表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/176

68話 言うは易く行うは難し

 誰が言ったかバーサーカー。ならばその弟子(でし)は?


 エリオス・バンダは彼女のことをこう(しょう)した。


(この荒々(あらあら)しいウサギめ)


 どうやら彼の感性は一般人と乖離(かいり)しているらしい。


「……!」


 彼女はうっすらと()みを浮かべながら(けん)()る。()いでいない、鈍器(どんき)(なん)ら変わらない武器を。


 オレはそれに答える。


 だって、なんだか面白そうだからな。


 エリオスはそんなことを考えながら、青黒い球体を万葉木夕奈(まんようぎゆうな)(はな)つ。


 それは地に()き、発火する。


 消えない火。


「これでも、お前は力を使わないのか?」


「あー……。考え直す必要がありそうね」


 夕奈は一歩引く。それに呼応(こおう)してエリオスはうっすらと笑った。


「ふっ。おまけにこれも見せてやる」


 エリオスは右手を天に向け、詠唱(えいしょう)した。


「かはなじまにますにまにはまじーんほならねぶっちばばばん!」


 無音がこの場を支配する。夕奈は苦笑いを浮かべ、エリオスは何かを(さっ)した。


「え、えーと」


 エリオスは静かに手を()ろし、こう思う。


曖昧(あいまい)呪文(じゅもん)は言うべきではなかった)


 刹那(せつな)、石っころがエリオスを(おそ)う。


 夕奈は小さな石を数個(すうこ)手で(もてあそ)びながら、こう言い(はな)った。


()めが甘いのよ」


「同感だ」


 夕奈は空を飛ぶエリオスへの攻撃手段を持ち合わせていない。


「……仕方ないか」


 そう、夕奈は……。ならば他の者なら?


 夕奈は思う。


(久しぶりに、助けてもらうわ。お姉さん!)


 夕奈は右手に神経(しんけい)を集中させる。そしてエリオスを(あお)った。


()なよ」


 エリオスは青黒い球体を()げる。それは儀式(ぎしき)の準備のように淡々(たんたん)と、何かの期待を込めたようなものだった。


 夕奈はその球体が割れる瞬間に『偽装(フェイク)』を使う。


(勝負は私の負け。でも、試合には勝たせてもらう)


 消えない青い火が現れる。私はそれに向かって瓦礫(がれき)と共にあった木材を投げる。


 当然のように燃え上がり、煙が発生した。


「スキャニング完了。対象名を『煙』に変更。コピー可能です」


 どうやらこの青い火は特別なものらしく、異常に木材が燃えた。運のいいことに、予想以上の風が吹く。


 私は(ねん)じた。煙を。


 それと同時に体の構造が変化する。私は(ちゅう)()った。


 エリオスを超えて、私は(そら)で『偽装(フェイク)』を()く。そして剣を振った。


 脳天直撃(のうてんちょくげき)。なのにエリオスは……。


「……やっぱり」


 彼は()()だった。


 夕奈の脳裏(のうり)に記憶がよぎる。


(前に戦った時も、無傷で私の攻撃を受けていた時があった。やっぱりあれも……)


 私、万葉木夕奈(まんようぎゆうな)微笑(ほほえ)んだ。


「やっぱり、そういう事なのね」


 師匠から教えられた事実。もう一つの使い方。


 彼の異常な耐久力。その正体は……。


「ほう。君はそれが使えるのか」


 別の場所で、クルルにそう言うコジカ。


「メイドのたしなみというやつです」


 クルルは口角(こうかく)を上げる。


 音の(かたまり)を受けて無傷(むきず)


 その事実はコジカを(ふる)わせた。


「ですから……ん?」


 クルルの言葉を聞いている途中で、コジカは突然(とつぜん)頭を押さえる。


「やめてよ。僕一人で出来るから……。頼むから出てこないでくれ」


 首を四方八方に振るコジカ。


「だから……!」


 それは突然に。コジカは気絶するかのように体の力を()いた。


「ふう」


 人が変わったように、コジカはクルルを見た。その(ひとみ)は、同一人物とは思えない程、冷たいものだった。


「……!」


 総毛立(そうけた)つ。クルルは初めてその感覚を(あじ)わった。


「お嬢ちゃん。……暴れるなよ。バルクスオホーチュン」


 コジカは人差し指を手の平を上に向けながら天に向けた。


 それに呼応(こおう)して、黒い無数の手が現れる。


 さすがのクルルもこれからは逃げた。


「暴れるなと言ったのに……」


 音の塊がクルルの目の前に現れる。


「お仕置きだ」


「……っ!」


 顔面に音エネルギーが直撃する。


 だが、彼女は止まらなかった。


「素晴らしい! 相当努力したんだろうなあ!」


 クルルは数発の音の塊を避け、コジカに接近する。


 そして(こぶし)を作りこう言った。


「ちょっとだけです」


「ははっ! いいぜ、こいよ。肉体戦闘は得意だ!」


 クルルはコジカの拳を腹に受けながら、己の右手をコジカの頬に直撃させた。


 男は後ろへ吹き飛ぶ。


 違う場所でも、同じことが起きていた。


「……あ?」


 エリオスは鼻血を流す。


 夕奈は(ほほ)に付いた血を手で拭き取る。違う場所のクルルは、腹をさすりながら殴った男を見つめる。


 夕奈とコジカは同時に呟くように相手に伝えた。


「その異常な防御力」


「その根源には魔素(まそ)が関わっている」


「間違ってないわよね?」


「間違えてはいなよな?」


 クルルとエリオスは頷く。


「そうだ」


「これは、ニッコウに伝わる力」


「オレは里のおっさんに」


「私は嘉村(かむら)さんに」


「教えてもらったんだ」


「ご教授(きょうじゅ)いただきました」


 夕奈は(こし)に手を当て、もう片方の手で赤い閃光(せんこう)を放つ剣をもつ。


「その力は、師匠に教わった。私は不器用だったからできなかったけど、知識は()れた。その力は魔装(まそう)と呼ばれるもの」


 違う場所にいるクルルは、夕奈と同じ場所にいるかのように会話を引き()ぐ。


「大気中に浮かぶ魔素(まそ)。あるいは体内で生成された魔素を体を(おお)うように(まと)う技術」


 クルルと夕奈は同時に笑う。


「ま、その魔素ごとえぐればダメージは与えれるんだけどね」


「纏う魔素の強さは人それぞれ。私は少し繊細(せんさい)だったようで……、ほんの少しだけ硬いんです」


 別々の場所にいるコジカとエリオスは同時に口角を上げた。


「そうかよ」


「そうかい」


 そして同時に立ち上がる。


 クルルはそんな彼を見て、残念に思った。


 夕奈はそんな彼を見て、「さすが」と苦笑いに似たものを浮かべながら呟いた。


 エリオスはため息をつきながら夕奈の持つ鈍器(どんき)を見る。


(さっきの一撃。一発目の攻撃は防げた。なのに落ちるアイツが放ったあの斬撃。なぜかあれはオレの顔面を打ち抜いた。……魔装を貫通できるのは魔素だけ。つまりあれは、魔道具か……!)


「随分と良いおもちゃを持ってるじゃねえか」


「特注品なの。まさかこんな効果があったなんて、知らなかったけど」


 私、万葉木夕奈は鍛丸(たんまる)さんの言葉を思い出していた。


(最高傑作。つまりあれは、こういう意味だった)


 赤い光の線のようなものが、黒い剣に流れる。


 私が放ったあの飛ぶ斬撃……いや、斬撃ではない。感覚的には殴っている感触に近い。


 あれの発動条件は分からない。説明書を貰うべきだった。


 そんなことを考えながら、私はエリオスを見る。


 彼の顔が変わる。ようやく本気になったようだ。


(この世界のカラクリは分からない。でも経験から言って、おそらくエリオスに大きなダメージを与えると崩壊(ほうかい)する)


 そっちに集中を()けないくらいの、大技を。


「おいおい。なに笑ってやがる?」


「別に? 笑ってないけど」


 そう、夕奈は口角を上げながら言った。

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


追記。


少し気になったのですが、僕の小説、フリガナ多いですか? 多ければへします! 反応がなかったらこのまま行きます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ