65話 多芸は無芸
今起きてること
・万葉木夕奈VSエリオス・バンダ
・ジーダ・オニュセントvsアイマスクをつけている少女
・アーサー=アーツ・ホーガンvsその他大勢の戦士
・ラリゴ先生vs名も無き魔族
・バルトス&カナリアルVS鍛丸匡一郎
・レテシー・アルノミカ&嘉村舞奈VSヴァルダニオ・ボンダ&ヒョウリー・クワンド
「エルムンダリア」
その一言から始まった戦い。
双方、改めて感じる。
(こいつ、強くなってやがる……!)
(これは踏ん張らないとね……!)
万葉木夕奈は剣を振る。それはことごとく防がれた。
だが、彼女の猛攻は止まらない。
エリオスは思う。
(なんなんだ? こいつの戦い方。脇も、腹も……隙だらけじゃねえか。……なのになんで、こっちから攻撃できないねえんだ?)
彼女は攻める。こんな言葉を聞いたことがあるだろうか? 攻撃は最大の防御。
これこそが、夕奈が学んだものの一つ。
(防御無視の超攻撃)
「……!」
私は剣を強く握る。
師匠が最も得意とする型。
私の脳裏に記憶が過る。
「師匠、これもちませんよ。一分ほどで体力切れます」
「ふぉっふぉっふぉ。最初だけですよ」
「そうなんですか?」
「はい。ですので頑張りましょう」
「はーい。あ、そういえば、この型の名前ってあるんですか?」
私は訊く。師匠は困ったように言った。
「実は、私が戦闘中に編み出した戦い方ですから……。名前はないのですよ」
「そうなんですね。……なら!」
私はあの時決めた技名を心の中で呟く。
(狂喜乱舞)
師匠の通り名、バーサーカーのイメージから取った名前。その由来が、強く感じられる。
(『天眼』……!)
空からの視点が私の背を押す。そのかいもあってか、攻防の末、私は隙を見つけた。すかさず剣を入れる。
私の力はもう、エリオスでは受け止めきれない。
エリオスは脇腹に入った私の剣を見て、急いで空へ逃げた。
空白の時間ができる。私は彼に言った。
「『偽装』は使わない。新しい私を見せてあげる」
エリオスは静かに夕奈を見た。
彼の迷いは確信へと変わる。
「そうかよ」
命を燃やす。夕奈の言葉に乗るかのように、彼の両手から青黒い球体が現れる。
「そういう事なら乗ってやる。新しいオレを……見せてやるよ」
同時刻、アーサー=アーツ・ホーガンはふと思う。
(もう十分は経っているな。見誤っていた。こいつらは強い)
新たに現れたメモリープラット、およびその他の魔獣。そして数百万いる魔族達。
(どう考えてもあと二つは腕がいる。もしくはあと数千人ほど仲間がほしい)
「……このままオレ一人で抑え続けるのは、骨が折れるぞ」
その言葉に呼応するように、若き日のミリア・ホーガンの笑顔がアーサーの脳裏をよぎる。
(でも、やらないとな)
アーサーは剣を振る。それから出た光の斬撃は、一人の魔族に当たる。
「ほんとに硬いな」
「おいおい。拙者にも限界はあるんだぞ」
魔族の男、カニマニ・アルルはそう呟く。
刹那、巨大化したメモリープラットがアーサーへ向けて拳を振るった。
アーサーは思う。
(もう進化したのか? いったい何度の生殖を繰り返したんだ)
「おいおい、もう終わりか?」
そうカニマニは言う。
「いいや」
アーサーはカニマニに向かって光の斬撃を放った。
残念なことに、それは難なく受けとめられてしまう。
「メモリープラット」
アーサーはそう呟き、こう思う。
(メモリープラットの寿命はわずか一日。子供を産んで、死ぬ)
だが記憶は遺伝される。その特性からか、進化のスピードは他の生物をはるかに凌駕する。
「話には聞いていたが、面倒くさいな」
アーサーはメモリープラットの首をはねた。
だが奴らの数は底をつく気配すらない。目に映るだけでも、数百は超えている。
アーサーは、呆れたように言った。
「まったく、骨が折れるな」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
しかし、クレイジーダンスか……。作者は夕奈のネーミングセンス好きです笑




