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49話 安物買いの銭失い

 次の日がやって来た。どうやら今日は生樹祭(せいじゅさい)らしい。


 そんなことを考えながら城の中を歩いていると、アーサーさんに()った。


「あーはっは! ユーナ、修行には慣れたか?」


 高笑いしながら炎の剣を作るアーサーさん。


 相変わらずうるさいなあ。などと思いつつ私は微笑みながら言った。


「はい、今は力魔法の習得中です」


「ほーう。それはすごいな。大変だろうが、頑張れ」


「はい」


 ふと、炎の剣を見つめてみる。


「そういえば、アーサーさんや師匠って呪文使わないですよね。そんなこと可能なんですか?」


「ああ。呪文とはすなわち言葉。以心伝心。すぐれた人間は言葉を発さずにモノを伝えるものだ」


「つまり……?」


 アーサーさんは口角を上げた。


「無詠唱魔法。それは努力の上に成り立っている。今はまだ考えなくていいさ」


「……なるほど。ちなみにどのくらいの修練が必要なんですか?」


「五十年だ」


「……マジっすか」


 私は肩を落とす。


(無詠唱魔法は諦めよう)


「あれ? アーサーさんって五十歳過ぎてるんですか?」


「いいや、三十九だ」


「……? それって矛盾してるんじゃ」


「いいや、それは凡人ならだ。オレは二十で覚えた」


「おおー」


 私は手の平を合わせる。


 アーサーさんは微笑んだ。


 力魔法のことについて()こうと思ったが、アーサーさんを呼ぶメイドの声が聞こえ、断念する。


「おっと、すまないな。また今度話そう」


「はい。わざわざ時間を作っていただき、ありがとうございます」


「お礼は良いさ。オレが好きで話しかけたんだしな」


 手を振るアーサーさん。私も同じことをする。


(無詠唱魔法か……。私には魔法の才能はないんだし、諦めよ)


 まあ、力魔法は使えるんだけどね。


(まだ使えないけど)


「あははー」


 私は苦笑いを浮かべながら歩く。その先に待っているのは、ファニーちゃんの部屋だ。


 門番のようにドアの前にいるメイドさんに話しかける。


「ユーナです。ファニーちゃん起きてますか?」


「いいえ。ですが許可は得ております」


「許可?」


「はい。昨日、あなた様がいらっしゃったことをファニー様に報告したさい、なんで通さなかったの!? と怒られてしまったのです」


「ははは。あなたも大変ですね」


「そうなのですよ……おっと。それで、明日は寝ていても通すように、と言われてあるのです」


「なるほど」


 嬉しい限りだ。


 私は「ありがとうございます」と言ってファニーちゃんの部屋に入る。


 そこにいたのは、布団から足を出した女の子だった。


(ファニーちゃん寝相悪いな)


 微笑みながら思う。


 私はベッドに座り、ファニーちゃんの肩を触った。


「おきてー」


「んー」


「ファニーちゃーん」


「んー、はっ! ゆなっち!?」


「あ、起きた」


 私は「おはよー」と言う。


 ファニーちゃんは目を擦りながら「今日何かあるの?」と言った。


「ファニーちゃん」


 私は今日の予定を伝える。それはすなわち、材料集めである。


洞窟(どうくつ)へ、行こう!」


 現在時刻十時ピッタリ。朝のうちにミリアさんから情報を仕入れていたのだ。


 ファニーちゃんは目を輝かせて頷く。


 私とファニーちゃんは準備をし、まずはカルナスさんの店に行った。


「おっす」


「あ、ユーナ。悪いけど、今日は師匠はいないんだ」


「そうなの? 残念」


「何の用だったの?」


 私は鍛丸(たんまる)さんに紙を見せる。


「材料集め。そのための護身用の武器を買いに」


「そうなのか。なら売るよ」


「いいの?」


「ああ。どれがお好みで?」


 私とファニーちゃんは物色した。そして各々好きなものを取る。ファニーちゃんはお金を持っていないらしく、私が支払った。


「金貨一枚と銀貨二枚と銅貨三枚」


 金貨は日本円にして三万円ほど、銀貨は千円くらい、銅貨は二百円ほどだ。


(高い。私の給料三日分が吹き飛んだ)


 まあ、いっか。そう思い店を後にする。


「ありがとう」


「こちらこそ、まいどあり」


 その後私たちは食料を買い、都心から離れる。久しぶりに馬車に乗った。


「ゆなっち、ワクワクするね」


「そうね。でも、油断は禁物よ。危険度は少ないとしても、魔物がいる場所に行くんだから」


「だね、集中するよ」


「ええ」


 ふと思う。


(そういえば、ファニーちゃんって身分の高い人なんだよね)


「ファニーちゃん」


「なに?」


「今更()くのもなんだけど、来てよかったの?」


 ファニーちゃんは屈託(くったく)のない笑顔で答えた。


「うん。私は兄さまと比べて大切じゃないから」


「そう。でも、私にとっては大切よ。この星よりも」


「ゆなっち」


 ファニーちゃんは涙を目に溜める。


 私たちはガシッと抱き合った。


 それからしばらくして馬車が止まる。


 私は降り、料金を支払う。財布が軽くなった。


 だが悲しんでいる暇はない。


 私とファニーちゃんは同じ入口を見つめた。


「ゆなっち、行こう……!」


「ええ」


 探検みたいで、子ども心が(うず)いた。


 私は魔道具であるランプを軽く叩く。すると魔法陣が出てきたので、いつものように触れた。


 光が(とも)る。私はそれを前に突き出しながら、ファニーちゃんと共に前へ進む。


 わたし、万葉木夕奈の所持品は、鉄製の剣、いつもの魔女のような服、ポーチの代わりに借りたバックパック、御守り、非常食、水、魔物追い払うん、小さな(びん)、ハサミ、ランプ、非常事態用の救難信号を出すボタン、紙、そして図鑑だ。


 余ったスペースに素材を入れる。


 一方、ファニーちゃんの持ち物は、ナイフ、瓶、非常用の簡易魔法ランプ。バックパックに非常食、方位磁石に地図、水だ。そして今の彼女は、いつものドレスとは違い、手足の先まで伸びた安全に配慮した服を着ている。


 私も着て来ればよかったと後悔。膝上までの長さしかないスカートは、いささか洞窟(どうくつ)をなめていたのかもしれない。


 私は紙を見る。


 今回集める素材は全部で五つ。


 バニーポップの涙。ケロロンタンの叫び。硬御水(こうみすい)。ほつれ草。シープロックの毛。


「ふむ」


 見つけられるといいが。


 私は周囲の壁を見つめる。松明(たいまつ)が置かれてあった。


 整備されてるんだろうな、としみじみ感じる。だが次第に数は少なくなる。


 きゅっと、身が引き締まった。


 ファニーちゃんも同じように緊張している。私はファニーちゃんの背中を押しながら、前に進んだ。

投稿遅れてすみません!

予想以上に書いてしまいましたので、次回と今回で二部構成とします。

応援よろしくナス。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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