51話 災い転じて福となす
女は笑ったよ。男たちはけらけら笑ったよ。アイツは跳ねて笑ったよ。でも彼は、笑わなかったよ。
どこかで聞いた言葉。私は水の底にいた。
息ができない。
ああ、女は、死んだよ。なぜ?
「知らない」
私は目を覚ます。頬につたう雫が、私の体を起こした。
「……」
ふと、アリアに貰った宝石を見る。輝いているように見えた。
私はいつも通りの朝を迎える。師匠は二日開けると言った。明日の朝か今日の夜には帰ってくるのだろう。
私は朝ご飯を食べ、魔女のような服に着替える。
そして鍛丸さんの所へ出向いた。
「こんにちは」
「あ、ユーナ。こんにちたたたた」
トングに頬を引っ張られている鍛丸さんは、どこか滑稽だった。
「そんなもんどこで買ってきたのよ」
「ちょっとな。……それよりも、オレはユーナより三歳年上の十八歳なんだぞ。敬語を使いなさいよ、敬語を」
「えー」
(……あれ? なんで私の歳知ってるんだろう?)
私は一瞬疑問に思うが、まあどうでもいいやと忘れた。どこかで言ってたのかもしれないし、疑うのはよくないしね。
「鍛丸さん、ホントに十八歳なんですか? そうは見えませんけど」
「ふん! ホントやい」
私は笑う。
「鍛丸さんは何年から来たんですか?」
「二〇一八年だ。当時は十五歳だったな」
「ほえー」
つまり、私の年では十九歳。立派な成人でした。
「あ、てことは、平成の次の元号知らないんじゃないですか?」
「……しらない」
「ほえー」
「ほえーじゃなくて言ってくれよ。気になるじゃないか」
「令和です」
「なんだそれ?……というか、何の用でここに来たんだい?」
私はポンっと握った拳をもう片方の手の平に当てた。
「そうです。材料を持って来たのでした」
「ごめん。やっぱ気持ち悪いから敬語はやめよう」
「ええ、そうするわ。それと、これ」
私は材料をまとめて入れてある袋を渡した。
「すごいな。本当に集めてきている。よくこんな短期間で集めれたね」
「案外簡単だったわよ」
「まあ、そうなのかもしれないが、言った二日後に持ってくるとは思わなんだったよ。ユーナはもっと怠け者だと思ってたのに」
「ふん。まあこんなもんよ」
「流石」
私は平然としている裏で、もやもやした気持ちを抑えていた。
(ホントになんで、こんなに頑張ってるんだろう?)
「おーい、ユーナさん?」
「あ、なに?」
鍛丸さんは手の平をこちらに向けた。
「材料ありがとう。作る剣、何か要望はある?」
「うーん」
私は首を傾げる。
「あ、あった」
それは紛れもない、私のわがままだった。
「……マジか」
鍛丸さんは笑みを浮かべた。それはまるで、未知の事象に対峙しているかのように。好奇心ともとれる顔をしていた。
「無理そう?」
「いいや、やってやるよ。その条件で、戦えるものを仕上げる。一週間。いや、二週間くれ」
私は相槌を打つ。
「ありがとう」
「おうよ」
私はその後、世間話をし、店を出た。
(ははっ。本当にあんな条件で剣が作れるのだろうか)
そんなことを考えながら、バイトへ向かう。私は制服に着替え、六時間の勤務をした。
そして師匠に出された課題、ランニングをやっている最中、馬車の音を聞いた。
ふと、それを見る。我慢できず、笑みがこぼれた。
「おかえり、アリア」
私は馬車のもとへ行く。そして友人と再開したのだった。
「久しぶり、アリア!」
「はい。久しぶりです」
私は師匠を見た。
師匠は言う。
「ユーナさん、力魔法の特訓はどうですか?」
「ぼちぼちです」
私は苦笑いを浮かべる。アリアは言った。
「ユーナさん、力魔法使えるんですか!? すごいです!」
「え、ああ、そうだよ」
(……あれ? アリアには教えてたはずなんだけど……。まあいっか)
私は相槌を打った。
「すごいですね」
「でしょ」
どこか違和感を残したまま、私はアリアと城に入るのだった。
「そういえばユーナさんは、どうしてここにいるんですか?」
「……え?」
「ああ、その……スライムの森付近の田舎村にいたのに、なんでここにいるのでしょうか? と思いまして」
「なんでって……、アリアが変わってって言ったんじゃない」
「ああ、そうでした! ごめんなさい」
必死に謝るアリア。まったく、ドジっ子なんだから。
私は微笑む。アリアも笑った。
「そんな事より、隣国での土産話聞かせてよ」
「ふふふ、実は……」
私はアリアと話した。
そして夜が明ける。私はいつも通りの行動をし、寝ころんだ。
「……アリア、いつもとなんか違った」
成長したってことなのかな?
そんなことを思いながら、私は目を閉じる。
『異世界日記 二十二日』
鍛丸さんに剣の作成を依頼することができた。しかも無料で。鉄とか集めてこなかったけど、それらは大丈夫なのだろうか? まあ、いいや。それは鍛丸さんに任せよう。
アリアも帰ってきたことだし、少しは賑やかになるかな。なるといいな。
……しかし、アリアの雰囲気が変わった気がする。気のせいだろうか?




