表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/176

78話 雨が降ろうが槍が降ろうが

素晴(すば)らしい」


「もういい加減……。その上から目線()めてくださいよ」


 アルファはジーダを(にら)む。それを見たベータは笑った。


「んふふー。なんかいちゃいちゃしてるー。あはっ、私も混ざるー」


 創作獣(そうさくじゅう)であるプリンちゃんを一蹴(いっしゅう)し、ベータはジーダのもとへ向かう。だがそう簡単にいかないのが戦闘である。


 プリンちゃんは己の体全体を使いその通路(つうろ)(ふせ)いだ。


「んふふー。邪魔(じゃま)


「……!」


 アルファ、ジーダは剣技(けんぎ)、魔法を駆使(くし)して戦う。


花月面来(かげつおうらい)


 (さや)に戻した刀の持ち手に触れるアルファの脳裏(のうり)に覚悟が(よぎ)る。


(ロニイ師匠。必ず勝って、戻ります……!)


「キャストアイズ」


 暗闇(くらやみ)がアルファを支配(しはい)する。その闇魔法の対極(たいきょく)に位置する光魔法が、ジーダを襲った。


「シャイングニッシュ」


 光が屈折(くっせつ)し、本来あり()ないはずの軌跡(きせき)を見せる。


 ジーダの視界はゆがみ、アルファが二人に分身したように見えた。


 アルファは思う。


(心の目で見ろ。ガンマの得意分野だけど、それでもやるんだ)


「……!」


 アルファは、ジーダが操る床から()える円錐(えんすい)の物質を()ける。


 間髪(かんぱつ)(はさ)まずにアルファはジーダが床の形を変えて作り出した円錐(えんすい)の床を()りジーダに近づく。


 その思いは家族のために。二人を救うため、彼女は刀を振る。


「……!」


(体が……!)


 ジーダは己の体が自由動かない事実に驚く。


 ここにきて毒が()いてきた。それに加えて、消えた小指のせいで左手で剣を握っても力が足らずアルファに()()ける現状。


 ジーダ・オニュセントは辟易(へきえき)する。


 だがそれの恩恵(おんけい)か。己の欲求が()きあがった。


(落ち着け。下手に動くとあの時みたいに……動けなくなる。それでまた、戦いに参加できずに親しい人が死ぬのは耐えられない)


 深呼吸をするように、ジーダは息を吐いた。


「……!」


 だがそれが許されるほど甘い相手ではない。双方(そうほう)ほとんど目が見えない状況。


 アルファはガンマの『コネクト』という魔法のおかげで、大まかな現状は三人の視界から把握している。だが、それまで。


 圧倒的な信頼は()られない。


(でも、ここがチャンスなんだ……)


 アルファの刀がジーダの腹を狙う。


 年のせいか乱戦(らんせん)のせいか、それを(ふせ)ぐのに一歩遅れた。ジーダは体のバランスを崩すように剣を体の前に持って行く。


「させない」


 壁を()り勢いをつけて動き、器用(きよう)にプリンちゃんの(また)を抜けるベータ。彼女はジーダの(わき)に手を入れ、防御姿勢(ぼうぎょしせい)()いた。


 アルファの脳に刀を(かま)える自分の姿が映し出される。


「ありがとう、ベータ」


 刀が、ジーダを狙う。


 欲望と理性が争う中、声が響いた。


「生きて! ジーダさん!」


 突風が()った。


「こいつ!?」


 ガンマは振動するナイフでファニーを狙う。だがそれは当たらなかった。


「ちょこまか!」


 生きて。その言葉が、ジーダの心に滞在(たいざい)する。


 ぐつぐつと、再加熱される本能。


 紳士(しんし)な彼は仮の姿。彼はまさしく……。


「忘れていました」


「……!」


 ジーダの足元(あしもと)の床から成人男性を()すほどの長さの円錐(えんすい)が現れる。


 誰が言ったかバーサーカ―。


 その地魔法で作った円錐は、(くだ)かれる。


 何が起こったのか。ベータ、アルファは後方と前方、別々の方向へ吹き飛ばされていた。


 ジーダはにやりと笑う。


「もう、世代は変わったということを」


 ジーダの筋肉は、先ほどとは比較にならない程に膨張(ぼうちょう)する。


「かかってきなさい、二人とも。私が……相手してやる」


 ジーダはファニーを一瞥(いちべつ)する。彼女なら、戦えると信じて。


「――鎌鼬(かまいたち)!」


 風を操り、床の破片をガンマに飛ばす。


「……」


 ガンマはそれを振動するナイフで受け止める。粉のようにそれは崩れた。


「ファニーだっけ? ちょっと話さない?」


 急になんだ? と思うファニーだったが、これ以上戦ってもじり(ひん)だと感じそれに(おう)じる。


「……いいですよ」


「なら話す。私が指を鳴らせばこの城は爆破される。それが嫌なら降参して」


「え……!?」


 ファニーは困惑(こんわく)したようにガンマを見た。


「不可能じゃない。私たちは魔族」


「え、ええ!? 確かにそうだけど!」


(はったり? それとも本当!? そうだとしたらなぜ急に!?)


 ファニーは頭を(かか)えた。


「だから、降参して。あなたは(わか)い。まだ殺したくない」


「……」


 ファニーはガンマを見た。(くず)れない表情。それから感情を読むのは至難(しなん)(わざ)だった。


「……ガンマさん」


「ん?」


 ファニーはバカだと自負(じふ)している。だから彼女は、剣をもってこう答えた。


「その口ぶりだと、結局爆発するんじゃないですか」


 はったりかどうかの区別はつかない。だったらつけなければいい。


「ファニー・トロイポンを()めるなよ」


 その()みがガンマに(とど)く。彼女は(あき)れたように言った。


「バカと天才は紙一重(かみひとえ)凡人(ぼんじん)は時に天才をも凌駕(りょうが)する。どっちも好きな言葉だけど、やっぱり私はこう思う。……バカは凡人を威嚇(いかく)するって」


「……?」


 ガンマはファニーを見つめ、誰にも聞こえない声でこう呟いた。


「三人でまた、ゆっくり寝たかったな」


 覚悟が、ひしひしと伝わる。ファニーは無意識のうちに強張(こわば)っていた。


「ココロクローズ」


 刹那(せつな)、この場にいた五人の心の(あいだ)に絶対的な壁が生まれる。


 それをいち早く拒絶(きょぜつ)したのは、アルファだった。


「ガンマ! 私が勝つから、邪魔(じゃま)しないで!」


 その言葉を聞いたガンマは(わら)い、魔法を()めた。


「ははっ。怒られた」


 意識を取り戻したファニーは大声を出す。


「それが! わたしを動かす心です。楽しいでしょ」


「……ちっ。たしかに」


 誰かを信じる。ただそれだけの共通点なのに、今この一瞬だけは、二人の心が繋がった気がした。


「ファニー・トロイポン。君の仲間のおじさん、急にパワーアップしたね。でも、私の仲間は負けない」


「いいえ。ジーダさんが勝ちます」


 そっと微笑(ほほ)む二人。その()彼女らは、緊張感を胸に武器を取る。


「ガンマさん」


「ファニー」


 そして同時にこう(あらわ)した。


鎌鼬(かまいたち)


「コネクト」


 そんな彼女らの横で、戦う者たちもいる。


「……強い。ベータ、早く援護(えんご)して」


「んんー。この(けもの)が邪魔なの、()えてて」


「ぼっふぉっふぉー。これはこれは」


「ぎゃうー!」


 プリンちゃん、ジーダ・オニュセント、アルファ、ベータはそれぞれ好きな言葉を言う。


「……!」


 お互い拮抗状態(きっこうじょうたい)。いや、アルファだけは、()(まけ)けていた。


 止まらぬ猛攻(もうこう)。剣が崩れたかと思うとまた新しく出来上がる岩石の剣。


 防戦一方(ぼうせんいっぽう)弟子(でし)万葉木夕奈(まんようぎゆうな)とは比べ物にならない。そこに(すき)微塵(みじん)も存在しなかった。


(なんでこの人、見えないのに全力で剣を振れるの? ……おかしい)


 ()()()()。アルファの脳裏(のうり)にそんな言葉が(よぎ)る。


「ぐふっ……!」


「あるふぁ!」


 致命傷(ちめいしょう)になりうる攻撃がアルファの体に入る。もし、人間だったら。彼女は死んでいただろう。


 だが彼女は笑う。


(勝つって約束したんだ。何をしてでも……)


「……やっと、隙を見せた」


 アルファの刀がジーダのもとへ向かう。それは確実に隙をついたものと思われていた。


「……え?」


 アルファの足に(まと)わりつく地魔法で操られた床の物質。


(こんな、初歩的なものに……)


 そう思うアルファを他所(よそ)に、ジーダは呟く。


「二度は()らいません」


 体勢(たいせい)(くず)したアルファの後頭部(こうとうぶ)を、ジーダの剣が(くだ)いた。


 まさしく致命傷。血を流し、脳震盪(のうしんとう)を起こしたアルファは倒れた。


「あるふぁ……」


 ジーダはすかさずベータを狙う。


 プリンちゃんとジーダ。二人の攻撃がベータを襲う。


「……」


 しかし現実は違った。攻撃を加えられているのはジーダのみ。


 ベータはジーダから離れ、目の前に落ちている()()()()()()()()を見た。


 その断面図は美しいものだ。魅惑(みわく)する骨と肉。


「……まさか」


花月(かげつ)……面来(おうらい)


 (のど)も同時につぶれたのか、アルファの声がかれている。ボロボロになり、顔面血だらけの彼女は刀を取る。


「プリッツ」


 その剣撃(けんげき)は、ジーダを襲った。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ