71話 朝には紅顔ありて夕べには白骨となる
2日空けてすみません。
今起きていること
・万葉木夕奈VSエリオス・バンダ
・ジーダ・オニュセントvsアイマスクをつけている少女&マスクをつけている少女&耳当てをつけている少女
・アーサー=アーツ・ホーガンvsその他大勢の魔族、魔獣&メモリープラット&カニマニ・アルル
・ラリゴ先生vs名も無き魔族
・バルトス・シリカ&カナリアル・ボンダVS鍛丸匡一郎
・レテシー・アルノミカ&嘉村舞奈vsヴァルダニオ・ボンダ&ヒョウリー・クワンド
・クルルvsコジカ
特に変わっていない。
アーサー=アーツ・ホーガンは様々な手を使って無数の魔族、魔獣の進行を抑える。地を砕き、天を塞ぐ。大気に浮かぶ空気を制御し、同時に己の体の制限を解除させる。
あまりにも多重労働。
本人もそれを感じていた。
「おいおい。鈍くなったな」
「……。あーっはっは!」
アーサーはカニマニ・アルルの攻撃を受ける。
その攻防はわずか一秒にも満たない。だがその短時間でアーサーの目をかいくぐった魔族、魔獣は軽く数百を超える。その者たちが向かう先は王都。
今は王都の外、人気が限りなく少ない、草木も少ない、広大な枯れた大地だが、そいつらがここを離れるのは安易なことだ。
あの魔族一人一人が魔法を使える。あの魔獣一匹一匹が訓練された兵士一人分の強さを持っている。
あまりにも不公平。さすがの「英雄」も、数には勝てなかった。
カニマニ・アルルは不敵な笑みを浮かべる。それと同時に、数度の遺伝を果たしたメモリープラットが拳を振るう。
アーサーは黒い渦を尻目にそれを燃やした。メモリープラットはそれを見つめる。
だが残念なことに、この手は数分前に使った。
「おんぎゃあ」
ニヤニヤと、気持ちの悪い笑みを浮かべるメモリープラット。もう奴らにアーサーの炎は効かない。
アーサーは突風を操り、百五十キロはあるメモリープラットを吹き飛ばす。
彼ももう、限界を感じていた。
(……ダメだ。オレ一人じゃ、抑えきれない)
アーサーは一か八か、魔族、魔獣が次々と現れる黒い渦を壊そうと魔法を使う。
「ポリッツ」
だがそれは、当たることはなかった。
それを見た一同は驚く。
カニマニ・アルル、及びこの場にいた魔族達。そして王都に潜り込んでいる、エリオス・バンダ。それとコジカと呼ばれる男。鍛丸と戦っている手を止め、バルトス・シリカとカナリアル・ボンダもそれを見た。
そんな魔族を見て、万葉木夕奈、クルル、鍛丸匡一郎もそれに目を奪われる。
もちろん、アーサ=アーツ・ホーガンも、それを一瞥した。
この事象は、戦いを大きく動かす。皆はその者の名前を知らない。おそらくこの先も知ることはないだろう。
何が起こったか。
「……何が、あった?」
カニマニ・アルルはそう呟く。そんな一瞬の隙、アーサー=アーツ・ホーガンはカニマニに剣を振った。
カニマニは防御が遅れ、致命傷となる一撃をまともに食らう。
何がそこまで彼を動揺させたのか? その秘密を知っている人物は二人いた。
「情報提供ありがとう。キョウヤ」
「いえ、先生には日本でお世話になりましたから」
彼らは、煙のように消えて行く黒い渦を見つめる。
キョウヤと呼ばれる男を見た九頭龍晴翔は、こう返す。
「しかし、キョウヤの力はなんとも不思議なものだな。他人の意識を乗っ取るとは」
「僕からすれば、先生の方が怖いですよ」
ハハハと、乾いた笑いを彼は放つ。魔王軍幹部キョウヤ。彼は今、冒険者の体を乗っ取っている。
そんな彼は、黒い渦があった場所を見つめながらこう言った。
「あらゆるもののデータ化。及びその保存と対抗策となるプログラムの作成。先生を頼ってよかったです。ありがとうございます」
「いいんだ。それができたのは、あの黒い渦、通称ゲートにオレの能力で作ったUSBを刺してくれたキョウヤのおかげでもあるしな」
「ですね」
微笑むキョウヤを見た九頭龍晴翔はショボンと眉を下ろしながらこう伝えた。
「まだ魔王軍にいるのか?」
「ええ」
「まあ、オレからは何も言わないが……。いつでも帰ってきていいんだぞ、待ってるからな」
「はい。では、僕はこれで」
キョウヤはそう言ってこの場を去る。九頭龍晴翔もまた、優しい笑みを一瞬浮かべてこの場を去った。
ほっこりするような会話の数々。その裏で、戦況は大きく変わっていた。
その恩恵をもっとも大きく受けたのは、アーサー=アーツ・ホーガンだった。彼は剣を振るう。
(黒い渦が消えた……)
魔族の数は、徐々に減る。
その光景は、皆の心を消耗する。
「……」
カニマニは立ち上がった。
そんな彼を見て、アーサーも再度ミリアの顔を思い出す。
「ライジングブラスト……」
そして大きな太陽のようなものを落とし、多くの命を奪った。
「……」
傷つく心。それでもアーサーは、剣を握る。
一方その頃、魔王軍幹部キョウヤは自分の体に戻り、部下に会っていた。
「キョウヤ様」
「ありがとう。お前のおかげであの渦を消すことができた」
スーツ姿の女は頷いた。
「いえいえ、お礼は良いですよ。それよりも、今度一緒にお祭りにでも……」
「ああ、分かった。行こう」
スーツ姿の女は目を輝かせながら言った。
「はい!」
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