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19話 帯に短し襷に長し

 大太鼓を叩くような音が体に響く。


 緊張はする。でも、このまま突っ立ってるだけじゃあ、何も始まらない。


 私はクルルを抱きしめて扉を開いた。


 中にいた四人は一斉に私を見る。


「……頭、冷やしてきました」


 コクリと頷くお姫様。


 私は木葉さんの横に座った。


 お姫様は言う。


「では、話の続きを。紅木葉さんが魔王軍に脅されスライムの森を焼いていたところまでは分かりました。ではなぜその手を止めたのですか?」


 木葉さんは私を見た。その顔は落ち着いたものだった。


(木葉さんの緊張が解けている。よかった)


 などと思っていると、木葉さんは私のことを話し始めた。


「横にいる私の仲間、夕奈に止められました」


 お姫様は言う。


「なるほど、仲間の一声で気を取り戻したと」


(なにかにメモしてる。こりゃ、下手な発言はご法度だな)


 木葉さんは否定した。


「いえ、夕奈とはその後仲間になりました」


「そうなのですか?」


 こちらを見るお姫様。私は頷いた。


「それはそれは」


 優しい笑顔を浮かべる執事さん。私がいない間に何があったのだろう?


 執事さんは言う。


「夕奈さんはなにか訓練を受けていたのですかな?」


「いえ」


 私はかぶりを振った。すると執事さんは驚いたようにこう言う。


「天賦の才ですな。()()()()()()()()()弟子にしたいくらいですぞ」


 睨まれる私。怖くて顔をそむけた。


 お姫様は私に言う。


「具体的に、どんな勝ち方をしたのですか?」


「それはそれは、私も気になりますぞい」


 これはどう答えればいいのだろう。正直に答えていいものなのだろうか。


(うーむ……。よし!)


 私はお姫様に触った。


「スキャニング完了。対象名を『人』に変更。コピー可能です」


「見ててください。これが、私の持つ力です」


 水色の美しいドレスを身にまとい。美しい美女に私は変わる。


 お姫様は口をあんぐり開けた。


「ふぉふぉふぉー」


 笑う執事。


 お姫様は次第に目を輝やかせていった。


「すごいです」


 そしてこう呟く。


「この力があれば……」


 私は変身を解く。


(空から見る力、『天眼』は教えなくてもいいや)


 この三日で、わかったことが三つある。それは、二つの力の名前。お姉さんの声で天から聞こえたのは、『天眼』と『フェイク』。片方日本語なのにもう片方がカタカナ語なのはしっくりこないので『偽装(フェイク)』と、当て字をした。


 私の中二心がそう決めてしまったのだ。


 つまり、『天眼(てんがん)』と『偽装(フェイク)』の二つの力を持っている。


 そして最後の一つは、二日目の夜に遊びに来た、木葉さんから聞いた言葉で知れた。


「私たちに与えられた能力は、その数によって強さが決まるの。私の場合は、熱を操る力『ガスコンロΣ(シグマ)』一つだから強い部類に入る」


 私はなるほどと思った。


(もし私がどちらかに絞っていたら、空から見る力はもっと遠くまで見えたり、目が痛くなる時間制限はなくなっていたかもしれない。容姿を変える力はデータ容量が無制限になっていたかもしれない)


 一概にたくさんもらうのが強いわけじゃなさそうだ。と思っていると、木葉さんがこんなことを言った。


「昔、数百もの能力を貰ってどれも使い物にならなくなっていた男がいてさ、私はもう大爆笑……」


 と二人だけの女子会を開いたのを今でも思い出す。


 まあ、数日前なんですけど。


 お姫様は言った。


「ありがとうございます。ゲルム村長が許しているのなら、私からは何も言いません。反省もしているようですし」


「ありがとうございます!」


 と木葉さんは言う。


 この時までは、皆一様に安堵していた。


 だがこのお姫様は言ったのだ。


「これで話し合いは終わります。でも、私の方から万葉木さんにお願いがあります」


 次の言葉を聞いた全員は驚いた。


「わたしの姿になって、三日ほど王女を交代してくれませんか!?」


 沈黙がこの場を支配した。前回とは違うこの現状。


 私は願ってもないチャンスだ、と思い言った。


「いいですよ」


(名誉挽回のチャンスだ)


 だが、ひとり、異を唱える者がいた。


「ダメでございます」


「なぜ?」


 お姫様は困惑した。執事は言う。


「お嬢様が田舎の暮らしに憧れているのは知っています。ですが、あなた一人を置いて王都に戻るわけにはいきません。二日後には我が国の領主との食事会もあります。どうかお考え直しを」


「ぐぬぬ……」


 お姫様は苦しい声を出した。


 この状況を打破する方法はないものか……そう考えていたその時、今まで息をひそめていた男がこう言ったのだ。


「あの……」


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