき拳が光を纏い、攻撃性を高める。ジーダへ向かうその拳は、彼を殺すに値する力を得た。
彼女はこの勝負にすべてをかける。
ジーダもまた、覚悟を決めていた。
(後ろには皆さんがいる。だから、今は、全力で……お相手するまで)
拳に力がこもる。これは魔法ではない。
バーサーカーの名の通り、ただ、力いっぱい攻撃するまで。
ジーダは覚束ない魔装を使い、腹に魔素を纏う。
この戦いは……。
「……!」
「……」
双方の拳が敵を穿つ。
白目をむき、倒れたのは……。
「ジーダさん!」
アルファだった。
ジーダは近寄るファニーの頭を触って、優しい顔でこう言った。
「あとは任せます」
倒れるジーダ・オニュセント。ファニーはアルファが吐き出したジーダの小指をジーダにくっつけるように押し当て、スライムから作った薬で接着させた。
「ジーダさん、死なないで。今すぐお医者さんを呼んできます!」
立ち去るファニー。そんな彼女を見て、ジーダは思う。
(老いたものです)
「ふぉっふぉっふぉー」
(……追い抜かされるのも悪くないですね)
微笑むジーダ。この戦いは、ジーダ・オニュセントの勝利で幕を閉じた。
倒れているアルファ。その心の中では、三人がお菓子を食べながら談笑していた。
アイマスクを外したベータ。耳当てを外したアルファ。マスクを外したガンマ。三つ子にしか見えない彼女たちは、それぞれ口を開く。
「それにしても、おじさん強かったね」
「なんで私たちがジーダ・オニュセントの相手なのか、上を訴えてやろうか? って思う」
「……」
他の二人とは違い、黙るアルファ。そんな彼女を見て、ベータは言った。
「アルファのせいじゃないよ」
「……そう、なのかな?」
「死んでないし、万々歳」
ベータ、ガンマは笑う。その声につられて、私も笑った。
顔は変わったし、声も変わった。昔とは似ても似つかない現状だけど、二人を見ると、なぜか懐かしく思えてくる。
「……あれ? ベータいつの間に話せるようになったの?」
私がそう言うと、ガンマは驚いたようにこう言った。
「ほんとだ。前まであへー、とか言って知性がなかったのに」
「ひどいー。でも、不思議。なんかね、雑音がなくなったの。視界の暗い靄がなくなったの」
私たちは微笑んだ。
「そっか」
「それはよかった」
ここでは、私の耳はあるし、ベータの瞳も私を見てくれる。もちろん、ガンマの口元の傷もない。
納得いかないけど、ジーダさんのおかげで治療できたのかもしれない。
そう思うアルファだが、自分たちの成長が呪いに似た病を治したことには気づかない。だが、それでもいいのだ。
何せ彼女たちは、そんなこと気にする間もなく笑っているのだから。
数分後、ファニーが連れてきた医師によって応急措置を施されるジーダ。彼の意向により、魔族の女も治療を受けた。
一人残ったファニーは城の外を窓から眺める。
荒れ始めている街を見て、彼女の鼓動が高まっていた。いてもたってもいられなくなったファニーは、外へ向かう。
対峙する強き者たち。裏で動く者たち。その者たちの手によって、この戦いは大きく動く。
戦争は第二幕へと向かい、第一幕最後の戦いが今、終わろうとしていた。
「なにする気だん?」
「単純です。アリア様を守るために、あなたを殺します」
「……怖いだんね」
レテシー・アルノミカ。彼女は足に、魔素を纏う。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます! もう少しでこの章の前半が終了します!! そして全体的な物語も、現時点で三分の一が終了しようとしています。
改めて、ここまで読んでいただいた皆様に感謝を。
「ありがとうございます」




