22話 袖振り合うも他生の縁
「疲れたーっ!」
私とアリアは家に入るや否や床に寝ころんだ。
汗が垂れる。私とアリアは見つめあって笑った。
「すごい汗」
「ですね」
私は腰を上げる。
「お風呂入っちゃおうか」
アリアは頷く。
「はい」
私はお湯を入れるためのスイッチである魔法陣に触れた。
そして脱衣所に入る。
王女の裸なんてめったに見れるもんじゃないだろう。私は脱衣所でアリアと一緒に服を脱いだ。
クルルは家族と今日は寝るそうだし、木葉さんとマニュウさんはまだ帰ってきてない。とどのつまり、この家には私とアリアしかいない。
別に他意はないぞ。ちょっと思っただけだから。
私はそんなことを考えながら、タオルを持ってアリアを見る。
ホントに同級生か!? と思う乳を持っていた。
(私の友達にもいたなあ、胸の大きい子。元気にしているだろうか……。てか、もしかして私が小さいだけなのか!?)
「……考えないでおこう」
嫌なことは考えないのが正解だ。もとより考えてどうこうなる問題ではない。
私は肩を落としながら、アリアと共に風呂に入る。
そして二人で横並びし、体を洗った。
大きなお風呂の特権だ。
ごしごし、ごしごし、と体をボディタオルで擦る。少し痛さを感じながらも、続けた。
何度か雑談を交わしてから、浴槽に足から入る。肩まで浸かった頃に、私たちは言った。
「ふいー」
「ふいー」
お互い疲れているのか、同じ言葉を発する。
私はアリアを見て言った。
「王族もふいーって言うんだね」
「言いますよ。お風呂はプライバシー保護の場所ですからね」
(プライバシー保護って。この世界にもあるんだ、そういう概念)
私は笑っているような、感動しているような、とんでもなく微妙な顔を浮かべた。
「しかし、アリアは元気だね。羊と遊ぶアリアを見て強く思ったよ」
アリアは照れたように言う。
「そうですか? なんだか恥ずかしいです」
「そんなことないよ。私からすれば羨ましいくらいだもん」
アリアは顔を下に向ける。
「そんなこと言われたの初めてです。いつもは礼儀正しく、清純にって言われてますから」
「なるほどね」
(それはきつそう……ん?)
んんん? 明日から私はアリアになる。つまり、私も言われるってこと? 礼儀正しく清純に、と。
「ぶくぶくぶく」
私はお湯に口を潜らせた。
(無理ゲーだ)
一気に自信なくしたよ。
「アリア」
「なんですか?」
私は下からアリアを見る。ひとえに美しかった。
(……頑張ろう)
心変わりする私。可愛いは正義なのである。
「アリアは三日間どう過ごすの?」
アリアは顎に指を持っていく。
「そうですねー。まずは農業をしてみたいです。お米の苗を植えたりー」
わたしは悲しく思う。
「アリア、田植えの季節はもう終わったよ」
そんなー。と言わんばかりのがっかり顔を浮かべるアリア。
「そ、そうなのですね。ちょっとがっかりです」
私は何とかしてフォローしようと考え、こう言った。
「あ、合鴨の育成はできるから」
(ふと思ったが、この世界にも合鴨はいるのだろうか……。雑種だし……)
というか、何故この惑星には地球にいる生き物に似た生物がいるのだろうか。
羊や牛、じゃがいも、にんじん、人間……。
(何か裏が?)
と思っていると、アリアは困惑したように言った。
「あ、アイガモですか……。初めて聞きました。覚えておきます!」
健気な彼女。私は言う。
「あははー。ありがとう」
それに比べて私というものは……。
自分の醜さに落胆した。
そんな私に気を使ったのか、アリアはこんなことを言った。
「万葉木さんは物知りですね!」
私は、ここで元気を出さないと場がしらけるなあ。と思い言った。
「ありがとう!」
「いえいえ」
はははー、と笑う私たち。ふと、アリアがこんなことを言った。
「わたし、万葉木さんと知り合えてよかったです」
私は微笑む。
「それは私のセリフ。こちらこそありがとう。あと、夕奈でいいよ」
「はい。夕奈……さん」
なぜか気まずい空気が流れる。
私がこの空気を壊そうと思い口を開くと同時に、アリアがこう言った。
「こんな話するべきじゃないと思いますが……夕奈さんのことが心配なので言います」
「……なに?」
空気が変わる。
私は何が来るんだと身構えた。
アリアは口を開く。それは、私にとって堪えるものだった。
「万葉木という名前は、人によりますが、危ないものになるかもしれません」
「だね……」
だからと言ってどうすればいいんだ。私は知らず知らずのうちに下唇を噛んでいた。
次第にアリアとの距離感が分からなくなる。
アリアはそんな私に手を差し伸べるように言った。
「ですから、偽名を作りましょう」
「偽名?」
「はい!」
心なしか、アリアとの距離が縮んだ気がした。
(確かにそれは良い案だ)
「でも、どうしよう。私センスないし」
(キングマン、マンヨウ、モリモリ……どれもしっくりこない)
私は困ったようにアリアを見た。
アリアは鼻息を荒くして言った。
「イグドラシル。私のペンネーム、アリア・イグドラシルから取りました。どうですか?」
私は驚きながらも考えた。自分がその名前で呼ばれている瞬間を。
「イグドラシル」
(ありそうな名だ)
私は笑った。
「いいね」
同じくして、アリアも笑う。
「うふふ。私たち、姉妹になりましたね」
「だね」
(イグドラシル。ユーナ・イグドラシル)
いいじゃないか。私好みの名前だ。
「アリア」
私は立って、湯船を出た。
「万葉木夕奈改め、今日からユーナ・イグドラシルを名乗るよ」
アリアも湯船から出る。
「私はアリア・イグドラシル。アリア・ホーガンではありません。イグドラシルです!」
「あはは!」
「ふふふ」
私たちは笑う。
そして流れるように脱衣所へ。私はアリアのたわわな胸を見ながらこう思う。
(私たち、絶対姉妹にはなれねえわ)
くそー。作者がアリアにハマってしまいました。推しです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!




