27話 無くて七癖あって四十八癖
「おらあ! そんなこともできないのか!? です」
「ひ、ひえー!」
私、万葉木夕奈は、現在アリアの癖を叩きこまれています。ああ、忙しい。こんなことなら田舎でぐうたらしていたかった。
「ぴえん」
「今なにか言った!? です」
「言ってません!」
(この子、戦った時から思ってたけどやっぱりスパルタだ!)
「ほらそこ! アリア様は疲れていても笑顔ですよ!」
「は、はいー!」
私は笑顔を浮かべる。アイドルもこんな気持ちなのだろうか。
「とほほ」などと言いつつ、私は修業を続けた。それから数時間後、私は確実にパワーアップしていた。
「では、行きましょう。アリア様」
私はきっちり四十五度の角度でお辞儀する。
「はいですわ」
にやりと笑うレテシー。私もそれに合わせて頷いた。
足取りが重い。わたしは今から、マルゴニカ王国のクッソスメルを治める領主の息子とご飯を食べる。名前は確か、マジニート。
マジニート・トロイポン。由緒正しいトロイポン一族だそうだ。なんでもゴマをするのがうまいらしい。
そんなことを考えながら廊下を歩く。
ふと、暇つぶしに『天眼』を使用する。民衆が見えた。今日はお祭りらしい、外がにぎやかだ。
叶う事なら、夕ご飯を早々に切り上げて祭りに行きたい。
だけどそれは無理そうだ。
レテシーは扉を開ける。アリアのお父様とお母様がいた。
(似顔絵そっくりだ)
そんなことを考えながら私は席に座る。レテシーは私の後ろに立った。
アリアのお父様は言う。
「アリア、準備はできているか?」
「はい」
一瞬アリアのお母様の顔が曇るが、すぐに平静を取り戻したようだったので、今は無視する。
アリアのお父様は言った。
「アリア、来るぞ。今回はクッソスメルの税金についての話し合いも兼ねてる。アリアは適当に頷いてなさい」
「わかりました」
「うんうん。アリアは頭がいいでちゅねえ」
「ありがとうございますですわ……ん?」
(いまなんて? アリアのお父様、今真顔で何言った?)
「……」
考えないようにしよう。
「ゴホン」
アリアのお父様は言う。
「トロイポン一族の皆さんをここへ」
「はっ!」
扉付近にいるタキシードを着た男たちが扉を開ける。
壮大な音楽と共に現れた四人の人間。
彼らはこちらを見るや否や、名乗りを上げた。
腹が引き締まっているアリアのお父様とは違い、大きいお腹が目立つ、王冠がくっついた帽子をかぶっている男はこう言う。
「我が名はジ・トロイポン。クッソスメルの領主であります」
「ああ、知ってるぞ」
と、アリアのお父様は言う。
ジさんの後ろからキノコ頭のかっこよくも不細工でもない何とも言えない男が出てきた。
(前言撤回)
彼はとんでもないインパクトを残した。
「こんにちは」
とんでもなく声が高かったのだ。
「僕の名前はマジニート・トロイポン。次期党首である」
ポロっと、マジニートさんの服から何か落ちる。よく見ると蜘蛛のような生物だった。
「今日は食事会に招待していただき」
マジニートさんは一歩前に出る。プチっという、何かをつぶしたような音を鳴らして。
「……ん?」
彼は下を見る。何が起きているのかわからないようだったが、次第に顔が絶望してゆく。
彼は膝から崩れ、泣いた。
「あー! 僕のかわいい息子がー!」
うえーん、うえーんと泣くマジニートさん。ご愁傷さまです。
蜘蛛を抱いて泣くマジニートさんを押しのけるように前に出てくる可愛らしい女性。彼女は人差し指と中指を立てた、いわゆるピースを顔に当てて言った。
「こんちゃー! 私の名前はファニー・トロイポン。オシャレとマカロンが好きな十四歳でーす! 横で泣いているバカは気にしないでください! さっき廊下で拾った生き物が死んで悲しんでいるだけですから。それじゃあ、お母さまにバトンタッチ! チョワー!」
厚化粧の女性が跳んで出てきた。
「わたくしの名前はシェロ・トロイポン。以後お見知りおきを」
(……終わり!?)
私は四人を見る。何とも癖の強いお子さんを持っておりますね。
アリアのお父様は言う。
「はーはは! 今回も笑わせてもらったぞ、ありがとな」
ジさん以外は何を言っているのかわからない様子。アリアのお父様とジさんの中にある儀式かなにかなのだろう。
アリアのお父様は席を指さし言った。
「どうぞ座ってくれ」
ジさんは頷く。マジニートさんも笑って席に座った。
(泣いたり、笑ったり、なんか怖い)
私はそんなことを思いながら運ばれてきた料理を見る。
(ちっさ)
それしか思わなかった。
お皿に対して料理が小さすぎる。
あーあー。
(祭り行きたいなー。それか部屋でゆっくりしたい)
と思いつつ、私は食事マナーを知らない事実に戦慄していた。
……レテシーに基本的なこと教わるの忘れていた。
(なんか今日、私抜けてない!? しゃんとしなさいよ、まったく)
そんな風に呆れながらも、見よう見まねで料理を口に運んだ。
(お! おいしい)
作者の癖が出た回となりました笑。嫌ならやめます、いいのならこのまま出し続けます!
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