表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/176

63話 犬も歩けば棒に当たる

 ジーダ・オニュセントの前に現れるは、目元を隠すように、特徴的な、悪魔らしい、禍々(まがまが)しいアイマスクを付けた少女だった。


「みーつーけーたー」


「お嬢さん。その羽……、あなたはここへ避難しに来たのですか?」


「ううん。あなたを倒しに来たの」


 空気が(こお)る。コンマ一秒、ジーダとアイマスクを付けた少女はお互いの手の届く位置まで移動していた。


「……!」


 ファニー・トロイポンは辟易(へきえき)する。


 ジーダは地魔法を使い、岩石で剣を作る。それでアイマスクを付けた少女の手を受け止めた。


 ジーダはふと思う。


(なんだ……? 体がうまく動かない?)


「にゃーはっはー。あちしの毒()いたねえ―」


「毒……?」


 ジーダは後ろへ()ぶ。


「んふふー」


 ニヤニヤと、少女の口元は笑う。ファニーは言った。


「ジーダさん、大丈夫ですか?」


「はい。おかげで彼女の得意魔法が知れました。……ファニーさんは後ろへ」


「はい……」


 アイマスクを付けた少女は笑う。


「んー。それはダメー」


 少女は驚きの身体能力でファニーの後ろに回る。そして(こぶし)を振った。


 しかしそう上手くはいかない。


「……(かん)ー!?」


「はい。経験に(もと)ずく勘です」


 ジーダは岩のようなものを床から出し、ファニーへ向けられた拳を防いだ。


「ファニーさん」


 ジーダは剣を振り、アイマスクを付けた少女を引きはがす。


「逃げてください」


 ファニーは足手まといになることを嫌い、素直に頷いた。


「んふふー。おじさん、いいの? 仲間を逃がして」


「はい。心置きなく戦えますから」


「あははー、生意気(なまいき)。これでもあちしはおじさんを倒すために(そだ)てられ……!」


 刹那(せつな)、勝負は決まった。油断大敵。どうぞ卑怯(ひきょう)だと(ののし)るがいい。勝負とは、()()()()()()()()()()()


 まして雑談(ざつだん)など、するべきではない。


「にゃーはっはー」


 それが、ジーダの見解(けんかい)だった。もしここに観客がいたら、全員が決まってこう言うだろう。


 ジーダ・オニュセントの勝ちだ、と。


 しかし、事実は時に小説よりも()になる。


 一瞬の油断。ジーダは一瞬だが、勝利を確信してしまった。


「……がは!」


 血しぶきが()う。


「んふふー」


「……」


 もふもふなピンク色の耳当てを付けた少女が現れる。少女は、静かにジーダを見つめる。彼女の手には、日本刀のようなものが握られていた。


 そんな彼女の容姿は、アイマスクをした少女と酷似(こくじ)する。


 ジーダは()やむ。


(……慢心してしまった。何をしているのだジーダ・オニュセント! 久しぶりの戦闘だからと言い訳をしている場合ではないぞ)


「……」


 アイマスクをした少女は笑い、言った。


「にゃっははー! だから言ったじゃん、あちしはおじさんを倒すために育てられたの。慢心(まんしん)してふんぞり返っている人間を引きずり落とすためにね。もちろん、あなたのように強い人間を殺す準備はできてるんだよ」


「ごほん! 言い過ぎ……」


 耳当てをした少女は(あき)れたように言う。


 ジーダは剣を握る手に、今まで以上に力を入れた。


 一方その頃、クルルはエリオスと対峙(たいじ)していた。


 クルルは(こぶし)を握り、エリオスは赤い球体を操作する。


「肉体派だな。しかもそれ……」


私語(しご)は禁止です!」


 クルルは走りながら赤い球体を避ける。そして拳を()るが、当たらない。


 相性が悪かった。相手は空を飛ぶが、クルルは地に足をつけることしかできない。


 攻撃が届かない現状。クルルも内心(ないしん)、どうしようかと悩んでいた。


 そんな時だった。彼は何かに気づいたかのように別の場所へ向かう。


 クルルはそれを追おうとするが、諦めた。


「……こんなんでも、守れたのかな」


 クルルは急いで仲間のもとへ向かう。


 そんな戦いの裏側で、非常事態をうまく使った男がいた。


「今だ、逃げるぞ」


 魔族の男は少年にそう声をかけた。少年は立ち上がる。彼は、放火(ほうか)の容疑でここにいた。


「ねえ、オレ達は何のために戦うの?」


 少年は()う。己の内に()めたヒーローを思いながら。


 そんな少年の背中から、羽が生える。


 魔族の男は言った。


「生き残るためだ。(われ)らの子孫が生きられるかは、この戦いで決まる」


「そうか」


 魔族の男は、牢屋の中で目を()せる少年を見て言った。


「なにか、言いたいことでもあるのか?」


「いいや。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()


 少年は男に感謝し、外へ出る。


 もう後悔はしない。そう、(ちか)っていた。


「……なのに、なんで!」


 だが、運命は時に我々に牙をむく。


「行くのか?」


 人間の男は言った。


「行くのなら、オレはお前を止める」


「……行きたいよ。でも、許してくれやしないんだろう? ヒーロー」


 毎日のように、自分のためにここまで足を運んでくれた男。自分のために、本気で(しか)ってくれた男。そんな恩人に、少年は視線を向ける。


 魔族の男は困ったように、言った。


「もしかして、知り合いなのか?」


 人間の男は言う。


「ああ、ちょっとね」


「そうか」


 魔族の男はそっと目を伏せた。


 人間の男は言う。


「こんな状況なんだ。逃げたくなるのは分かる。もしそれだけなら俺はお前を見逃(みのが)すよ。でも、もしこの戦争に参加するっていうのなら……容赦はしないぞ、バルトス君」


「オレは……、オレは……家族のために進みます――()()()()()


 鍛丸匡一郎たんまるきょういちろう。彼は、覚悟を決めた。


 魔族の男は言う。


「ん? なんだ? これは自己紹介をする流れか? おうおう、なら言ってやるぜ。(われ)の名前はカナリアル・ボンダ。アーサーを追い出すミッションを失敗した男だぜ」


 きらりとキメ顔を取るボンダ。それとは対照的に、空気は凍った。


「……」


「……」


 鍛丸は言う。


「お、おう。よろしくな!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ